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エピソード3 = 1日の終わり

遺神体(いしんたい)』とは、ハイヴに住む機械で出来た怪物達である。

 その名の通り神の遺していったものであり、基本的にハイヴから出てくる事はない。

 しかしハイヴの中に入った人間には容赦なく、襲われたら助からない、と言い伝えられている。

 基本的には大人程度の大きさだが、過去に一度だけ、ハイヴを埋め尽くすほどの大きさの遺神体らしきものが目撃されており、それを最後にハイヴの探索は行われていない。



「遺神体は人間がハイヴに入ることを防ぐ役割を与えられていると言われているの。

 とても強くって、大人5人がかりで3名の犠牲を出しながらやっと一機だけ破壊できたらしいわ。

 ……でも、持ち帰った後に3機もの遺神体がセルに侵入、周囲に多大な被害を出して仲間の遺体を回収して去っていったらしくって、それからハイヴの扱いはかなり慎重になったようね。触らぬ神に祟りなしってことかしら…もう50年以上は遺神体の目撃はないそうよ。」


 化け物は存在した。オレは、そんな場所に友達を連れて行こうとしていたのか…。

 どうせ大人が作った作り話だと、心の奥底で思っていた。……もしかしたら取り返しの付かない事になっていたかもしれないのに、いけしゃあしゃあと。



 オレは……!



「いや〜風呂や着替えまで貸していただけるとは!行き倒れてはみるもんですね!」


 まるで、これ以上場の空気が落ち込まないようにとタイミングを図ったかの如く、風呂上がりのライズが剽軽な声で現れる。



「その服差し上げますよ。あと中途半端な敬語も結構です。」

「マジすか!いや〜ありがたい!っとそうだ、俺の着ていた服あげますよ。お代がわりに。結構高価な素材が使われてるんで多分そこそこ値が張ると思いますぜ!」


 ライズは無造作に脱ぎ散らかしていた防護服の元に歩み寄り、ポケットをから何やらゴソゴソと回収していく。


「貴方に聞きたいことがあるの。」

 オレ達を庇うようにライズの間にはいり、セレン姉ちゃんが珍しく冷たい声音で問いかける。


「俺の身元の事だろう。」

 目線も合わせず未だにポケットをまさぐりながら答えるライズ。

「最初に言った通り、悪いが答えられねぇ…。……ただ、お前達が考えているようなものとは無関係だと言っておく。少なくとも、行方不明者が4人も出るような事件を起こしていたら、不審に目立たぬようコソコソ行動するぜ、俺は。…っと、あったあった。」


 まさぐっていたポケットから目当てのものを見つけたようで、安堵の声を洩らす。


 それは、金属で出来た花のようだった。


「貴方の前で、行方不明者事件の話はした覚えがないのだけれど。…倒れる前に聞いたのかしら?」

 やや強い口調でセレン姉ちゃんがライズを睨みつける。


「警戒は仕方ないが…そうカッカしなさんな、俺は耳がいいんだ、風呂の中から聞いたぜ。初耳だった。」

 振り向きセレン姉ちゃんと目を合わせながら、耳の付け根をその金属の指でコツコツと叩く。

 鈍い金属音が聞こえた。


 目を合わせてじっと見つめていたセレン姉ちゃんが肩の力を抜く。

「…嘘は言っていないようね。疑ってごめんなさい…!」

 姉ちゃんの雰囲気がいつもの調子に戻る。

 流石に疑いが晴れるとは思っていなかったのかライズも意外そうな表情をしていた。



「…さて、夜も遅いし俺は退散するぜ!」

「っちょっとちょっと!まだ身体が大丈夫じゃないでしょ!せめて1日くらいは安静に……」

 玄関の方に歩いていくライズ。セレン姉ちゃんが止めようとするも、


「俺の身体は特殊だから大丈夫だ!それにこれ以上迷惑をかける訳にはいかないからな!費用についてはその服だけで黒字は保証するぜ!じゃな!」

 制止も聞かず扉を開けて去って行った。



 ぽつんと残された姉ちゃんが、

「お土産にお菓子、作ったんだけどな…。」

 寂しそうに言うと、




 扉が………開いた。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 わざわざ菓子だけ回収しに戻ったライズが去ったあと、

「夜も遅いから泊まっていきなさい!ご両親にはもう連絡しといたわ!」

 無駄にテンションの高い姉ちゃんの言葉によって泊まる事になった俺たちは風呂に入る。


「…今日のことは、父さん達には内緒にしておきます。」

 …そういえばソラの両親は柱央中枢管理所……つまりはお役所の偉い人だったっけ。

「…そうね。その方が良いわ、ソラ君。…アルカちゃんもランド君も、みんなに話しちゃダメだぞ!特にランド君!あなた口が軽いから気をつけなさい!」

「分かってるよ!!」


 なんでオレだけ注意するんだよ…。

 とはいえ今日は疲れた。もうとても眠い。



 大きめの布団に全員が入ったとき、

「待ってなさいって言ったのにまたなかったのね、アンタ。」

 アルカが、責めていると言うわけでもない微妙な表情で話してきた。


「…あのままじゃダメだと思ったから。」

 率直に答える。


「…ふうん。アンタにしては上出来じゃない…。」

 眠そうな表情で返事され、背中を向けられた。



 …褒められた!?あのアルカに!?、驚きと恥ずかしさが込み上げて来たとき、視線に気付いた。

 既に眠っているソラを挟んで、ニヤニヤと見つめてくるセレン姉ちゃん。


「ッ!!もう寝る!!」



 本当に、大変な一日だった……。

見切り発車でキャラの人生を細かく煮詰めていないと、一言言わせるだけでも大変ですね…

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