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エピソード21 = 追想

 僕はすぐにジャンクパーツを束ねて作ったあの即席の槌でその遺神体を叩き潰す。

「ギッ!ギキィィギ!ギキィィギ!キィキィキィ!ギキィィギ!!!」

 クシャリとそれが凹む感覚と同時に、何かが千切れた感覚があった。


 ……?

 腕の肘から先が無くなって、槌にそのまま付着している。

 まだ痛みはあるものの順調に回復していると思っていたのに……。

 両腕は壊死して痛覚が死んでいただけだった。

 暗闇であることが災いし、目が慣れても状態までは良く分かっていなかった。


 しかし、両腕を失っても特に感情に変化はなかった。

 ……やっぱりこれはおかしいのではないか…?

 脚を失ったときにはあんなにも悲しんでいたはずなのに、腕を失った今、僕は自身の状態になにも感じていない。



 ……あぁ、生にしがみつく必要がないからか。

 厳密には状況が状況なだけに万に一つも助かる術はない、と諦めてしまっているのだろう。

 そんな中、僕はライラと再会する事が出来た。

 それだけでもう充分だったんだ。


 ……??

 ふと気になって辺りを見回すが、ライラの姿が見えない。

 …あれ?どうしてだろうか……?

 そんなときに、何故か出会った頃のライラの言っていた事を思い出す。


『どうしてそんなに死に近い身体をしているのに、こんなに明るく生きられるんだい……?』

『食べた物が自分の身体になるように、知識や記憶も自分の心になるの。だから、死んだとしても私はみんなの心に生きている。それならみんなの心の中の私は、苦しそうにしている私よりも、楽しそうにしている私の方が絶対にいいと思うの!』

 無邪気にはにかむライラを、そのときの僕は心の底から尊敬した。



 ……ははっ………ふふっ…!……ァハハッ!…アハハハハハハハハハ!!!

 笑った、笑い転げた、遺神体という外敵を前にしていながら、僕は再び多福感に支配される。


 そうだった!ライラは生きている(ボクのなかにいる)!!

 僕にとってライラは、希望であり、太陽であり、大黒柱であった。

 その生き様にもたれかかって、僕はやっと安息を得たのだ。

 ……でも僕の中にライラは酷い目にあって、あの頃とは比べられない無残な姿をしている…!

 ライラをあんな目に遭わせたアイツらが憎い!憎い!


『喧嘩はダメだよ!やり返しあっていたらずっと苦しいままだから、相手が謝ったらそこで、私たちは許す。そうすればまた元どおりだよ!』

 また、ライラの言葉が浮かんでくる。


 …そうだ!アイツらに謝らせよう……!そうすればきっと、ライラは元どおりの元気な姿を僕に見せてくれる!!


「ギッ!ギキィィギ!ギキィィギ!キィキィキィ!ギキィィギ!!!」

 叩き潰された遺神体は未だもがいて、不快な音を撒き散らしている。

 ひしゃげた本体からデロリと垂れたアームに目を奪われる。


 何はともあれまずは手足をどうにかしないと。

 …これを腕の代わりに出来るといいな。

 脚の一部に繋いだ腕のパーツを使って遺神体を解体する。

 偶然か遺神体は、メンデッドに非常に近い構造をしていた。

 この数日に試行錯誤したおかげで構造が驚くほどに理解出来る。

 脚のモジュールを自分が今つけているメンデッドパーツと交換すると、思っていた通り動かすことができた。


 おっとっと!うわっ!

 片脚に3脚ついた脚の制御は難しく、上手くバランスを取れずに何度も転倒した。

 5分程悪戦苦闘したのち、脚をプルプルと震わせながら辛うじて歩く生まれたての子鹿が誕生した。

 …子鹿に失礼だね……。思い浮かべた事をかき消す。


 残った遺神体のパーツは微動だにしない。発声機構が脚側についていたようでガラスを掻くような耳障りな音は既に止んでいた。

 どうにかしてこの刃付きのアームを腕に移植したいのだけれど…。


 機械を脚に繋ぐ事が出来たのは、あくまで切断された義足の付け根がアタッチメントの役割を果たしたからだ。

 僕の腕にはその役割を果たせるものは何も無い。

 …いっそ脚からさらに生やしてしまおうか…そうするとフォルムの人間離れがさらに酷いことになるなぁ。

 しかもこれ以上動かす部位が増えるとただでさえ動かしづらいものがさらに難しくなってしまう。

 今でさえ感覚のない状態で足の指3本ずつを、第一関節第二関節しっかりと意識して動かしているような無理のある状態だった。


 丁寧に遺神体の胴体から外したアームを確認する。

 叩き潰した直後に脚はジタバタともがいていたのに対し、このアームは微動だにせずにズルリと本体から出ていた。

 ……壊れていたらどうしようか…?

 細く繊細なようで実際には傷は見当たらず、得物が付いている辺り攻撃用にも見える。

 攻撃用の触手であったのなら、雑に扱って内部が破損する事を考慮してシンプルで衝撃に強く作っているはずだ。

 動かないのは本体が壊れたからだろう。

 冷静に推測しているようでいて、その実自分に都合の良い方へ思考を誘導しているだけだった。

 どちらにせよ確認してみないことにはどうしようもない。

 ひとまずは脚の余ったコードに繋いでみる。


 ……………………………。

 ……動きはした、が、関節が脚に比べて多いせいで思うように動かせない。

 …これはダメだな………。

 次の策を考えなくては…。

主人公が誰だか分からなくなってきた今日この頃。


一応、ライズとランドが主人公です。

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