エピソード33 = 侵入者
「排除を実行する。」
切断した扉を山折りに蹴破って現れたものを見たとき、一瞬オレはそれが何なのかが分からなかった。
機械のような、人間のような……。
アームと脚は遺神体のそれだが、胴体は人間のそれだ。
痩せこけて赤黒く傷んだその土気色の肌、虚ろな瞳………そして、手脚がない。
その風貌はリンから聞いたハイヴの異変と一致した。
もしかして、行方不明事件の犯人なのか……?
でもこの姿は……遺神体の………。
その怪物を見た近くのおばさんは動揺しながら聞き覚えのある名前を呼ぶ。
「ジルコ………?アンタなのかい?!」
ジルコ?!
_____そういえば新聞で見た二番目の行方不明者の名前がジルコだった…!
行方不明になった妻を探してそのまま消息を絶った人物。
それが何故今になって現れたのか知る由も無いが、その男_____ジルコの様子は非人間的な無機質さというか……明らかに様子おかしかった。
「その体はどうしたんだい!?何で外の化け物と同じ様な見た目をしてるのさ!?」
ジルコはまるで聴こえていないかのようにおばさんには目を向けず、こちらの方へ歩いてくる。
その視線はまっすぐにライズさんを捉えていた。
「ライラちゃんは見つかったのかい?」
ジルコはその言葉を聴くと、やっとピクリと歩みを止めた。
「………………死んだよ。」
「えっ!?」
「廃棄モジュール内部の空間で、手脚を折られて……死んでいたよ。これで…満足かな?」
冷淡な口調で他人事の様に話し、再び歩き出す。
「………何でそんなに冷静でいられるのさ…?」
おばさんの言葉はもう耳には入っていないようで、カツカツと此方へと近づいてくる。
まるで磁石が反発するかの様に人々は道を開け、とうとうオレ達の目の前までやってきた。
近くに来るとプンと死臭が漂い、オレは顔をしかめる。
同じ人間だとはとても思えない風貌に恐怖心しか感じられない。
唯一の逃げ場であったこのシェルターまで攻められては、もうどうしようもないと諦めるしかなかった。
_______バキンッ!!
「なっ!?お前何を…………。素手で!?!」
ライズさんが牢屋を圧し折ってオレ達の前へ出る。
「コイツから離れろ。今のコイツは___遺神体の操り人形だ。」
ライズさんの言葉を聞いて蜘蛛の子を散らす様に散り散りになる人々。
オレ達もその流れに巻き込まれて、ライズさんから引き離されてしまう_______
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「その様子…頭脳中枢を破壊しないまま接続したな……!」
「お前を排除する。」
言葉はお互い一方通行で通じていない。
もっとも、もとより意思疎通を図る気はないのだろうが。
「ああ……そういう事か…。セル内に入り込んでいたお前のエラーチェックにオレが引っかかった訳か。」
ふと納得して様にライズは頷き、左手首から得物を取り出して構える。
ライズが戦闘態勢を取ったというのに、ジルコは棒立ちのまま動かない。
「…どうした?動かないようならこちらから…………!?」
すると突然天井からガリガリという音が聞こえ出した。
それを聞いたライズはすぐに入り口に向けて走った。
すぐさまライズは部屋から脱出し、廊下へ飛び込んだ。
「____座標更新。」
ジルコの一言で廊下の奥___ライズのいる位置から凄まじい音がした。
___ガリガリガリガリッガギギギギギッガガガガガガ!!
轟音と地震____シェルターの廊下に直行する形で、大ムカデ_____コマンダークラス:ノードがライズに襲いかかった。
それを確認したジルコはシェルターに残っていた人々に目を向ける。
誰もが、次は自分か、と恐れていた。
「もうこのセルは終わりだ。今まで僕たちを生かしていた遺神体は、僕たちを廃棄することを決定した。」
ジルコはそう言い残して、誰にも手を出さないまま廊下の方へ歩き出した。
「希望は持たない方がいい…。こんな身体になった僕が保証する。」
その時だけ、ジルコは人間味のある憂いを帯びた目をしていた。
誠に勝手ながら、予告の通り今回をもって毎日更新をやめ、不定期更新とさせて頂きます。
頻度は2週間に1〜4回程度を予定とさせて頂きます。(文字数のノルマは増やします。)
拙い本作ではございますが、これからもアウトデイテッド・セルを宜しくお願い致します。




