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灯幻鏡  作者: 609
八咫烏編
3/5

第三話「チーム編成!そして結成!」

――翌朝、教室。

零と真琴が教室に入ると、既に黒板(スクリーン)に結果が張り出されていた。

そして、教室に来た者から黒板(スクリーン)に張り出されている結果を見ている。

零も、まずは自分の結果を見る。


――暁零

実技能力測定  柔技B・銃技B・剣技B+

魔術能力測定  魔量A・耐久力A・技量(コントロール)

魔講学能力測定 知識A・応用A・指揮力A


零は自分の結果を見て、一先ず安心していた。


『まぁー、ボチボチか……。さて、真琴は……』


零は真琴の結果を目で探してみる。

彼も、それなりの結果であった。


――土御門真琴

実技能力測定  柔技A・銃技A・剣技B+

魔術能力測定  魔量A・耐久力A・技量(コントロール)

魔講学能力測定 知識A・応用A・指揮力B+


零は真琴を見て、小さく微笑む。


「お前にしては頑張った方だ」

「零の方は、よく()()()()()()()()()ね」


と、お互い納得していた。

零と真琴は、()()()()の結果を見る。

そこには、劣等組と書かれていた二人の結果があった。

テストである以上、優劣はつけられる。

真琴は優等組、零は真ん中上ぐらいだろう。

そしてあの二人は劣等組、ようは落ちこぼれだ


劣等組通知

――緒川桃夜

実技能力測定  柔技A・銃技B・剣技A

魔術能力測定  魔量B・耐久力B・技量(コントロール)

魔講学能力測定 知識C+・応用C・指揮力C

――遠坂月乃

実技能力測定  柔技C・銃技A・剣技C

魔術能力測定  魔量C・耐久力C・技量(コントロール)

魔講学能力測定 知識C+・応用C+・指揮力C


この結果に、真琴は困惑した。


『え⁉僕も見ていたけど、ここまで低かったんだ……。零の読みが外れたのかな』


真琴は横に居る零を見る。

零は嬉しそうな顔をしていた。


『あ、当たりなのかな……』


彼の困惑は続く。

が、彼の困惑は打ち消される。

それは、彼が零から視線を外すと……


「土御門君、凄いね。私達もソコソコ、良い結果だったの」

「私達と組みましょう」

「俺らとも組もうぜ。リーダーは、お前でいいからさ」


と、畳み掛けて来るクラスメイト。

当然だ。

結果が出た以上、チーム編成を早く決めるのは当然だ。

そして、そのチーム編成は最低でも四人。

上限は無いとはいえ、人数が多ければ多い程ライバルは多くなる。

だからこそ、我先に()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。

真琴は苦笑いをし、


「ご、ごめん。もう、組む人は決まっているんだ」

「……それって、暁さん?」


クラスメイトは零を見る。

特に、女子達は零を睨んでいた。

当の零は、それを完全スルーしていた。

他の女子生徒達は、表情を笑顔をに戻す。

そして、真琴にグイっと近づき、


「幼馴染みで、ほっとけないんだね。じゃあ、()()()()()()()()()から一緒に組みましょう」

「えっと、僕は()()()()()()()()()だから……」


そして、真琴は「ははは」と笑う。

だが、その言葉には怒りを露にする。

いや、彼らからしてみれば()()()()()()()意味が解らないのだろう。


「それは可笑しいわ!」

「そうよ。土御門君の方が結果は上なのに!」


彼らの矛先は、零の方にもろにいく。

だが、それでも完全スルーを続ける零。

そんな零の方にグイグイ近づき、


「聞いているの、暁さん!」

「うるさい。お前達が何を言おうと、()()()()()()だ。関係のない者は関わるな」


零は不機嫌そうだった。

真琴は知っている。

零にとって、()()()()()()と認識している事。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と考えている事を。

それは、()()()()()()()()()()()()


