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「吸血欲求の抑制?」
翌日。学校に行くと俺は、先輩吸血鬼であるひなに早速訊いてみた。
「そんなん簡単じゃし。これ飲んどったら、一週間に一度の血液補充で済むし、人前で血吸いとうなる事はありゃせんよ」
「カモメの野菜ジュース! トマトジュースじゃなくて」
思わずツッコミ入れたけど、ひなが見せてきたのは、俺も好きなカモメの野菜ジュースだ。吸血鬼が血を吸わないようにする為に飲む物ってトマトジュースじゃないんだ。漫画なんかじゃトマトジュースチューチューすすってるイメージだけど。ひなは、紙パックにストローを刺すと一口飲んでから説明を続ける。
「まあ、野菜ジュースにこだわらんでもええみたいよ。とにかく野菜を多く摂取する事が大事みたい」
「野菜を摂らんといけんの?なんで?」
「さあ? ご先祖が色々試した結果みたい。まあ、血吸うゆうても、誰でもエエわけじゃない。成人。日本で言う二十歳じゃのうて、異世界の成人。15歳過ぎたら、決まった異性のしか駄目みたいよ。っとごめん」
ひなは、セーラー服の胸ポケットに手を入れる。どうやらマナーモードにしてるスマホが鳴ったらしい。
ひなは、げっと下品な声を出した。
「どしたん?」
俺は、ひなの肩越しにスマホを覗くと、無料通話アプリにメッセージ。
『なんか面白そうな事が私を呼んでる気がするから、そっちに行くけぇね。』
ご丁寧にハートのスタンプまで付けて送って来てる。メッセージの送り主は、俺の双子の妹 雫だ。あいつには何か電波のような物を感知するアンテナでも付いてるのだろうか? まだ家族に教えてない、俺の吸血鬼化を嗅ぎ付けたんだろうな。
――絶対録な事をしないだろう。 俺に無理難題ふっかけるとか、わざわざひなを怒らせて遊ぶとか、今からあいつが来るって思うと胃が痛い。
ひなも同じみたいで、こっちに至っては、ぶつぶつと、「あいつが来る。あいつが来る」って唱えてる。なんか呪いかけてるみたいこえーよ。
いつもなら長谷川とおしゃべりしてるハズなのに、ひながぶつぶつと一人呟いてるもんだから、長谷川がビビって渉のところに避難してるし、まあ仕方ないよな。
俺は、ため息ひとつ落とすと、自分の席で、朝のホームルームが始まるまで、昨日サボった授業の復習をして過ごした。
そして放課後。予告通り、校門に雫の奴がいた。




