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エピソード8 = 合流

「無事か?!!!」


 奥の道から駆けつけたライズさんは棒の様な武器で次々と遺神体を叩き壊す。

 先程まで恐れていたものが叩き潰されていく様は壮観なようで、その実不条理でもあった。


「待ってろ。数を減らす。」


 次々と仲間を破壊していく外敵の存在に攻撃の優先順位を変えた様で、遺神体達はオレ達に見向きもせずにライズさんに遅いかかる。

 慣れていると言わんばかりにその軍勢を捌くライズさんには焦りの色はない。

 薙ぎ払われる刃を叩き落としては、アームを伸ばすために開かれた内部に手を刺して握り潰し、そしてそのままそれを別の個体に叩きつける。

 一つ一つの行動が粗雑な様であっても無駄がなく、一定の周期で遺神体が破壊されていく。


 あまり美しい闘い方ではないはずなのに、つい見入ってしまう。

 …ああ、これも非現実的なものだからな…。

 日常から離れたものに憧れを持つのはいつものことかと納得しつつ、その闘い様に見惚れていた。


 2本のアームをひらりとかわして付け根を掴み、引き千切る。

 装甲をこじ開けては内部を握り潰す。

 直接装甲ごと棒状の得物で叩き壊す。


 自分の体をメンデッドにする原因となったものに対する意趣返しなのだろうか?

 しかし、強引に倒してはいるものの表情は冷静であった。


 ともあれ、助かった。

 空っぽになっていた心が安堵で満たされる…が、直ぐにアルカの事を思い出しては焦りが込み上がる。

 こんな状況で自分の身を心配していたことがとても恥ずかしく思った。


 さっきまで曲がり角で待ち伏せしていた大型の個体が襲い掛かる。

 流石に質量差があるからかライズさんは回避し、オレ達の方に転がってきた。


「アルカはどうした!?余計な事はいいから簡潔に話せよ…!」

 今はもうライズさんに頼るしかない。


「この一つ前の別れ道ではぐれたんだ…!助けて下さい!」

 どの面下げて言っているのか、勝手に後を付けて、勝手に危険に飛び込んで、のうのうと助けを乞う。

 我ながらよく言えたものだと自分を責めながら、それでもソラとアルカを助けるのならなんだって良いと割り切っていた。



「ンなこと言われんでも助けるぜ…!どのみち俺が蒔いた種だ、手前のケツ拭けねぇ程腐っちゃいねぇよ、俺は!」

 認識の違いに少し驚いた。

 ライズさんは、オレ達を怒ってはいなかった。

 罪悪感がますます増していく。

 だが自分を責めるほど時間に猶予はない。


「…ッチ!…時間がないな。」

 大型の遺神体をいなしていたライズさんは、突然その懐に滑り込んだ。



「『ハングアップ』!」



 ライズさんが何かを言うと、突然遺神体の目の光が消え、その胴体を支えていた脚から力なく崩れ落ちる……懐に潜り込んだライズさんの上に。


「…うぎゃ!……」

 …ライズさんの悲鳴を初めて聞いた気がした。

「……ッ痛え、アイタタタ!」

 巨体をどかしては這いずり出てくるライズさん。

 締まらない光景であったが、オレにはとても心強く思えた。



「今一体何を…?」

「んなこと聞く暇あったら早くアルカの方へ案内しろ!目先の疑問と友達どっちが大事なんだ?」

「あっ!…ごめんなさい……。」

 ソラの疑問を一喝しながら、

「いい、こっちも言い過ぎた。オマエに悪気がねえ事は分かってるぜ……帰ってから教えるかもしれないから期待してろ!」

 フォローしながらも曖昧な事を言う。


そして体から瓦礫を払うライズさんがオレ達が元来た道を指差して聞く。

「こっちの方向で間違いねえんだな?」

 オレ達は頷きながら先に走り出したライズさんの後に続く。



 ……どうか…無事でいてくれ…!!アルカ……!!!

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