エピソード4 = 着火
あの日から1週間。
オレ達の周りでは何事もなかった。
しかし、世間はとても慌ただしくなっていた。
…新たに3人もの行方不明者が出たのだ。
「これで行方不明者は7人になったんだって…。」
ソラは不安そうに話し始める。
噴水のある広場の端で、アルカを丁度待っている時だった。
「…それで、これは本当は話しちゃダメな話なんだけど……行方不明になった人はみんな、メンデッド差別主義者だったみたい…。」
おそらく、不安がる息子を安心させる為に教えたのだろう。
自分達はおそらく安全だと、そう思ってもらえるよう。
メンデッド差別主義者…身体を機械で補ったメンデッドを毛嫌いし、ネチネチと酷い事をする奴ら。
そしてそれは決まって、柱央中枢管理所の関係者に多い。
これをオレに話してくれた理由は分かる。
アルカだ。この一週間アルカはずっとハイヴの話ばかり話す。
元々オレ達の中では一番冒険心が強かったから、謎に惹かれて蛾のようにフラフラと走光性ならぬ走謎性を発揮する。
アルカが暴走しないよう、危険に近づかないように2人で誘導する。
いつもオレが火付け役となってアルカが暴走し、それを見て覚めたオレとソラが止めに入る。
いつもの事だ。
「アルカにはなるべく気付かれないようにしよう…!」
「分かってるって!ライズさんにアルカを近づけるとヤバイ…。」
言葉にする事でそれは強い決意になる。
噂をすれば影、アルカが現れ、そして、オレ達の決意を台無しにした。
「…聞いた!?行方不明者は全員、メンデッド差別者なんですって!!ソラのお父さんが電話で教えてくれたの!!…ねえ?やっぱりライズって関係がありそうよね!探してみましょ!」
想定した最悪で災厄な模範解答を満点で答えてくれた。
後方ではソラが茫然と空を仰いでいる。
アルカの目はおもちゃを手にした子供のよう…いや、そのまんまであったか。
とにかくキラキラとした目で、オレとソラの腕をむんずと掴む。
…こうなってはもう手遅れだった。
「ランド!ソラ!まずはアイツが倒れてた近くに行くわよ!」
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ハイヴ付近のゴーストタウン。
相も変わらず人気のないそこは、一週間前とは様子が変わらない様に見える。
そこの壁に見える穴からの換気音が、あの時の恐怖心を蘇らせる。
皆も同じなんだろうか、お喋りなアルカも口を閉ざして場は神妙な空気に包まれる。
ゾクリと背筋が凍り、後ろに気配を感じる。
「何やってんだ?お前ら?」
「「「うわぁ〜!?」」」
長身でがっしりとした体格、タンクトップから露出した金属の身体…ライズさんだった。
ここまでオレ達が驚くとは思っていなかったようで、表情も困惑が含まれていた。
「アンタ突然話しかけてくるんじゃないわよ!ビックリしたじゃない!」
「悪ぃ、あんまり考えてなかったぜ。」
アルカがライズに噛みつき、ソラは震えてオレの裾を握っている。
「アンタに聞きたいことがあるの!今度こそ答えて貰うわよ!」
アルカが本題に入ろうとすると、
「まあ立ち話はなんだし、俺の家に来るか?」
「ええ!そうさせて貰うわ。」
二つ返事しやがった………。
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俺の家だと案内されたそこは、最もハイヴに近いボロ屋だった。
鍵が壊れていたのがここだけだったと頭を掻きながら答えるライズさんに不安になる。
「…茶でも出せればいいが、俺は無一文だ!てな訳で、噴水の水を夜な夜な仕入れて濾過した水だ!気にせず飲んでくれ!元手はタダだ!」
極めてしょうもない事を言い出すライズ。
…そういえば深夜に噴水広場で人影を見た話があったっけ…。
呆れて声も出せないでいると、ライズが突然切り出してくる。
「俺は言わば世捨て人だ。そんな俺に、お前たちは何を聞くんだ…?」
文章のルーチンを変更しました。
上達しているといいな………。