そんな彼女は不機嫌なまま、遠坂月乃の席に向かった。

零は遠坂月乃の席の前に来ると、


「……遠坂月乃、私のチームに入ってくれないか?」

「え?私、ですか?でも……その……」

()()()()()()()()()()()()なら、諦めるが」

「いえ、そうじゃないです……」


月乃は立ち上がり、手と首を振った。

彼女からしてみれば落ちこぼれ組の烙印を押されればチーム編成に誘われるのも、誘うのも絶望的なこと。

だからこそ、こうして誘われている事が驚きなのだろう。


零はジッと月乃を見て、


「なら、組んでくれるか」

「……でも、私の結果は――」


月乃が自身の結果を言おうとした時だった。

月乃の机を「バンッ!」と思いっきり叩いた女子生徒。


「暁さん、()()()()()()()()()()よ。()()()()()()()()()()‼」

「そうよ!そんな子と土御門君を組ませる気なの⁉」

「それだったら、()()()()()()()()()()()わよ!」


他の女子生徒達が、また突っかかって来たのだ。

月乃は肩を落としていた。

零は、またイラついていた。

真琴は知っている。

彼女は、()()()()()()()()()()

そして、()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()

そう、()()()()()()()()()()で、()()()()()()いた(・・)のだから……


零は彼女らを無視し、月乃を見たまま続ける。


「私は結果以前に組むのか、組まないのかを聞いている」

「……こ、こんな私で良いのであれば……く、組みたいです‼」

「では、決まりだ」


零は小さく微笑んだ。

今だ、何かを言い続けている女子生徒を無視を続ける零。

そんな零が、月乃の傍を離れる。

彼女は、次に緒川桃夜の所へ行く。

彼は相変わらず飴をなめ、足を机の上に乗せていた。

零が彼の机の前に行くと、彼は飴をなめながら零を睨んだ。


「……何だよ」

「私のチームに入って貰いたい」


零はその睨みに対し、何の反応も示さない。

だが、教卓にいる真琴は一瞬だけ「ムッ」とした顔になる。

それに気付いたのは零だけだ。

そして、零の行動に彼女達(クラスメイト)は眉を寄せる。


「また、あんなのと!」

「土御門君はいいの?」

「そうよ!そうよ!」


そんな彼女達(クラスメイト)に、真琴は笑みだけを向けた。

当の零と緒川桃夜は相変わらず睨みあって(見合って)いた。

と言っても、彼の方はいまだに足を机に乗せたままだった。


「嫌だね。お前が、俺のチームに入るならいいぜ」

「……何故だ」


零は相変わらず無反応な表情で言う。

緒川桃夜は舐めていた飴を零に向け、口の端をニッと上げる。


()()()()()()()()()()()()()()()()調()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


真琴は、彼の答えにまたしても「ムッ」となっていた。

零はそれを見て、小さく微笑んだ。

そして視線を緒川桃夜に戻し、彼を見る。

彼の自信満々の表情を見て、零はまたもフッと笑う。


「……成程、解った。なら、こうしよう」


零は、緒川桃夜をスッと見据え、


「……()()()()()()()()

