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☆ひな目線です。
とある昼休み。私は、アリサと真央に、半ば強引に学食へ連れて来られていた。
まあ原因は、過剰過ぎる仁へのスキンシップのせいだろうな。多分。
お昼食べたら、二人から事情聴取されちゃうんだろうな。なんか恐い。
だって、私の正面に座ったアリサは、おしゃべり大好きな筈なのに、黙々とカレーを食べてるし、真央は真央で、眉間にシワを寄せたまま、無言できつねうどん食べてるんだもん。明らかに、二人がむちゃくちゃ怒ってるの丸わかりだ。
「ひな、ほんとっにどうしたの? 音無くんに不必要なまでにべたべたして。らしくないよ?なんかあったの?」
食事が終わったとたんに、アリサがそう訊いてくる。うう、容赦ないな。でもここで、白状しといた方がいいよね。
どうせ言わないといけないんだし。
「 アリサの指摘通りです。もう何があったなんてもんじゃありません。二人にびっくりするような、重大なお知らせがあります」
「「 重大なお知らせ?」」
そう異口同音に呟くと、アリサも真央も黙って私の顔を見つめてる。
無言だけど、二人の目は、『とにかく説明をして!』と訴えるんだ。
私は、一呼吸おいてから、二人に説明を初めた。
「 あのね、兄さんの結婚が決まったんよ。でね、私の両親が新婚夫婦と一緒に生活するのはお互いに気を使うから、4月からは、広島の実家から高校に通いなさいって言われたん。じゃけぇ、私、広島の高校に転校せんといけん 」
「 えー!」「 マジで!」
やっぱり、そういう反応になるよね。
私だって転校話を持ち出された時は、二人みたいな反応しちゃったもんな。
「 音無くん、その事知ってるの?」
「 まだ言うとらん。だいたい、転校の話も、兄さんと両親と話し合いしただけじゃし」
「 そうなんだ 」
そう言ってアリサは黙った。代わりに真央が訊いてきた。
「 ひなは、その転校話に納得してるの?」
「しとる訳ないじゃろ。こまい子(小さな子)じゃないんじゃけ、一人暮らしするって言うたんよ! でも、女の子じゃけ高校生の内はしたらいけんって言われたんよね!」
私は、後半やけくそになり、怒鳴るように説明してしまった。
でも、それが功を奏した訳じゃないだろうけど、アリサと真央が怒ったような顔になってた。ただその怒りが、両親にもっと反抗せずに、転校を受け入れようとしてる私に対してなのか、一方的に転校話を進めようとしてる私の両親に対してなのかは、わからないけど。
「 ひなが、仁くんに不必要なまでに、スキンシップを取ろうとするのは、わかったけど。ひな、転校するの嫌なら、もっとご両親と話し合いした方がいいと思うよ」
「 そうだね。私もそう思う。子供じゃないんだから、ご両親に意見をぶつけてみるべきじゃない?」
「 そうですね」
二人の意見は最もかもしれない。だけど、うちの両親をどうやって説得するかな? そこが難問だよな。
「 そいや、この転校話って、ひな《・》のご両親から聞かされただけなんだよね?」
急にアリサが、そう訊いてきた。一体なんだろ? まぁいいか。
「 うん。仁の両親や兄さんの婚約者は知らん筈」
「 そう」
私の答えを聞いたアリサは、こう言ったんだ。
「 音無くんのご両親やお兄さんの婚約者さんに協力して貰えばいいんだよ」
と アリサは、ニタリと笑っていた。




