第二話 「能力測定」
能力測定……一日目。
榎木高校。
早朝より、一年生は皆、体育館に集合していた。
無論、何人かの教師たちも、大型携帯端末を持っていた。
そこには、生徒一人一人の写真や名前などと言った情報が載っている。
この榎木高校の体育館は、ただの体育館ではない。
ここの体育館は広いし、三つ存在する。
一つ目は今、零達が居るこの体育館。
ここは能力を測定、訓練する為の施設。
その為、多種類の器具が置いてある。
二つ目と三つ目は、同じ施設である。
隣の館同士で、そこは実技演習場。
模擬戦や討伐訓練などができるのだ。
そして、現在は、いつも以上に軍服を着た先生達と軍本部より来た者達が待機している。
自分達の担任・時雨が生徒に言う。
「では、皆さん。今から実技の能力測定の説明を行います」
と、天井から黒板が下りて来る。
その黒板に映像が映し出される。
「さて、実技は中学で習っていると思いますが、基礎である剣技・銃技・柔技をこれから見させて頂きます。無論、自己の型や流儀を持っている方も居るでしょう。ですので、その辺に関しては皆さんの自由で構いません」
と、黒板の絵が自動人型ロボットを映す。
その自動人型ロボットが、説明と共に絵が変わっていく。
「皆さんも、中学の時は自動人形ロボットで実技を行っていたと思います。ご存知の通り、自動人形ロボットには三段階のレベルがあります。中学の時は中級まででしたが、高校では上級まであります。今回は初級から行い、徐々にレベルを上げていきます。時間は一人二十分。何かあれば、こちらで強制的に止めますので、安心して下さい」
黒板が消え、天井に戻っていく。
生徒達は三組に分かれて、それぞれ動き出す。
零は真琴と同じ班になった。
もとい、そうなるように互いに動いてはいた。
零達が機器の所まで来ると、そこの担当教員が説明を始める。
「では、ここでは柔技を行います。三人ずつ行っていきます」
と、先生が機械を動かす。
すると、柱が出てきて透明な壁を貼った。
壁と言っても固くはない。
そして、人形はここから出られない。
作られた部屋は縦横同じ広さの立方体の部屋。
この部屋は『ボックス』と呼ばれている。
「では、ボックスを使い、測定を始めます。ここでは、自動人形ロボットと組手をして貰います。ですが、皆も知っての通り、この中では怪我をしても、外に出れば傷は癒えます。しかし、肉体ダメージは体や脳に残ります。そのことは、忘れないように」
そう。
これにより、心身とも負荷に耐えられず、高校を辞める者も多くいる。
その他にも、精神的病に陥る者もいる。
だが、これは軍に入る者としては避けては通れないものだ。
つまり、最初の試練や訓練とも言える。
その部屋に、自動人形ロボットが床から出て来る。
誰が、最初にこの測定を始めるか。
真琴は零と目で語り、彼が先にやりに行った。
真琴が人形の前に立つと、自動人形ロボットの額に文字が浮かび上がる。
そしてそれが光ると、ガチャンと音がする。
自動人形ロボットが立ち、真琴に仕掛けて来る。
真琴は、自動人形ロボットのパンチや蹴りを簡単に受け流していく。
彼は、時には自分からも攻める。
五分ですでに、上級までいっていた。
その姿に、流石の先生達も、本部から来た者達も、驚きを隠せない。
「流石は、土御門の名を持つ人ですね」
「そうですね。……開始五分で、上級とは先が楽しみですね」
と、メモと観察をしている。
零はその様子を横目で見て、自分の番が来るまで待っていた。
そして、他の班を見ていた。
零のように、他を監査している者もいる。
これは、チームを作るにあたって当然だ。
と言っても、一年生の内はクラスメイトしかメンバーを作れない。
二年になれば、他クラスともメンバーを作れる。
が、自分はそれはしようとしない。
一年生の内に築き上げたコンビネーションや作戦を壊す可能性がある。
ならば、一年生の内に作ったメンバーで三年間過ごした方がいい。
だから自分は、あの自己紹介の時には目星をつけていた。
目的の人物を見つけ、近い方から見定める。