「してもいいが、あんたの実技結果を見る限りでは……()()()()()だぜ」


緒川桃夜は笑う。

だが、零は珍しく表情を変えて、


「構わないさ。私が勝ったら、お前は私のチームに入って貰う」

「俺が勝ったら?」

「そうだな……三年間、お前のパシリにでもなってやろう」

「良いぜ」


彼は立ち上がった。

二人は表面で見合った(睨みあった)後、教室を出て行こうとする。

教室を出る前に、零は真琴と月乃に振り返る。


「……ついでだ。真琴、月乃、お前達も来い」


彼女はそれだけ言って、教室を出て行く。

月乃は慌ててそれを追いかけるように、


「えっ?は、はい!」

「あーっ、待って、零!」


真琴も、慌てて追いかける。

納得していないのは、その場にいたクラスメイトだけであった。



零は担任の時雨を見つけ、訓練用(ボックス)の使用許可を得る。

チーム編成を行うに至って、こう言った事はよくある事だ。

「より強い者をリーダーにしたい」や、「どちらがリーダーとして優れている」か、などを勝負で決める事が多い。

本来、学内、校外においての戦闘行為は禁止されている。

これは軍に所属している者も、だ。

だが、任務や非常時のみ、それは可能となっている。

そして上記の事以外で、学生が戦闘を行える方法は一つ。

担任の許可を得て、ボックス内であれば使用をすること。

なので、今回の使用許可はすぐに取れた。

零は端末に触れ、個室(ボックス)を作る。

今回は訓練モードで作った。

この訓練用(ボックス)のモードは三つ。

1、技のスキル上げや戦闘訓練する為の場所である訓練モード。

2、チーム同士や個人で闘う場所である戦闘モード。

3、魔獣討伐戦を想定した訓練場所である討伐モード。

どれも、色々な場所(フィールド)を創り出せる。

実技や魔術は()()()()()()使()()()

無論、ここでの戦闘ダメージも部屋から出れば治る。

が、それは肉体や精神に残る。


今回の件では、この3つの中でも戦闘モードの方がいい。

だが、()()()()()()()()()()()()()()()()

それは、()()()()()()()()()()()()()()と、零は考えているからだ。

緒川桃夜は、すでに零から距離を取り向き合っている。

零は緒川桃夜を見て、


「武器は得意な物を使え。後、魔法も使っていい。ついでに、私の武器は刀だ」


零は端末に触れ、刀を作り出す。

零はあえて中央に立っていた。

彼も端末に触れ、短剣を二本握る。

その緊迫にも近い雰囲気の中、真琴と月乃は少し離れた所で見守っていた。

月乃が恐る恐る、隣にいる真琴に聞いた。


「あ、あの土御門君……」

「何、遠坂さん?」


真琴は、この空気に慣れていない月乃に優しく聞いた。

と言っても、震えている彼女を落ち着かせる為でもあった。


「えっと、暁さんは大丈夫なのでしょうか……」

「大丈夫。彼女()は、()()()()()()()()()()()()()から」


月乃には?マークが浮かんでいる。

真琴は、そんな彼女に小さく微笑む。

そして視線を零と緒川桃夜(二人)に戻す。

零は緒川桃夜の準備ができた事を確認し、


「先行はお前にやろう。ついでだから言っておく。私は、()()()()()()()()()()()()からな」

「随分と余裕だな。ま、いいや」


緒川桃夜は地面を蹴る。

二本の剣を零に向けて、突き立てる。

零は刀でそれを受け止め、彼の腹に蹴りを入れる。

緒川桃夜はすぐに体勢を整え、再び向かってくる。

今度は先程よりも速い。


『風魔法の加速と刃か……』


零は目を細めて、彼を分析する。

彼の()には風魔法による加護(強化)がかけられている。

そして彼の使う短剣にも、風魔法による強化魔法が施されていた。


『だが、()()()()()()()()()()


零は真っ直ぐ突っ込んでくる緒川桃夜を見据える。

彼女は自身が握る刃を裏返し、彼の左手首を叩いた。

すかさず、彼の右手首を掴んで地面に叩き付ける。

彼が体勢を直す前に、零の刃が彼の首に向けられた。


()()()()()。緒川桃夜」


その間、零の動きに無駄はなかった。

隙が無く、かつ鮮やかだった。

緒川桃夜は、その体勢のまま驚いていた。


「ば、馬鹿な……俺の方が実技は上だったのに、負けるなんて……」


それも当然だ。

何故なら、()()()()()()()()()()()()()()()、彼に勝った。

零は刃を彼から離し、端末に触れる。

個室(ボックス)が元の状態へと戻る。

零は座っている彼に、手を差し伸べる。


「さて……改めて、緒川桃夜。私のチームに入って貰いたい」

「はっ。勝負で勝った以上、お前に従うさ。だが何故、俺なんだ。他にも沢山、お前やあいつに合うのはいるだろう。わざわざ、()()()()()()()()()()()()()なんだ?」


