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服部ひなさんは、厨二病が、治らないようです。  作者: ねこた まこと
ひなさんと仁くん、放課後異世界でアルバイト始めました。

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3


翌日。学校が終わると、ソッコーでいつもの場所に俺達は向かう。

校舎の裏。使わなくなった椅子や机がしまってある倉庫しかないこの場所は、めったに、人が来ないから、いつもあちらへの移動する時に使ってる。

帰る時は、俺の家の庭かひなの家の庭だ。


俺とひなは、右手を掲げてこう唱える。


「「 ゲートオープン!」」


俺達の右手の甲に、魔法陣が浮かび上がり、目の前にあちらとこちらをつなぐ門が出現する。

俺達は、出現した門をくぐる。短いトンネルを抜けるような感覚の後、異世界 アスール国 アルジェの町に着く。

日本では夕方だけど、こっちはお昼みたいだな。



「 ヒナさーん。ジンさん。こっちです」


俺とひなを手を振りながら、迎えたのは、一人の小柄な女性だ。明るい茶色の髪をショートにし、眼鏡をかけている。服装は、黒いハイネックのカットソーに白い膝丈のスカート。名前は、リリス・アルバートさん。今回、タヌキモドキの駆除について説明してくれるらしい。

ただ、見た目からして冒険者ぽくない。

むしろOLにしか見えないな。

実際、普段はギルドで事務員してるしね。




「 お二人供、ヴァネッサさんから、お話は聞いてます。タヌキモドキの駆除だそうですね 」

「 そうなんです。熊くらいの大きさなんですよね?」

と俺の質問に、リリスさんは提げてる鞄から、タブレット端末を取り出した。


端末を起動させ、慣れた手つきで操作する。ちなみにこの世界。こういう現代的なアイテムがあるんだ。


「 これが、タヌキモドキです。このように見た目は、タヌキそっくりです。だけど、大きさは一メートルから三メートルくらいなんです」

「 確かにタヌキだけど。これ、日本で見るタヌキさんの置物じゃろ!」


うん、ひなのツッコミ通り、信楽焼のタヌキだ。笠かぶって徳利を提げたタヌキの置物の写真が映し出されてる。

正直、このタヌキが動くところが想像出来ないんだけど。

とか思ってる間にも、リリスさんはタヌキモドキの説明を続けてる。



「 タヌキモドキは、大きいですが、倒す事はそう難しくありません。ただ踏みつぶされないようにして下さいね」

「わかりました。でタヌキモドキは、どの辺りにいるんですか?」


とひなの質問に、リリスさんは端末の別のアプリを起動させる。言うまでもなく、某会社の地図アプリそっくりだ。


「ここから北へ四キロ先の森にいます。ここですね」


リリスさんの端末の地図アプリには、アルジェの町と四キロ先の森。その名も「人外の森」とこちらの言語で表示されてる。ちなみに俺とひなは、魔法取得の為にこちらの言語は読み書き出来るし、言語チートが備わってるのか話す事にも、困らない。



「よし。行くで、ひな」

「うん」

「 お気をつけて」


俺は、学ランのポケットから、ペンのサイズまで縮めてる魔法の杖をとり出す。


変換(チェンジ) モード (ブルーム)


そう唱えると、杖が箒になった。この魔法の杖は、モードチェンジする事で、標準(スタンダード)なら、1メートル程の長さになり、筆記具(ペンシル)なら手のひらに収まるくらいの長さになる。飛行魔法で使用するなら今のように、(ブルーム)になる。

俺はひなを後ろに乗せて、森を目指した。


「 到着、って、早速!」

「 ひとまず、後退!」


森に到着するなり、俺達の目の前に、体長三メートルはあると思われるタヌキが現れた。


写真で見た通り、信楽焼のタヌキが徳利を提げて立ってる。こんだけデカイと正直怖いな。


ジーッとタヌキモドキは、俺らを見ている。なんか心なしか、ヨダレ垂らしてないか?