――銃技を行う場所。
銃技場は、この柔技場とは違い、縦に長い。
構造上は柔技場と同じ。
四本の柱があり、透明な壁に覆われている。
そこに台が並べられており、奥には的がある。
一度に、五人並んで行えるようになっている。
二人が短銃、三人がライフルで的を狙っている。
その中で、ライフル撃ちで飛び抜けて最長距離を撃っている者がいる。
しかも、上級レベルの的全てが、真ん中を打ち抜いている。
その人物を、改めて確かめる。
自己紹介の時に、転んでいたメガネの少女だ。
『……やはりそうか。名前は確か……遠坂月乃、だったか。始めて見た時から、あの眼鏡に疑問があったが……私の読みも強ち駄目ではないみたいだ』
目を細め、打ち続ける彼女を見据える零。
そこに、柔技をかなり前に終えた真琴が声を掛けて来た。
「次、零の番だよ」
「……ああ」
零は見るのを止め、自動人形ロボットの前に立つ。
真琴の時のように、機械が動き出す。
零は他の者達に気付かれないように、さっきの少女を見た。
彼女は銃技を終え、剣技に移動していた。
――剣技を行う場所。
剣技場は、この柔技場と同じ四角形でできている。
そして、自動人形ロボットが剣や刀、短剣と言った多様な武器を持っている。
先程の少女は、剣技は苦手のようだ。
今度は、初級レベルで戸惑っている。
『……剣技は駄目、か。おそらく、銃技を見ていた者は注目していたかもしれいが、これを見たら検討するだろうな。チームを組むか、組まないか……』
と、零は考えていた。
その間も、彼女は自動人形ロボットを相手にしている。
と言っても、彼女は守りだけで、攻める事はしなかった。
理由は、彼女を見定めたいが為だった。
そして何より、周りに居る大人達の目を誤魔化す為だ。
適当に柔技を済ませ、零は真琴の隣に行く。
他のメンバーが済むのを待ち、終えると次の場所に移動に入る。
零達は次に銃技場へと移動した。
担当教師が、銃技の説明を行う。
「この銃技も、基本は初級からです。ライフルタイプは、レベルが上がるごとに五メートルずつ距離が伸びていきます。短銃タイプは、出てくる的の速さが上がっていきます。銃の形は、皆さんが使いやすい型で行って下さい」
零は中に入り、右にある端末に触れる。
端末から手を離すと、手の中に銃が形作られる。
この機械は、自分にあう銃を思い描く事で形を作られる。
つまりは、イメージの具現化である。
その為、実際にそこにある訳ではないが、重さなどは本物と同じなのだ。
零は最初に、短銃タイプの方を使用した。
なので、的は前後左右に出てくる。
斜め後ろでは、先程目星をつけていた月乃がいた剣技場がある。
そこでは、別の班が剣技を行っている。
だが、そこに剣技と言うより、喧嘩のような戦いをしている者がいた。
彼もまた、自己紹介の時に問題が起きていた人物だ。
そう、飴をなめたりして怒られていた者。
何より、零が目を付けていた少年、緒川桃夜だ。
『……まるで喧嘩だな。だが、速い。短剣の二刀流か……』
零は横目で、それを確認してから的に視線を戻す。
弾を放つが、さほど上手くはない。
と言っても、的の真ん中とまではいかないが当たりはする。
ライフルは普通に……
いや、ある種では狙ってやるが、距離が遠くなればなるほど、的には掠る程度だ。
無論、真琴も銃技は人並み程度。
零と似た通ったかだ。
ライフルタイプも終わり、残すは剣技だけだ。
そして、最終の剣技場へと移動した。
着くと、すぐに担当教師の説明を聞く。
「剣技では、柔技と並行したレベル水準です。ここでも、自動人形ロボットに斬られたとしてもダメージは残りませんが、測定自体はそこで終了となります。時間は一人十分。なお、二人ずつ行っていきます」
零は自分の班の剣技を見ていた。
いや、どの程度のレベルかを見極めていた。
『腕は普通か……。真琴は剣技大の苦手だしな』
と、後ろで雄叫びが聞こえて来た。
そちらに視線を向けると、先程の少年が、今度は柔技で暴れていた。
『……あれでは、剣が拳に変わっただけだな』
