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エピソード9 = コマンダークラス : 『ノード』

 ライズさんの後を追いながら気付く。

 先程まで振り回していた棒状の得物が何処にもない。

 まさか、捨ててしまったのだろうか?…これからアルカを救いに行く前に!?

 いや、こんなこと考えちゃダメだ。

 湧き出た疑問を振り払う。



 分岐点に戻ってきた。

「ここで良いのか?」

「多分…そう…です。」

 逃げながらではっきりと見ていなかったが、はぐれてから分岐はさっきの場所までなかったのでここに違いなかった。


 その道の奥を見つめるライズさんの表情が固く険しいものになっているのに気付いた。

「…様子がおかしい…。近くには…上手く説明出来んが厄介な奴もいる…ここからは少し慎重に行くぞ。」

 道の奥から目を話さずに言ったライズさんが、先程よりペースを落としながら進み出す。


 その道は荒れていた。

 これまで通ってきた道は、まるで人の手が行き届いているかの様な綺麗さだったのに対し、この道は壁に亀裂が入り、パイプが外れて中から液体が漏れ出ている…まるで何かが暴れ回った様な雰囲気であった。


「何故遺神体達は修繕に来ない…?」

 ライズさんの言った言葉に疑問を覚える。

 遺神体が壁を直す?

 オレ達の釈然としない表情に気付いたのか、ライズさんは教えてくれる。


「遺神体は、いわばハイヴの管理人だ。壊れれば直し、侵入者は排除する。

 先に謝っておく…。お前たちが遭遇した個体は、俺が壊した入り口の鍵を直しに向かっていた個体だろう。

 どうせ誰も近づかないし、お前らも帰ったと思って壊しっぱなしにしていた…。」

「そんな…、勝手に後をつけたオレ達が悪いんだ…。」

「言ったろ。俺が蒔いた種だって。そっちの分はまああんまり気にすんな!俺も似たようなもんだったからお前らを叱れる立場じゃねえんだ。」

 自嘲気味に笑うライズさんは、壁の壊れ方を念入りに調べているようで、何かに気付いた。


「断面が遺神体に切断されたもののそれだな。ありえねぇ、何故遺神体がハイヴを壊す…?……ん!?」



 壁に大きな穴が開いていて、その窪みに人が倒れていた。

「「ひっ!」」

 人が倒れているのを見るのは2度目であったが、今回は勝手が違う。

 幸い、アルカとは似ても似つかない大人の男性であった。

 …よかった。アルカじゃなくて…。

 オレは不謹慎ながら安堵した。


「お前らはあまり見ない方がいい。……変だな…死後4日ってとこか……?」

 オレ達に気を遣ってくれたライズさんはまたもや不可解な事実を見つけたようだ。



「4日も壁の穴が放置されるわけがない……つまりは、ここで修理を邪魔し続けている奴がいた筈だ!だから()()ここにいる!マズイな!」

 焦った表情でオレ達の顔を見る。

「早く離れるぞ!ここに長居するのはヤバイ!。」

 急いで離れようとした時に、死体の顔を見てしまった。


 知り合いではなかったが、最近報道で見たばかりの顔であった。

「この人いなくなった人の1人だ…。」

 オレの言葉にライズさんが反応する。


「マジかよ…!ここに立て籠もれるだけでも相当ヤバイぞ。そんな奴が例の事件の犯人ってのは、止められる奴がいないのと同じ事だぜ……!」

 焦りながら耳を澄ましているライズさんは、突然ハッとして壁の穴に身を潜める……オレ達の首根っこを掴んで。


「「うわっ!」」

 突然の事に抗議の視線を向けると、

「しばらく黙れ!…奴が来る!…目を瞑っていいからとにかく音を立てるなよ…!!」

 ここから離れるべきじゃなかったのか?と疑問を抱きつつ、手をついたところが死体の腹であった事に気付く。

「ヒッ……」

 血の気が引いてゆく。

 その感触は硬く、石に触っているようだった。



 突然、ゴリゴリと大きなものを引きずるような音と振動が壁越しに体に伝わってくる。

 それはだんだんと大きくなっていき、それを聞いたオレは死体の事も忘れて怖くなっていた。



 そして、それは現れた。


 道を埋め尽くす程の太さの巨大な何かがが、さっきまで立っていた道を埋める。

 それは、巨体の下に生えた大量の脚で、地を掻き毟る様に移動している。

 途方もなく体が長い様で、そこそこの速さで移動しているのに一向に通過しきる様子がない。


 突然、地面ごとその化け物に引きずられる感覚に襲われる。

 死体を脚の一つが串刺しにして引き寄せていた。

 ライズさんが咄嗟に掴んでくれたお陰でその脚の方に巻き込まれずに済むが、そのまま死体は目の前で地面を引っ掻く様に移動している脚に巻き込まれて……。




 凄惨な光景を目にした後も、なかなか目の前の怪物はなくならない。

 いつのまにか死体だったものも綺麗さっぱり消えて、全てが幻だった様に錯覚する。

 そのままぼうっと光景を見つめていたら、突然その怪物は消えた……いや、やっと通過したのか。


 振動が感じなくなるまで穴に潜む。

 こんなものと出会っていたら、アルカは…。

 恐ろしい考えに身を震わせながら、それでもと希望に縋る。

 完全に音が聞こえなくなってからオレ達は穴から出る。


 あんなものが通った後なのに地面を引っ掻いた様な痕跡もなく、寧ろ通る前より傷が少ないほどに舗装されている道におどろく。


「やっと去ったかムカデ野郎……。すまん、気を取られていてこっちに方向転換したのに反応するのが遅れた……。」

 ライズさんが苦々しげに化け物の去った方向を睨み、そして、


「残念だが、アルカが無事な確率はだいぶ下がっちまったな…。」

 残酷な事実を告げた。

描き始めて一週間と少し、既にキャラクターの口調が変わってしまっている事に気付く…。

そして空気化したソラ君…。


とりあえずやっと次回、やっとヒロインを初登場させる事が出来そうです…。

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