エピソード16 = 失踪者たち
「これとかどうかしら?」
「「「ありがとうございます。」」」
オレ達は今、セレン姉ちゃんの家で行方不明者事件について調べごとをしている。
とは言っても、関係ありそうな新聞を片っ端から読んでいるだけだけれど。
「これが、最初に行方不明者が出たときのヤツね…。」
セレン姉ちゃんは引っ張ってきた新聞を広げて記事を指差す。
『5/26妻の捜索願い…ライラさんを見かけたかたはご連絡ください。
23日に柱央中枢管理所に勤めるジルコさんが帰宅すると、家が荒らされており、妻のライラさんがいなくなっていたという。
ライラさんは特殊なメンデッドであり、擬似臓器パーツを週に一回交換する必要がある。
既にいなくなってから3日経過しており、発見したかたは早急に※※※※※※までご連絡いただきたい。』
この記事には見覚えがある。
そもそもセルでは事件が事は稀で、毎日ありきたりな内容の新聞を流し見るのが日課であった。
そんな新聞に珍しく事件が記されてあったため、見ず知らずの人の失踪であっても印象に残っていた。
「こっちが二件目。」
『6/4妻を探す夫、失踪す。
30日から柱央中枢管理所に勤めるジルコさんが職場に顔を見せなくなった。
ジルコさんは先週の23日に妻の行方がわからなくなってからその捜索に身を費やしていたようだ。
「怪我した後も明るく評判のいい人だったんだけどね。奥さんが失踪してからは酷い有り様だったよ。」と近所のひと。
妻のライラさんは特殊なメンデッドであり、擬似臓器パーツを週に一回交換する必要がある。
その期限が近づいたために焦ってハイヴに進入したのでは、という声も上がっている。』
「このジルコって人もメンデッドなの。事故で脚を失った後天型メンデッドで、奥さんのライラさんとはメンデッド同士の集会で出逢ったそうよ。」
ずいぶんと詳しいなぁ…そう尋ねると。
「ええ、今私柱央中枢管理所に勤めているのよ。当たり前じゃない!」
オレ達は驚いた。
医療機関をやめたあとは何も教えてくれなかったので知らなかった。
「この資料も全部私が掻き集めたものよ!」
職権濫用などと指摘する気力は起きなかった。
ライズさんを救う為だ、と早くも恩返しが出来そうな事態にオレは奮起していた。
「この二件目までは被害者がメンデッドなんですね…?」
ソラの質問に答えるセレン姉ちゃん。
「そうなのよ!だからこの二つは無関係なんじゃないかとも言われているわ…。」
そのとき、付けっ放しにしていたテレビのニュースが耳につく。
『昨日、この数週間の間世間を騒がせていた行方不明者事件の犯人と思わしき男が捕まりました。
男はセルのアーカイブ上の名簿に名前が存在しないメンデッドであり、それを捕らえた柱央中枢管理所の職員は、「未だに犯行を認めないが、十中八九犯人だろう。」と言っていました。』
「デタラメだよ!!」
オレはつい大声を出してしまった。
お前らがライズさんの何を知っているのか、それを勝手に犯人と決めつけて…!!
「メディアの質もどんどん落ちてるわね…。柱央中枢管理所の職員だったら情報を漏らす事を厳しく禁じられているから、職員の声は作り話ね。」
オレ達に情報を横流しにしておきながらしゃあしゃあとのたまうセレン姉ちゃんを白い目で見ながら新聞を読み進める。
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「だから何度も言ってるでしょー…。俺じゃないんですってー。」
独房に閉じ込められたライズという男は、身の入っていない軽い口調で抗議をしている。
こんなものが今までまったく犯行を目撃されていない誘拐犯なのかと疑問は尽きないが、とにかく話し相手くらいにはなってやろう。
独房の見張りという極めてやりがいのない暇な仕事だ。
これを暇つぶしのラジオのように使っても誰も、本人すらも文句は言うまい。
ここには他に収監されているものはおらず、危機感というものも湧きはしない。
そうやって時間を過ごしていたとき、収監所の入り口のドアが開く。
上司にやる気のない姿を見せる訳にもいかず、ピシリと立つ。
上司はカツカツと足音を立てて私の前にくる。
私に何か用事でもあるのだろうか…?私は敬礼する。
すると、その上司は私をつまらないものを見るように一瞥した。
「キミ、俺が出るまでここから離れていいよ。」
「はっ!承知致しました。」
いいよ、という任意に見える許可だがとどのつまり出て行け、ということだった。
上司の命を無視するわけにもいかずに私は収監所を出てすぐの扉の前で待機する。
…そういえば、あの上司もメンデッド差別をしていたな…。
最初の2人以外の行方不明者は皆メンデッド差別を声高らかに行っている者ばかりなのは中枢管理所では既に周知の事実であった。
次に襲われる人がいるとしたら、きっとそれはあの上司なのではないだろうか…?
今2000文字程度に収まっている内容で6000文字程度まで書けるようになったら、文章力が付いたと言えるのではないか…。
遠い道のりだ…。




