首脳会議
皇都の中心に位置する皇宮の一画で二人の男性がモニタに写る数名の人間達と会話をしていた。
一人は白髪の長髪に長い髭を生やした老齢の男、名は皇天部この天皇国を治める者である。
その隣に座っているのは渡邊奉行、今この国の命運をを握っている男だ。
二人はこの惨状の中何処なく自信ありげにモニタの先に写る各国の代表達の顔を見ている。
沈黙を破り、始めに話し始めたのは連邦国大統領マイケル・マーティンだった。
「今回の件について誰も発言が無い様なので私が議長をさせて貰ってもよろしいか?」
マイケルの提案に他の者達が頷き承諾をする、本来であれば誰もが主導権を握ろうと画策する連中なのだが今回は性質上いけ好かない奉行にお伺いを立てなければならない為に遠慮せざるをえなかったのだろう。
実を言ってしまえばマイケルも嫌なのだが面識がある以上自分がやるしかないと判断したのだ。
「早速だが、例の未確認飛行物体だが、未確認飛行物体では言い難いので名称をつけます」
マイケルは物事を自分で決める男だ、何かをするにしてもいちいちお伺いを立てると言うのはどうにも好きになれない。
よって、基本的には全てを決定事項として進めるやり方をする。
各国の首脳もマイケルのやり方が好きでは無いが慣れている為か最近では気にする方が馬鹿らしいとさえ考えていた。
この有無を言わせないリーダーシップこそ彼が多くの小国がまとまった連邦を束ねる事が出来た最大の理由である。
「名称か……何か考えてはあるのか? マイケル提督閣下様。いや、今は大統領閣下だったかな? これは失礼!」
ガハハハ、と大笑いしながら奉行がマイケルをからかう。
マイケルは露骨に嫌な顔をし、内心でコイツの人を小馬鹿にする態度が嫌いだと思う。
だがそこは流石に一国を背負うもの、平静を装い話を続ける。
実は奉行はマイケルのこういった所がからかい甲斐があると思っているのだが本人がそれを知る由は残念ながら無い。
「奉行さん、余り私に過去の驕りを思い出させないで頂きたい。あの出来事をきっかけに人類同士が無駄な殺し合いをしなくなったのは確かだが我々が武力を捨てなかったのはこのような時の為にだったのだろう?」
マイケルは鋭い眼差しで奉行に問詰める、それに対し奉行はふてぶてしい態度で対応する。
「まぁ、漠然とではあるが外宇宙に我々が対抗できない脅威がある事はわかっていた。本当に攻めてくるとは思ってなかったがな」
奉行の言葉を聞き首長国の若き指導者アルシャットは静かに話し出す。
「奉行殿は導きを得ていたと言う事ですか? どのように神託を得たのかをお聞かせ願いたいのですが」
アルシャットは独裁国家の首長である、独裁国家の長ともなれば残酷で独占的なイメージがあるが彼は違った。
彼は18歳の時に神託得て、当時臣民を虐げていた先王を天皇国の助力を得て革命を起こした人物である。
アルシャットは実名ではなく革命後に首長を襲名した際に名乗るようになった名だ。
彼は天皇を現人神と呼び天皇国・首長国の国民を神民と呼び同一宗教圏を天皇国筆頭として連合化した政治的手腕も高い人物であった。
革命の際にディーを使用した事から開発者である奉行を聖人と崇めたてる彼を実は奉行は苦手と思っているのだが是もまた本人が知る由は無い。
そんな彼を茶化す気にはなれず奉行は普通に答える。
「まぁ、信じないかも知れないが……俺の助手は宇宙人だったのさ」
奉行もこの発言をするのは流石に止めようと思ったのだが他に思い浮かぶ理由が作れなかった為正直にいう。
暫くの沈黙の後。
ドン!!
と、言う音と共に立ち上がった男がいた。
鎮帝国・鎮天佑皇帝たっだ、天佑は今時では珍しい軍事国家元首である。
天皇国とは戦争時代に幾度も激突した相手だった為に今でも中は悪い。
「てめぇ! なめてんのか! 馬鹿にするのもいい加減にしろ!」
若き皇帝は憤りも隠さずに奉行に殴りかかる。
が、その拳はアルシャットによって受け止められた。
「そうか! てめぇも気にくわないんだよ! 宗教連合の腐れどもがぁ!」
憤慨した天佑はアルシャットと殴り合いを始めようとしたが瞬間……
二人の体は宙に舞った。
地に伏した二人が仰ぎ見た人物は天部だった。
血気盛んな若者二人を軽く投げ飛ばしたこの人物こそが天皇国天皇・皇天部だった。
世界の3割を占める宗教連合の長にして世界最強のGTE武装組織天部衆を作り上げ全世界にGTEを浸透させた立役者だ。
白い髭を撫でながら鋭い眼差しを向けながらも彼は優しげな声色で話す。
「話が進まんじゃろうが、そこで頭をひやすがいい。で、マイケルの坊や先を進めるがいい」
マイケルは頬を引くつかせながら話の続きを始める、自分の過去の暴言を後悔しながら早くここから出て行きたいと心底思う。
「謎の生命体は金属の様に強固であり水のように柔軟、流体金属とでも言うのでしょうか? よって水の要素を持つ人知を超えた悪魔のような存在である事からセパルと呼称します。また、上空に浮く全長50キロメートルの外敵要塞を72柱の悪魔を従えた王から名を取り、ソロモンと呼称します」
マイケルはこの混乱に乗じ呼称を自分でつける、対象名称を自分でつける事により戦略会議での発言権を有利にしようとしたのだった。
各国代表もこうなると今更抵抗したところでと言った感じで同意をする。
マイケルは内心やっとここまで来たかと嘆息しながらも本題に入る。
「奉行さん、セパルに対抗する方法はあるのですか?」
奉行はマイケルの質問に対して自国の防衛部隊からの映像を流す。
「まぁ、収集された情報であれの倒し方は分かってるんだが……見た方が早そうだな」
奉行に言われ全員が画面を見るが紫色のディーがピンチに陥っている様にしか見えない。
「とても倒しそうにはみえないが?」
「いや、奴が来る」
不安そうなマイケルに奉行は不敵に笑ってみせるのだった。