零は小さく笑う。
現に、彼の戦い方は零の言った通り、さっきの剣技と何ら変わらないからだ。
ただ、武器を持っているか持っていないかの違いだけだ。
と、先にやっていた班の者達が終わっていく。
零は空いた場所に入る。
端末に触れ、刀を握る。
この剣や刀もまた、実際にあるのではなくイメージの具現化によるものだ。
そして、自動人形ロボットもそれに合わせて刀を握って構える。
人形が動き出し、零に刀を振って来る。
彼女はそれを軽く受け流し、剣を振るって応戦する。
自動人形ロボットは距離をあける。
その間、気付けるものは少ないだろう。
零が、一歩も動いていないと言う事を。
隣では少し先に入った真琴が、人形に斬られた所だった。
『真琴は、残り三分弱か……』
零は、それでも一歩も動かない。
自動人形ロボットが来れば相手をするが、それ以外は剣を構えるだけである。
零の時間が残り四分になった所で、初めて彼女に動きがあった。
彼女は地面を蹴り、人形の懐まで詰め寄る。
剣を人形に向け振り落すが、自動人形ロボットは簡単に受け止める。
零は力を込めて踏みとどまる。
が、距離をあけようとして、一歩足を動かした所で滑ってしまった。
尻餅をつき、ハッとして上を見上げる。
そこに、自動人形ロボットの剣が振り落され、彼女はそこで終了である。
零は立ち上がり、真琴の元へ行く。
後は、残りの者達を待つだけだ。
真琴が近付いて来た零に小声で、
「ごめん。十分は持たせようと思ったんだけど……」
「別に構わない。お前にしては、頑張った方だ」
「それでも、本当は零の方が僕よりも剣技の実力は上なのに……」
「いや、今はこれでいい」
そう言いながら、彼女はまだやっている者達を観察していた。
真琴は、そんな彼女を見ていた。
彼女は、見極めている者以外とチームを組む気はない。
しかし、今後の事を考えれば今のうちに自分以外の者の実力を測っておくのは重要だと考えているだろう。
何故なら、彼女は自分と同じであり、自分とは違うのだから……
能力測定……二日目。
零達は、再び体育館に来ていた。
構造上は昨日と同じ建物だが、今日は二階。
二階は二階で、また別の施設となっているのだ。
今回は前方に広い部屋だ。
部屋の区切りは十個。
今日も、零達の担任・時雨が説明を始める。
「今日、皆さんには魔術をやって貰います」
いつもみたいに、天井から黒板が降りて来る。
その黒板に絵が映し出される。
「皆さんも知っての通り、魔術の特性は九つあります。地・水・火・雷・樹・風・氷・光・闇。また、特性には弱点が存在します。火は水に、水は雷に、雷は風に、風は地に、地は樹に、樹は氷に、氷は火に。そして、光と闇は隣り合わせと言うように成り立っています。」
説明によって、絵も変わっていく。
担任・時雨の説明は続く。
「今回、皆さんにやって貰うのは自身の得意魔法です。魔技において、魔法力の技量・耐久力・コントロールを視させてもらいます。やり方はいたって簡単。中学の時のように端末に触れ、使う魔術を選択します」
担任・時雨は、端末に触れる。
床から柱が出てくる。
そして、実技の時と同じように透明な壁が張られ、ボックスが作られる。
「皆さんも知っての通り、ボックス内では魔術が当たっても、肉体にはダメージはありません。しかし、このボックス内は昨日行った実技ボックスとは少し違います。魔術による直撃を受ければ、精神へのダメージは強いです。なので、十分気を付けて下さいね」
そう。
これによって、一生魔術を使えなくなる者や再起不能となる者も多い。
またこれは、大人になってからもそうだ。
その時は、この防壁は存在しない。
故に、優れた魔導士と言うのは少ないのだ。
担任・時雨は相変わらずの笑顔で、
「では、皆さんには水の魔術を変化させて貰います」
担任・時雨は、さらに端末を操作する。
すると、タンクが区切られたボックス内に現れる。
担任・時雨は、手をタンクの方に向ける。
手には、彼の展開する魔法陣が浮かび上がる。
その魔方陣から、大量の水が溢れ出る。
