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エピソード32 = 懺悔

「俺はこことは別のセルからやって来た。…………そのセルはここと同じ様に遺神体がセルの解体を行う廃棄フェーズに入っていた。」


 ____別のセル。前々からライズさんの言葉の中での“セル”に違和感があった。

 オレ達の過ごすセルでは知り得ないはずの事を知っていて、そのおかげで幾度となく助けられた。

 ……だから、何となくそうではないかと、僅かに思った事は一度ではなかった。


 オレ達は、ここのセルが世界の全てだった。

 セルの外には何もないと思っていたし、わざわざハイヴに入ろうとする者もいなかった。

 我々は何処から来たのか……そんな資料は少しも存在せず、過去も未来も見えぬまま、今を見つめるしか出来なかった。

 オレ達の常識に、セルが複数存在するなどはなかった。


「……俺のいたセルは滅びようとしていた。そこで俺たちは特別な遺神体から奪ったパーツをジャンク_____ここではメンデッドだったか?、に移植して、伝承にあった地上を目指させた。……そこは食料が豊富に存在し、遺神体もいない安全な地だ。」

 ライズさんは辛そうな表情で話を続ける。

 誰もが無言で聴き入っていた……ライズさんの全身がメンデッド化されているという風貌は、その突飛な話に現実味を帯びさせるには十分だった。


「俺はその任務を与えられた『フラグメント』の1人で……………途中で任務を放棄してここへ逃げ込んだ臆病者だ…。」

「ちょっち待って、質問して良いかしら?」

 ライズさんの言葉を中断したのはセレン姉ちゃんだった。


「あなたが逃げて来たのは良いとして、それがどうやったらこうなるの?廃棄フェーズに入ったセルの住民は、1人足りとも逃がさないって事?」

「それは違う。俺はこの数週間をここで過ごしハイヴに入り浸ったが、そんな素振りを見せる事はなかった。…………さっき俺には特別な遺神体のパーツが備わっていると言ったな。」

 ライズさんは両腕をヒラヒラと動かして見せる。

 その腕にはよく見ると淡く発光している部品が1つずつ付いていた。


「この両腕にはあのムカデ野郎の親戚のパーツが埋め込まれている。

強制停(シャットダウ)止権限(ンモジュール)』と『破壊(デストラクシ)権限(ョンモジュール)』だ。」

 ハイヴで使っていた遺神体を停止させる能力、それともう一つはあの伸縮自在の棒だろうか。


 オレは疑問に思った。

 ……パーツが取れるって事は、そのセルの大ムカデは倒されたのだろう。

 そうだとしたら、まだ希望はあるはずなのに…何故ライズさんはこんなにも落ち込んでいるのか?


「遺神体の感知に引っかからない様に立ち回っていたんだが、ついに今日引っかかっちまった……。セルの中は大丈夫だと、油断していた。本来セル内部にエラーを検出する機能はないはずだったんだ…………俺の故郷と何でもかんでも同じだと思っていた。」

「…つまり、テメェを狙ってアイツらは攻めて来たのか……!」

 大人達は皆憤慨していた。

 セレン姉ちゃんすらも難しい表情でライズさんを見つめていた。



「ここから出て行け!さっさと野垂れ死にやがれ!!そうすれば全部解決するんだろう!?!」

 軍部の男がライズさんに銃を向けて吐き捨てた。


 それを皮切りに皆に火がついた。


「「「出て行け!!」」」「人殺し!」「化け物が!!」

 皆口々にライズさんを罵倒し、オレ達は茫然とそれを見つめる事しか出来なかった。



 加熱されていった空間はとうとう爆破した。


 __________ダーーンッ!!


 軍部の男が引き金を引いた。


 ________放たれた弾丸はライズさんの胸の金属に跳弾し壁に凹みを付ける。



「「ライズさん!!」」「アンタ何やってんのよ!!」

 オレとソラはライズさんの安否を心配し、アルカは軍部の男に怒鳴りつける。


「なんだと!?餓鬼が……!!コイツを殺して両腕を地上に置けばそれで解決するんだろうが!何の文句がある!!」

 30代前半ほどのその男の剣幕にアルカは圧倒される。

 所詮オレ達は12歳のガキで、下手をしたらこの男の三分の一も生きていない。

 オレ達の言葉は大人には通じないし、力ではさらに届かない。


「子供に当たらないで!!」

 すぐさまセレン姉ちゃんが庇いに入る。アルカは涙を堪えて嗚咽を漏らしていた。

「いきなり銃で人を撃つ方が文句があるわよ!!案の定跳弾していたじゃない!それが人に当たっていたらどうなっていたと思うの!?!!」

 セレン姉ちゃんの剣幕には流石に敵わなかったのか、男は苛ついた表情で答える。


「次はちゃんと顔を狙う!それで良いだろ!?」

「そういう事が言いたかった訳じゃない!!」「ほら君!とりあえず銃を下ろしなさい。」

 流石に発砲するとまでは思っていなかった様で、ライズさんに罵詈雑言を浴びせていた人達までもが男をなだめようとする。


 その光景を見つめるライズさんの目は、磨りガラスの様に濁り、やつれていた。




 _______ギリィーーーーーーー!!!


 突然響き渡った音にオレ達は後ろを向いた。


 音は最初に入って来た扉からのものだった。


 ___オレの目に映ったものは、堅牢に見えた扉を切断するあの遺神体のアームだった。



「……テックフェーズ7コネクタ___排除対象を発見。位置座標を送信。__排除を実行する。」

厨二病っぽいルビをやっと振ることが出来た……。


ゲームで一度見かけただけでしたがやってみたかったんですよね…これ。

音の響きを重視するルビと、意味や実態を表す漢字、特殊な形容詞のようで私は好きです。

一つの言葉を聞いたときに脳内に現れる印象の関連をなるべく多く表現出来るので素敵だと思っています。

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