君と僕との恋
ジリリリリ…
いつまでも止まない目覚ましをその寝ぼけた手で押す。朝だ。カーテンを開けるとそこにはいつもの素敵な光景が広がっている。多田悠貴が彼が通う角木原学園高校は東京でも都内で有名な名門校だった。彼が所属しているバスケ部は都内でも無敗の強豪だった。……、と、名門校と言っている時点で普通ではない。言葉が矛盾している。さて茶番はこのくらいにして本編を書こうか。
なんだろう。眠い。昨日夜遅くまで勉学に取り組んでいたからだろうか。そこであくびを一つした。それを隣の席の女子がくすっと笑った。悠貴はちらっと見て、そのあと「何がおかしいんだ?」と彼女に問いかけた。当の彼女は「夜遅くまで勉強してたの?お疲れ様」そう言う彼女は佐竹 千賀子。僕と違い天才である彼女はいつも友達と遊んでいるばかりで勉学に取り組んでいる姿など見たことがない。なのに僕より成績が良い。少し腹が立っていた。「なんだよ悪いか?」そう僕は言った。彼女は何も言わなかった。悠貴は不思議に思いながらも次の授業に取り組んだ。
「あ、ここ間違ってる。」彼女は言った。今は授業で渡されたプリントをやる時間だ。僕はその箇所のどこが間違っているのか分からず苦戦した。「ここは、こうやってこうやるんだよ。」隣から声がした。その通りやってみると、なんだ、できた。でもそこに彼女。智恵子が関わっているとなると悔しい。
その夜。悠貴は夜遅くまで復習をしていた。彼女に教えて貰った所を分かるまで何回も。なんでだろう。
なんでここだけを。そう思ったら終われないタイプだ。気づいたら朝になっていた。
…覚えたのはいいが、眠たい。
「おはよー」「おはよー」
学校に行く途中に聞こえる挨拶は僕の目をちっとも覚ましてはくれない。「おはよー」横から声が聞こえてきた。彼女。智恵子だ。智恵子は他の誰にでもない悠貴に挨拶をしてきた。少し驚いた。しかしすぐに「おはよう」と悠貴は智恵子に挨拶をした。学校に行き、席につくととてもじゃないが授業に取り組める感じでは無かった。
「まだ寝ぼけてんの?ホレっ!」
…!?
僕は驚いて少し飛び上がってしまった。
「驚いた?」智恵子はくすっと笑いながら言ってきた。
悠貴は腹が立っ…あれ、いつもは腹が立つはずなのに腹が立たない。なんでだ?不思議に思いながらも見た窓から見た景色は、綺麗だった。
昼。皆が学食でカレーやうどんをたべている時間だ。
悠貴は飯を食べずに眠気に誘われながら寝よう。そう考えていた時だった。
「チャリン」
携帯のSNSアプリ「MINE」の通知が鳴った。なんだろうと思い見てみると智恵子からのメッセージだった。智恵子とは一応友達追加しているのだ。メッセージはなんだろうと見てみると、「放課後。体育館前で待ってる。」とだけ書いてあった。不思議に思いながらも隣をチラッと見ると偶然目が合った。しかし智恵子はすぐ目をそらしてしまった。
嫌でも時間は過ぎてしまうものだ。授業の終業のチャイムが鳴り、放課後は訪れた。悠貴は部活に行くまで時間が合ったので体育館へと行った。そこにはもちろん呼んだ主。智恵子の姿があった。
「悠貴くん」
「お、おう」
悠貴は智恵子に初めて自分の事を呼ばれたのを戸惑いながらも辛うじて返事をした。それからしばらく沈黙が続いた。相手のほうから呼び出しておいてこれは無いだろうと思いながらも智恵子が話す時まで待っていた。
「あ、あのね…」
「何」
やっと喋ったのはいいが口がモゴモゴしている。そんなに話しづらい事なのか?そう思いながら彼女を待った。
「私…ね。私…悠貴のことが…」
「……」
「私、悠貴くんの事が好きなの。」
彼女から告げられた言葉は壮絶だった。悠貴は一瞬固まった。そんな事言われるなんて考えていなかった。
当の智恵子は下を向いてモジモジしている。
そんな、この俺が?こんなやつが?言ってなかった。智恵子は学校の中でも1、2を誇る美人なのだ。よってモテモテだった。 それに比べ、僕の方は友達はいるが、彼女などいたこと無かった。まず告白されたことすら無かった。そんな悠貴には初めての経験だった。ハッ!
すっかり自分の世界に居たようだ。
智恵子は悠貴を見ながらキョトンとしていた。言葉を待っているのだろうか。それならば言わなくければ。緊張して言葉にならなくても。
「あ、ありゃとう!!」…!?
自分が予想していた以上に緊張していたらしく、随分噛んでしまった。
「ふふっ。」
智恵子は笑っていた。今まで見たことの無い程。悠貴も釣られて笑った。今までこれまで笑った事があるのかと思う程。
「悠貴くん。返事を聞かせて。」
智恵子はすっかり元に戻っていた。悠貴もハッと我に戻る。
「えっ…と…」
悠貴は言葉に詰まった。本当にいいのだろうか。こんな美少女から告白されて。何か言われないだろうか。
しかし智恵子は自分の気持ちを伝えたんだ。自分も正直にならなくては。
「俺も智恵子さんの事好きだった」
そういった途端、智恵子の顔が赤く染まった。
「え、それって…」
智恵子は言った。
「告白成功だよ」
悠貴はニコッと笑いそう言った。
「…ありがとう」
そう言って頭を下げると「部活行かなくちゃ!」と走っていった。
…部活。あっ…部長になんて断ろう。そう思いながら部活へと向かった。
帰り。昇降口へ向かうと智恵子の姿があった。
「悠貴くん。一緒帰ろ?」
彼女はとても可愛い。
「いいよ。」
悠貴はそう言いながら彼女と一緒に昇降口の外へと歩きだした。彼女と歩いて見る夕焼けはとても綺麗だった。