それがタンクに注がれ、並んでいる全てのタンク内を満たす。
「私の得意魔術は水です。なので、得意魔術が水魔術の方は、このように自由に変化させて下さい」
担任・時雨は、笑顔で軽々と水を変化させる。
その操っていた水は、鳥の形へと変化していた。
他の魔術のやり方は、黒板で説明された。
「それでも、まだ魔術が得意ではない方、どうやっていいか解らない方がいると思います。なので、一つの例を案内しましょう。氷魔法の方は水を凍らせ、樹魔法の方は水の底に草原を、同じように地魔法は岩を、風は水を切り、雷・光・闇・炎は水中で何かしらの形作って下さい」
と、説明している。
そこに生徒の一人が質問をした。
「先生、この魔法だと……火魔術を使う人が不利なのではないでしょうか」
担任・時雨は黒板を消し、
「そうですね……。ですが、炎の魔術を使う方は、私の知る限りでは一人しかいません」
彼は笑顔だ。
しかし、その笑顔の中には深みがある。
それに気付けるのは少ないだろう。
少なくとも、生徒は気づけない。
ある二人の生徒を除いては……
担任・時雨はいつもの笑顔に戻り、
「それと、これは火魔術だけが不利ではありません。この水は、上級魔法で作り出した水です。なので、小さくてもできれば上出来なのです。……では、始めましょうか」
緊張した面持ちで、生徒たちは動きだす。
そして、前の方から各々始まっていく。
真琴は零に近付いて、耳打ちする。
「零、この魔術の身体検査って……」
「……恐らくそうだろうな。斜め後ろの教師は、土御門家の分家の者だろう。監視だろうな……実技はともかく、魔術は対処が難しい。兄さんの事やあの時の事もあるからな。……どうせ、見極めだろう」
零は明らかにイラついていた。
それが解るこそ、真琴は眉を寄せる。
「どうするの?」
「……爆発させるか」
「え⁉」
真琴が、意外な答えに大声を出す。
慌てて口を押え、聞き直す。
「でも、それは……」
「無論、大きいのではないさ。魔力が少し多きいだけで、コントロールがまだできない。そう思わせるだけだ。ま、手を抜くのはここまでだ。明日の魔講学は本気でやるさ」
二人は共に、前に進む。
真琴は、どこか納得していないようだ。
『まぁー……あいつは、こういった手抜きは本来嫌いだからな。何より、土御門家の分家はともかく、あの担任は読めない』
零は端末に触れ、火魔法である炎をイメージする。
水の中に灯る炎を……
――魔法
本来、魔術はイメージによって構成される。
より、イメージ力が大きければ、その成功率は上がる。
無論、詠唱や術式を覚える必要はある。
だが、要は本人の心意気と言うものもある。
魔術は上級、中級、下級と存在する。
上級になればなるほど、扱いが難しい。
無論、低ければ低いほど詠唱を行う者も少なくなる。
零は、手を水の方にかざす。
彼女の手からは、魔法術式が描かれた魔法陣が現れる。
それは、彼女が想像した通りになる。
水の中に炎を灯す。
が、その火は暴発し、水が蒸発した。
タンクは壊れなかったが、辺りは水浸しとなった。
『……少し強過ぎたか』
零は無表情で、視線を反らす。
案の定、先生達が点検を始めた。
「これは駄目だ。完全に壊れてしまっている……」
「明日、直さないといけませんね……」
先生達が話し合い、そこは使用禁止となった。
……のだが、その隣で真琴も同じようになった。
真琴の得意魔法は地。
故に、水の中に岩を出現させた。
だが、真琴の術の方が大きかったらしく、タンクにヒビが入ったのだろう。
水が出てきて、零と同じようにその場は水浸しとなってしまったのだ。
「こちらも、使い物になりません」
「流石、土御門家ですね……」
と、点検をしていた先生達が真琴を見る。
「申し訳ありません」
真琴は頭を下げ、零と共に後ろに下がる。
誰も居ない事を確認し、零は真琴を横目で見る。
「真琴にしては珍しく強過ぎたのではないか?」
「あー……滅多にお目にかかれない上級魔法だったから……その……強くてやり過ぎちゃった」
と、へこみ始める。
