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エピソード11 = ハクリ

「…わかった……。信じる…。」

 肩の力を抜いた少女は、オレ達の間から少しずれた位置に移動する。


「とりあえず時間がないから手短にするぜ。俺は……ライズ。こっちの2人はランドとソラだ。コイツらと同じくらいのアルカって女の子とはぐれて探している。悪いが協力してくれ。」

 ライズさんは右手を少女に差し伸べる。

 少女はその手を不思議そうに見つめながら、

「…わかった。協力する…。…私はリン。」

 小さくお辞儀をした。


 ライズさんは差し伸べた手を無視されて残念そうに手を引っ込める。

「以外とすんなり呑んでくれるのか。ありがてぇ。…ところで、アンタの仲間は何処にいるんだ?人数が多いと助かるんだが……。」

「…1人。」

「「「え“っ?!!」」」

「…私…だけ。…ずーっと…。」

 驚いた。こんな少女が一人でここを闊歩しているなんて…。


「アンタらは何者だ?単身でハイヴに乗り込めて、姿も真っ白、はっきり言って普通じゃない。」

 自分のことを棚に上げないがら質問するライズさん。

 少女も何か不満そうな反応をしている。

「…ハクリって呼んでた。」

 固有名詞が聞きたい訳じゃなかったのだろう…ライズさんは眉をひそめながら次の質問をする。

「……とりあえずもう一つ、あの壁の穴はアンタがやった、違うか?」

 リンは頷く。

「…お腹が空いたから…。」

 おやつのパッケージを破り開ける程度の返答に、頭を抑えるライズさん。

「まじか…えぇ……いや!心強いな!ああ!」

 ライズさんは自分を無理矢理納得させたようだ。



 時間が惜しいので移動しながら話を続ける事にする。

「気を悪くしないでほしいが、アンタは「リン…アンタなんて名前じゃない…。」…失礼。リンは仲間から追い出されたのか?それともはぐれたのか?」

 先ほどまでの不満そうな様子の理由はそこだったのか。

 代名詞で呼ばれる事を拒否したリンに即座に対応したライズさんは、一人でいる理由を気にしているようだった。

「…ずっと前に喧嘩して…私から出て行った…。…そのあと…道に迷って…帰れてない。」

 ずっとリンはハイヴの中で生きてきたのか…オレは気になっていた事を聞く。

「そのゴーグルみたいなものは何なの?」

 リンは一瞬首を傾げたのちにやっと思い出したように答える。

「…ハイヴは眩しいから?つけていないと物が見えない…。」

 …どういう事だろう…?ここより暗い場所なんてないじゃないか、暗くてものが見えない事を言い間違えたのかな…?


 疑問が増えるばかりの状況にライズさんが仕切り直す。

「一旦本題に戻ろう。ここで女の子と出会ったりしては?」

「…ない。」

「ここ最近のハイヴの異常については心当たりは?」

「…ある。」

「あるのか?!!詳しく教えでっ!!」

 余所見をしたライズさんが、ひん曲がったパイプに脚を引っ掛けて転倒する。

 それを見たリンが、ふふっ…と小さく笑いながら助け起こす。

 最初はあんなに警戒していたのに、短期間ながら随分と慣れたものだと思ってしまった。


「すまねぇ…。」

 助け起こされたライズさんはパイプの切断面を注視し、

「…最近のハイヴの荒れ方は異常だ。このパイプもそうだが、遺神体がハイヴを破壊して放置しているようにも見える。その心当たりとやらを教えてくれないか?」

 話の流れで転んだ事を誤魔化す。


「…ライズと同じ…人型の遺神体?がいる…。倒そうとしたら…仲間をたくさん呼んで逃げていったの。」

「…だから俺は遺神体じゃな………?!」

 突然ライズさんの様子がおかしくなる。

「その人型の遺神体はどんな姿だった?!!性別は?!」

 何か焦った様子のライズさんなどどこ吹く風、リンは変わらぬ淡々とした口調で答える。

 正直その温度差ははたからみると大分シュールであった。


「…ぼろぼろの男…で、腕や脚に遺神体をつけてる…。」

 その返事を聞いたライズさんは悩み込んだ。

「…どういう事だ…?フラグメントにそんな能力者はいなかった筈だが……?あいつらではないのか…?」

 聞き覚えのない単語がまた増える。

 ジャンク…フラグメント…ライズさんはいったいどこからきたのだろうか…。

 謎が深まるばかりだ。


 死体のショックから立ち直ったソラが質問する。

「さっきから遺神体と出くわしてないですけど大丈夫ですか…?」

 ハッとしたライズさんが周囲を見回しながら答える。

「あのデカブツの通ったあとはそこそこの間は異常なし扱いを…しまった!!」


 オレ達はミスに気付く。

 アルカが助かっているならば、あの大ムカデが通っていない道しかないのだ。

「リン!デカブツを回避した路を覚えているか?!」

「…うん…。すぐ先………大丈夫…ロスは…ないよ…?」

 リンはオレ達の方に微笑みかける。

 何故オレ達の周りは気にかけてくれる優しい人ばかりが集まるのだろうか…?

 足手纏いの自分がここにいることが場違いな気がして辛くなった。

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