零の手を取り、立ち上がる緒川桃夜。

そこに真琴と月乃がやってくる。

それに、月乃も彼の質問と同じ事を考えていた。

零は、桃夜と月乃を見て言った。


「確かに、お前達の結果は落ちこぼれ組だった。だが、それは()()()()()()()()()()()だ。チームを組む、作るにあたって、個より全にこだわる者は多い。だが、私はそうは思わない。()()()()()()()()()()()()()()()。それでも、それ以外は弱点に繋がる。なら、それを補えばいい。()()()()()()()()()()()で。そして、お前たちは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()


真琴はそれを聞いて小さく微笑んだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()のだろうと。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と。


零は目を細め、小さく笑みを浮かべたまま、


「後な、お前達のその力は一つに絞れば、()()()()()()()()()()()()()()()さ」

「お世辞は良いぜ。大体、そこのやつの結果は俺より上だったぜ」

「全体的には、な。だか、真琴は剣技が苦手だ。元々、真琴は柔技派だからな」


そう彼に言う零の目も、顔も、真剣だ。

だからこそ、それは嘘ではないと解る。

そして続けるのだ。


「剣技なら、お前は真琴に勝てる。だが、柔技では勝てない。月乃もそうだ。銃技なら勝てるが、それ以外では勝てない」


少し間をあけて、零は桃夜に手を差し伸べながら、


「それに、お前たちは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それを、()()()()()()()()

「良いぜ。お前が、どんな風に俺を生かせられるか……見せてもらうぜ、()()()()


桃夜は零の手を握る。

その顔は笑顔だった。



その後、零達はチーム編成書を提出しに行った。


「リーダー・暁零。副リーダー・土御門真琴。それと、緒川桃夜に遠坂月乃。これで良いんだね」


担任・時雨が確認を取る。

零は頷き、全員の端末を渡す。

担任・時雨はそれを受け取り、パソコンに入力作業を行う。

それがすむと、端末を彼らに返す。

そして、リーダーと副リーダーの証である腕章を零と真琴に渡す。


「では、チーム暁で登録しました。明日からは、この組んだチームでの訓練練習を行います。さて、今日はこれで終わりです」


担任・時雨に挨拶をして、帰宅を始める零達。


チームを組んだ際、一年生の間はリーダーとなった者の苗字がチーム名となる。

二年生に上がれば、仮入隊となるので正式にチームとして動ける。

なので、今後軍で活動するチーム名を作る事となるのは二年以降だ。


手続きを終えた零達は、解散する前に近くの喫茶店に来た。

零は端末をいじり、


「さて、まずは連絡先を登録するか」


そう言って、自分の携帯端末情報を二人に渡す。

二人も同じようにする。

無論、真琴もだ。

これで、いつでも連絡が取り合えるし、情報交換もできる。

零達は改めて、互いを見合う。


「では、改めて。リーダーとなった暁零だ。呼び方は任せる。使用武器は刀。得意魔術は炎」

「僕は土御門真琴。得意なのは柔技で、魔術は()魔法が得意だよ。僕は副リーダーとなっているけど、基本は彼女の後始末係みたいなものだね」

「わ、私は遠坂月乃です。えっと……得意なのは銃技くらいで……えっと得意とまではいきませんが、水魔法を使います」

「俺は緒川桃夜だ。よく使う武器は短剣系。よく使う魔法は風が主だ」


零は二人の情報を、端末にメモする。

今後の作戦を作り、彼らを生かす為にも必要な情報だ。

何よりも、()()()()()()()()()()()()()()……


零は二人を見て、


「……そうだ。お前達の住んで居る所は?」

「私は学生寮です」

「俺も」

「寮か。外出許可が面倒だな。まぁー最悪、何とかするか」


零は渋い顔になる。

学生寮は自宅(実家)から遠いもの、自宅を持たない者が集まって暮らしている。

それ故に、規則がとても厳しい。

かつ、他生徒や保護者の入館や外出の為の外館も、厳しくチェックされている。


零は眉を寄せて、考え込んでいる。

その姿を見て、真琴は静かにコーヒーを飲み始める。

それは、この手の事は彼女の方が得意分野だからだ。

何より、()()()()()()()()()()()()()()