零は真琴を視線を前に戻し、
「私よりは良いだろう。第一、機械が脆過ぎるという事でいいにしよう」
真琴は、これが終わるまで黙っていた。
今回の魔術で、機械を破壊したのは零と真琴だけ。
その他で、水の性質を変えられたのは、数人しかいなかった。
その間も、土御門家の分家は零と真琴を密かに監視していたのであった。
能力測定……三日目。
今日は教室で行われる。
机のパソコン機能は止められている。
机の上は、筆記用具とテスト用紙二枚しかない。
と言うのも、不正効果を防ぐ為のもの。
それだけではない。
全て電子化に頼っては、いざという時の対処に困る。
なので、こういった行為にも慣れておく為の処置だった。
担任・時雨は教卓に立ち、
「これより、二時間の魔講学のテストを行って貰います。テスト内容は、大体中学の時に習った事や形式的には中学の時と一緒です。言わば、確認復習テストだと思ってくれて構いません」
担任・時雨は時計を見て、
「では、始めて下さい」
魔講学の内容は、ほとんどが能力についての事と応用についての事が多い。
書き方は文が主である。
生徒の回答によって、知識がある程度解るのである。
零は一枚目と二枚目の問題を軽く見る。
『……一枚目は魔法についての事。二枚目が作戦か』
魔術関係は、対して重要ではない。
ここで見られるのは、二枚目の作戦案。
つまり、リーダー資質や作戦参謀としての能力を見られるのである。
零は、最初に一枚目を終わらせる事にした。
沈黙の中、鉛筆が綴られていく音と時計のチクタク音が響く。
二時間が経ち、タイマーが鳴る。
担任・時雨はタイマーを止め、
「では、後ろから送って下さい」
担任・時雨は枚数確認すると、
「では、今日はこれで終わりです。明日からは、この三日間の結果を元にチーム編成を行って貰います。また、今回の結果は後日保護者の方に送られます。なに、結果が良くても悪くても、今後大きく変わっていきます。ので、あまり気にしなくても良いですよ」
担任・時雨は笑顔で教室を出て行く。
生徒たちも、三日間の測定が終わり、パッと明るくなる。
そして、各々この三日の疲れをいやすために帰宅を急ぐのであった。
その帰り道……
真琴は隣を歩く零を見る。
「零は、チーム編成どうするの?」
「……逆に、お前はどうする?」
零は自分を見る彼を横目で見る。
真琴は笑顔で、彼女を見続けた。
「無論、零のチームに入れて貰うさ。僕は、君なら信じられるからね」
「それは良かった。私も、お前は信じるに値するからな。後は、最低二人だな」
零は小さく微笑む。
真琴は察しがついていた。
いや、自分の幼馴染は当に目星を付けていると解っている。
「その顔だと、目星はもう付けているんでしょ」
「ああ。遠坂月乃と緒川桃夜」
真琴は不機嫌になった。
真琴は、零の決めたメンバーに文句を言うつもりはない。
だが、それでも考え込む。
少し唸った後、彼女を渋った顔で見ていた。
「君に考えがあるのは解る。けど、よりによって彼なの?」
『……女はいいのか。彼らはハーフエルフだ。だが、真琴は種族差別はしない。だから、その辺は大丈夫だろう。と、すると……』
零は彼の思っていることをサッと考え付く。
だから零は足を止め、真琴をジッと見る。
「お前の言いたい事は解るさ。お前は、緒川桃夜の態度などが気に入らないのだろう」
「……まぁね。ああ言うタイプは、命令違反をするので分かりきっている」
真琴も足を止めて、同じように零を見る。
零はしばらく考え、歩き出す。
真琴の肩をポンッと叩き、
「だから良いんだ。命令違反ができるという事は、規則に捕らわれていない証拠だ。そう言った者ほど、危ないと感じた時、誰よりも冷静でいられる。つまり、チームを生かせられるんだ」
「それでも……僕は納得できない」
「だからこそ、お前との相性が良いんだ。お前は、逆に真面目過ぎだからな」
真琴は複雑そうな顔をして、付いて来る。
零はそれを薄く笑い、
「明日、お前自身の目で確かめればいい」
二人は帰宅を急ぐ。
その間、真琴はまだ納得はしていなかった。