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天空の隼  作者: 西渡島 勝之秀
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反撃の狼煙

 渋滞気味の国道をほぼトップスピードで走る一台のバイクがあった。

その車体は通常の物より一回り大きく本来スピードメーターがついている部分にはカーナビのような物がついていた。

その画面には必死に逃げ回る紫色のGTEが写っている、画面を見ながらその男は心底楽しそうにまるで一緒に人がいるかのように話しかける。


 「くくく、紫はポイズンカラー。どんな毒を装備してるのかと思えば三雲、お前の妹のようだぞ。」

 

 彼の問いかけに前面のカーナビのような物から女性の声が返ってくる。


 「あれは美空シリーズの中でも感情が読めない子だからね。いや、読まないと言った方が正しいのかも知れないね」

 「あれじゃ、装士の身体が持たないだろうに。く! ぷははは!」


 バイクを操る男、京極一輝は更に加速させると目的地に向かい疾走する。

クラクションが鳴り響く中、周りの車の空気抵抗を利用しながら限界を超えた速度で疾走する。

一歩間違えれば即死する状況であるが一輝は笑いながら走り抜ける。

そんな一輝に三雲は心底呆れたように問いかける。


 「一輝、あんたはもうちょっと普通に走れないの? 何回あたしのボディを壊せば気が済むのかしらね。見てよ、このボディ。最早戦闘用ですらないじゃない」


 「お前はそもそも戦闘用ではなく収集したデータを集めて解析する為のOSだろ?」


 一輝はにやけながら三雲の抗議を回避すると道を外れて落下するように落ちていく。


「まったく……ああ言えばこういう……捻くれ者ってはどうしてこうなのかしら?」


三雲が何か文句を言っているが一輝はそれに耳を貸す事は無かった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 悠馬は迫り来る脅威を見つめると抱えた女性警察官を一度強く抱きしめてから横にそっと寝かせる。

満身創痍の体を気合だけで起き上がらせると手に銃を持ちセパルに向かって歩き出す。

悠馬に向かい機械的な女性の声が語りかける。


 「理解出来ませんね。先ほども言いましたがこの機体ではあれは倒せませんよ。それに、無理をしてもう一撃でも攻撃を受ければ貴方の生命活動に支障をきたす事になります」


 「そういう事じゃないんだよ。助けなければいけない人がいるそういう時は死んでも立ち上がるのが機動隊員ってものなんだ!」


 「死んでも立ち上がる? 生命活動が止まれば立ち上がれませんが? 言ってる言葉すら理解不能になりましたね。それに、貴方は既に戦う必要すら無いのですよ、彼が来ましたので」


 ガギィィィィィイィ!


 会話が終わると同時に嫌な金属音がなり響く。

呆然と前を見ると目の前には後輪を流体金属生命体に食い込ませたバイクがあった。


 「三雲、そのまま後輪を回転させ続けてくれ」


 「いいけど、またボディを壊さないでね?」


 一輝はバイクから降りるとゆっくり悠馬に近づき話しかける。


 「お前、面白い奴だな。俺は結構無茶な奴は好きだぜ」


 一輝は悠馬から銃を奪い取ると流体金属生命体に銃身を向けて


 ズトガァァァン!


 と、弾丸を発射させながら後方に吹き飛んでいた。

発射された弾丸は流体金属生命体に向けて飛んでいく。

バイクの後輪により徐々に抉られていった先にはうっすらと赤くて丸い玉のような物が見えた。

発射された弾丸がその赤い玉を撃ち貫くと流体金属生命体セパルは只の水のようにその場にバシャリと落ちた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 機動隊本部の司令室には数多くの管制官達が急がそうに動く姿があった。


 「機動1班ロスト! 2班通信障害により状況の把握が出来ません!」


 ショートヘアの若い女性オペレーターが鳴きそうな声で叫ぶ。


 「各班の安否と状況は最早確認する手段はありません……美麗さん、私たちはどうなるんですか?」


 錯乱状態一歩手前の部下に美麗は優しく、そしてハッキリと告げる。


 「落ち着きなさい、こういう時は現場の皆を信用するしかないの。大丈夫、私達はこの天皇国の守護神なんだから」


 美麗が優しく肩を抱くと部下の女性は落ち着きを取り戻す。

実を言えば美麗も不安であったがこうなってしまっては自分が気を確かに持つしかない。

その時、管制室の大型モニターの映像が切り替わった。

そこに映し出されたのは彼らのボスにしてこの天皇国の主、皇天部だった。


 「親愛なる天武衆の諸君、元気かね?常日頃より私の為に頑張っている君達に是をプレゼントしよう」


 その言葉だけを残し天部の姿は画面から消える。

プツリと映像が切れた後に新たな映像が流れる。

其処には悠馬セパルと遭遇してから一輝がセパルを撃破するまでの一部始終が記録されていた。


 ウオオオォォォォォ!

 

 と、天部衆本部に歓声が上がる。

先ほど奉行から送られてきた映像に機動隊本部が盛り上がる中、美麗はホッと溜息をつく。


 「まったく……無茶ばかりするんだから。」


 美麗は映像と一緒に送られてきたファイルの中身を確認し次にやるべき事を考えて実行する。

 内容を確信した美麗は気を引き締めて全世界に向けて通信を開始した。


 「こちら、天部衆如月3等装尉です。機動隊員並びに各国軍隊に通信します。これより未確認飛行物体をソロモンと呼称、其処から発生した敵をセパルと呼称します。セパルは水の特性を併せ持った金属体で衝撃を反射します。しかし、その反射は衝撃に比例する物で跳ね返る前に新たな衝撃を加えるか一定の衝撃を与え続ける方法でその装甲は突破可能」


 美麗は一度間を置き立ち上がると前方を指差し何処へとも無く号令をする。


 「是より人類はソロモン及びセパルへの反撃を開始する。もう一度言う、是より人類はソロモン及びセパルに反撃を開始する。復唱せよ!」


 「反撃開始!」 「反撃開始!」 「反撃開始!」


 本部のあちこちで……いや、世界中で反撃開始の号令が始まる。

 美麗は世界各地の士気が万全である事を確認すると悠馬の個人回線を開いて呼び出す。

 直ぐに応答した気まずそうな顔の悠馬に不機嫌な事を隠すことなく言う。


 「で、何かいう事は?」


 美麗は不機嫌な顔を保ったまま内心笑っていた。

 それは、悠馬が怒られた子供のような顔をしていたからではなく。

 それを愛しく思ってしまう自分が可笑しかったのだった。

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