零は瞬きを一つすると、端末をいじる。

そして、彼らを見て、


「じゃあ、お前達の配置だが……」


零は携帯端末で、配置を映し出す。

そこには、顔写真がピンを立てて浮かぶ。


「前衛を私。後衛を月乃。中衛を真琴と桃夜だ」

「ぶっ⁉」


真琴は飲んでいたコーヒーを噴出した。

それは、()()()()()()()()()()()()()()()からだ。

真琴は零したコーヒーを拭きながら、


「ゴホッ‼ぼ、僕、中衛なの?」

「ああ。真琴は状況に応じて前にも出て貰うが、基本中衛だ。桃夜は月乃の護衛も含めている」

「俺は月乃の護衛かよ」

「そうだ。()()()()()()だ。だからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()。……それと確認だが、月乃。お前、()()()()()()()?」


月乃は肩がビックっと動く。

桃夜は笑いながら、


「リーダー。()()()()()()()()()()()()()()()()()()


そして、桃夜は新しい飴をなめ始める。

零は目を細め、


「……いや。()()()()()()()()()()()()()()()んだ。違うか?」


月乃はゆっくり頷いた。

桃夜は「マジかよ」と驚いている。

零はジッと月乃の眼鏡を見て、


「月乃の眼鏡は、光魔法と闇魔法が融合した封具の一つだ」

「そんな事まで解るのか⁉」

「……封具と言えば、光魔法と闇魔法が一般的だ。もしくは、自身の魔法を用いて封具とするか。だが、月乃の場合には、()()()()()()()()

「その通りです。私の目は、生まれつきこういう体質でした。なので、慣れていない頃はこの目で大変でした。……ですが、なぜ暁さんは分かったのですか?私の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のに……」

()()()()()()。どんな優秀な医師でさえも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。で、確信を得られたのは簡単だ。銃技の的当て……あれがもし、本来目が悪い場合ならば、遠くなればなるほど当たる率は低くなる。もしくは近ければ近い程、当たらない。この二パターン。そして、逆にその眼鏡が強化術具なら別の話だ。それでも能力強化、補助強化くらいしかない。だが、月乃はそのどれにも当てはまっていなかった。しかも、()()()()()()()()()()()()。なら、考えるのは封具で目を抑えているという事だ」


月乃と桃夜は感心していた。

中学で習う一般常識の知識。

だが、それでもこれを見極める事は軍人(教員)や隊長クラスの軍人にも難しい。

魔力操作に慣れているエルフ族なら別物だが……


零はカフェオレを一口飲み、


「さて、では月乃。本題に入る。お前の()()()()()()()()


月乃も持っていた紅茶を置き、頷いた。

零は掌に小さな炎を灯す。


「月乃。私の得意魔術は炎と言った。……が、()()()()()()()()()()?」


月乃は眼鏡を外し、炎を視る。

彼女の瞳には、零の灯した炎が映る。

しかし、そこに微かに別の()()()()()

それをジッと見て、


「……氷?」


月乃は眼鏡を付け、零を見る。

零の炎が消える。

その掌には氷の塊が乗っていた。


「……零、もしてかして彼女の目って……」


流石に、これには真琴も驚いていた。

真琴も、彼女の目の事にはある程度何かあるとは思っていた。

だが、まさかそれを上回る結果が出たのだ。

それは、零もまた同じなのだ。

零は笑みを大きく浮かべた。


「ああ。()()()()()()だったな」

「結局、どういう事だ?」


一人ついていけていなかった桃夜の疑問に、零が答える。


「月乃の眼には、その者が使う()()()()が解るんだ」


桃夜は腕を組んで、唸っている。

重複魔法自体は、そんなに珍しいものではない。

だからこそ、桃夜は頭を抱える。

零は机に頬杖をつき、


「つまり、私が炎魔法を使うと同時に、氷魔法を使う。これはよくある重複魔法だ。だが、問題はその先にある。桃夜には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「え?あ、ああ。俺には()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「そうだ。本来、魔法を発動すれば目には見える。だが、重複魔法にすると、一方の大きい魔法しか黙視できない。これが、重複魔法による難点であり、優位の点だ。そして私の場合、メインを炎にする事で、弱く発動している氷魔法の事は気付かれないと言う事だ。故に、魔法を向けられている相手の目には、大きい方の魔法に目がいくと言う訳だ」

「だから、重複魔法は基本トラップや奥の手として使う人が多い。けど、遠坂さんのようなタイプには、それ自体に意味がなくなってしまうんだ。重複魔法によるトラップや術の意味がなくなる。けど、それは逆に言えば、こっちは相手の手を読める事にもなる……けど、遠坂さんの眼は大きな魔法だけでなく、同時に弱く発動させている魔法も視えている。つまり、()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。味方としては、大きな強みとなる」

「お前、凄いんだな」


桃夜の言葉に、月乃は照れていた。

零は真剣な顔のまま、


「月乃の目の事は、なるべく秘密にしておいた方がいい。敵に知れれば、真っ先に狙われるからな。だから、こんな所で月乃の目に付いて詳しくは言えん。ついでだから言っておくが、今言っていたことは基礎中の基礎、だと言うのを忘れるな」


零は頬杖をとき、腕を組んで二人に言った。

二人は表情を硬くする。

が、そこで()()()()()()()()()()()


「そういや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


彼の言う事は、その通りだ。

零は小さく笑い、口元に人差し指を当てる。


()()()()、な。それはその内、話してやる。で、明日からの訓練練習だが、月乃はライフルメインの武器。桃夜は短剣の二刀流と何かを考えている……が、とりあえず今日はしっかり休め。以上、解散」

「零、それは雑なんじゃ……」


すでに席を立って、歩いて行く零。

それを苦笑してみる真琴。

そして零と真琴はアパートに、月乃と桃夜は学生寮に帰って行った。



翌朝の榎木学校にて。

今日からは各自、組んだチームの訓練練習が始まる。

昨日、零と桃夜が勝負に使った場所だ。

チームで別れ、担任・時雨の説明が始まる。


「では、今日から三週間は各自での訓練練習が主となります。午前中は訓練。午後からは魔学勉強となります。質問があれば、いつでも聞いて下さい。それでは皆さん、頑張って下さい」


この訓練練習に、基本軍人(教師)は手を出さない。

格チーム同士、チームメイト同士が乱闘にならない限りは。

これもまた、軍に上がった時の訓練でもある。

だが、彼らはまだ学生。

それ故に、質問やアドバイスは適度に行われる。


零達は部屋の隅の方で訓練を始める。

それは、一番目に入らない場所だからだ。

そう、(教師)にも、他のチームにも……


零は彼らを見ながら、


「今日は簡単にやるぞ」

「具体的には?」


と、飴を舐め始めえる桃夜。

()()()()()()()()()()()()()()()()

そう、零は……


「……見極めだ。お前達に合う武器を選ぶ為の、な」

「へぇー……で?」


零は端末に触れる。

辺りは森に覆われる。

この部屋を、森のフィールドとして訓練ができるように二つに分ける。


「真琴は月乃に付き合え。ライフルタイプの型を調べろ」


真琴は、零が何をしたいのかは理解している。

だからこそ、素直に受け入れる。

真琴は月乃を連れて、分けられた区域に移動を始める。

そして、訓練を始めていた。


残った零は、桃夜に振り返り、


「お前は、あっちだ」

「ヘイヘイ」


零は彼を連れて、もう一つの区域に移動する。

ついて早々、零は端末に触れて弓を出す。

それを、桃夜に渡す。


「弓?俺、やった事ないぞ」

「なら丁度いい。まずは近くの……そうだな。あの木にでも当ててみろ」


ここから十メートルくらい先の木を指す。

桃夜は弓使いの姿を思い浮かべる。


「……こうか?」


と、弓を構え、弦を弾く。

矢は存在しない。

この場合の矢は魔法になる。

自身の魔法量によって、その持続時間が変わる。

無論、武器による補修も存在する。

が、相性がある以上は己自身の方が扱いやすい。


桃夜は魔法陣を作り、矢を放つ。

が、木に届く前に墜落したのだった。


「「………………」」


桃夜は零を見た。

零は至っては、いつも通り普通にしていた。

視線だけを彼に向け、


「安心しろ。初めてで、当たるとは思っていない」

「そうかよ」

「とりあえず、()()()()()()()()()()()()()()()

「へーい」


桃夜は弓を構え直し、再び矢を放つ。

これを繰り返した。

そう。

彼女の言う『扱うようになれ』は、扱えるようになれるまでは解放されないという事だ。

その事に気付くのに、桃夜は随分先となるのだった……



真琴と月乃の方はと言うと……

真琴は見晴らしのいい野原に来ると、


「じゃ、遠坂さん。とりあえず、この型からいこうか。うーん、狙うのは……あそこの木にしようか」


と、真琴は三十メートル先の木を指した。

それから真琴は端末に触れ、抱え式のライフルを渡す。

この場合の弾丸も、魔法によるモノだ。


「は、はい」


月乃は狙いをつける。

撃つと、反動が強過ぎて尻餅を着いた。


「きゃっ!」

「大丈夫?遠坂さん」


真琴は彼女に手を差し伸べた。

月乃はそれを支えに立ち上がる。

そして、真琴は彼女からライフルを受け取り、


「ごめん、ちょっと反動が強過ぎたね」

「いえ。私も、もう少し耐えられれば……」


真琴は銃を変形させる。

同じ型の違う銃を出す。

それを月乃に渡し、


「今度はコレにしてみようか。さっきのよりは、反動が少ないはずだよ」

「は、はい」


今度は問題なく、撃つ事ができた。


「これは大丈夫そうだね。でも、やっぱり距離が少ないな……」


真琴はもう一度、彼女から銃を受け取る。

これもまた、違うタイプの銃を出して渡す。


「今度はこれでやってみようか」

「は、はい」


今度のタイプは長距離タイプのライフルだ。

これも反動はなく、命中は簡単だった。


「うん。これも大丈夫そうだね。でも、距離はあっても弾数に限りがあるんだよな……」


真琴は銃をまた変える。

今度は地面に置くタイプである。


「横になって、撃ってみて」

「は、はい」


これも問題なく撃つ事が出来た。


「これもよし、と。後はどれが良いかな……」


と、銃の型を端末で見ている。


『……さっきから反動が少ない物ばかり。もしかして土御門君、そこまで配慮して銃を選らんでくれている?』


月乃は恐る恐る、端末を見ている真琴に聞いた。


「あ、あの、土御門君……えっと、もしかして……私が弱いから迷惑かけている?」


真琴はキョトンとして、端末から目を話して月乃を見る。

そして優しく微笑み、言う。


「そんな事ないよ。これからの事を考えると、武器は自分のあった物じゃないとね。真面目な話、命に関わるから。僕や零は、もう自分の武器を持っているけど、君たちは多分本当の意味でそう言うのはないと思う。だったら、この機会に専用の武器を作っておくのも悪くないからね。あ、もしかして遠坂さんにはコレあわなかった?」

「そ、そんな事ないです。むしろありがたいです。私、こう言った武器の見方は分からないし……」

「そう。なら良いんだけど……。もし、あわない物があったら言ってね」

「は、はい。お願いします」


この後も、月乃のライフル決めを行う。


 午前の訓練が終わり、昼休みとなった。

中庭の椅子の所で、皆で昼食を食べる事にした。

桃夜と月乃はダウンしていた。

桃夜に関しては、眉を寄せて空を見ている。

仰向けになったまま、


「あー、疲れた。簡単にって言ったのに……リーダーがあそこまで厳しいとは……」

「そのおかげで、木に当たるようになっただろう」

「確かにそうだけど、よ。……流石に腕や肩が痛いぜ」


ガバッと起き上って抗議した。

そこに、大量の袋を抱えた真琴がやって来る。


「お待たせ」


真琴はそれを椅子に置き、中を漁る。

袋の中から、ジュースとおにぎり、サンドイッチを出す。

桃夜は一瞬、ムッとした。

そして、そっけなく言う。


「あー、腹減った。俺、昆布が良い。飲み物はオレンジで」


零は、彼の言うおにぎりとジュースを投げる。

隣に居る月乃を見て、


「月乃は?」

「わ、私はサンドイッチとイチゴオレでお願いします」

「……疲れているな、お前も」


月乃にサンドイッチとジュースを手渡す。

真琴は笑顔で、


「遠坂さん、頑張っていたもんね」

「はい。そのおかげで銃の型が決まりました」


月乃はジュースを飲んで、ほんわかと微笑む。

真琴は残ったモノを見て、


「零はどうする?」

「サンドイッチとカフェオレ」


真琴からサンドイッチとジュースを受け取る。

そして、ざっと今後の計画を頭で考える。


「月乃の型は決まったと言う事だから、そうだな……。月乃はそれを使って、ひたすら慣れろ。後、明日からは、それと同時に真琴から魔術の練習も受けろ」


零はジュースにストローを刺す。

横目で真琴を見て、


「真琴は、月乃がだいぶ銃に慣れた所で仕掛けろ。最初は魔術なしで行け。術の投入に関しては、お前の判断に任せる」

「了解。頑張ろうね、遠坂さん」

「は、はい!土御門君、しばらくお願いします」


月乃は頭を下げる。

零は桃夜を見て、


「桃夜は、明日は弓をやった後に違う武器を使うからな」

「マジかよ……。また弓か」

「続けなくては意味がない」

「へーい」


食後の後の授業と言うのは、大変だ。

特にそれが聞くだけの授業だと、よけい眠くなるものだ。

これが筆記なら、多少我慢はできるだろう。

だが、今の学校の授業はパソコンで行うのが一般的だ。

案の定、ハードな訓練をしたのであろう者達のほとんどが寝ていた。

無論、緒川桃夜もその一人だ。

遠坂月乃はコクコクしているが、何とか堪えている。


『……三週間しか時間がない以上、手緩いやり方ではついてはいけないしな。この辺は、私と真琴で何とかフォローするか……』


零は机のパソコンで、授業内容を彼らにも解るようにまとめ始める。

それは、真琴も感じていたらしく、同じように彼も授業内容をまとめていたのであった。


 授業が終わり、零は月乃と桃夜に声を掛ける。


「……案の定、桃夜は寝ていたな」

「あー、やっぱり?」

「無理はよくないが、少しは体力を付けろよ。それでは、これから先の任務にもついていけなくなるぞ。後、お前達の端末に、今日の授業内容を簡単にまとめたものを送ったから、目は通しておけよ」

「へーい」

「暁さん、土御門君、ありがとうございます」


桃夜は投げやりだが、月乃は頭を下げた。

その日の夜、桃夜と月乃は爆睡していた。

零に関しては今後のプランを考えていた。

そして、彼らの武器構成も含めて。

真琴は真琴で、今後の事を考えていると胃が痛くなっていた。

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