このままだと俺達はタヌキの餌になりそうだ。


ヨダレをたらしながら、タヌキモドキは、俺達に向かってずんずんと迫る。速さは、時速30キロくらいなんだけど、バカでかい体してるから、重機に追っかけられるようなもんだ。

魔法を使いたいが、俺が最も得意とする属性魔法は炎系だ。こんな森の中で、考えなしに使えば、それこそ、火を見るよりも(あき)らかに火事になるぞ。

言うとくけどギャグじゃないからな。


結局逃げる事を選択した俺とひなは、全速力で森の中を走る。杖は、(ブルーム)から筆記具(ペンシル)まで戻して学ランのポケットにしまってる。全速力で走りながら、ひなが話しかけてきた。


「 ねぇ、仁。このまま逃げても、あのぶち( 凄い )でかいタヌキに食い殺されるか、踏み潰されるだけ。なんかいい方法思いつかん?」

「 思いついとったら、逃げとりゃせん!そう言うお前は、なんかアイデアでもあるんか?」

「 んー? 無くもない」


絶対絶命な状況なのに、ひなは、にたりと余裕な笑みを浮かべてる。


「 その為には、仁には、囮になってもらわんといけんけど、それでもいいなら」

「……わかったよ。囮になっちゃる。はよ

そのアイデア話せ!」

「 タヌキモドキに攻撃をして。方法は、任せるけぇ。そりゃあ!」

「 待て、ひな! 」


俺が止める間もなく、ひなは、高さ五メートルくらいある木に向かって、ジャンプすると、手短な枝を掴み野生の猿のごとく登り始めた。


「 あっほうじゃ仁、私が合図したら、逃げんさいよ!」

「わかった!」


ひなからの呼び掛けに答えると、足を止

め、 俺は、右手を掲げて詠唱する。ちなみに、他の魔法使いのように杖は使用しない。俺にとって杖は、飛行魔法を使用する時の道具でしかない。


風の刀(ウィンドブレード)水の散弾ウォーターショットシェル!」



ドォン!


俺が立て続けに放った魔法がタヌキモドキに命中する。


「 ウオォ」

「 やっぱ、怒るよな。」



ひなからの合図を待たずに、俺は、一目散に逃げる。タヌキモドキは、タヌキの癖に、猪突猛進。俺を目指し突進をする。


さっきまでよりヤバい。速度が上がってるから、普通に走ってると確実に追いつかれるな。

俺は、そう判断すると、足に力を込めて跳んだ。

十メートルくらいの高さまで、ジャンプすると、さっきひながやったみたいに、木の枝をつかみ、猿のごとく枝から枝へと飛び移った。

普通の人間なら、まずは出来ない芸当だ。訓練すれば出来る人間もいるかもしれないが、俺やひなは、生まれつき持った身体能力のお陰で、訓練なしにこんな芸当が出来る。これは祖先から受け継いだ力の一つだ。


俺が、安全圏内に入った事を確認したのか、ひなが、攻撃態勢に入った。


「 タヌキさん。悪く思いんさんな。雷よ!敵を屠る華となれ!雷ノ華サンダーボルトフラワー


ひなは、木の上から、タヌキモドキに雷魔法を放つ。本来の雷ノ華サンダーボルトフラワーなら、かわいらしい名前とは、裏腹に、派手に花火のように雷が降り注ぐ魔法なんだが、威力を抑えてあるのか、線香花火のようにパチパチと雷がおこってるだけ。雷を浴びたタヌキモドキはしびれてるだけだ。


「 ほいじゃ、ひないっきまーす。()でよ。サムライソード」


ひなは、そう言って、得意の武器魔法(ウェポンマジック)己の魔力を武器に変換させる魔法で、サムライソード要するに刀を出現させると、ひらりと、しびれて動けないタヌキモドキ目掛けて落下していく。


グサリと刀が、タヌキモドキの脳天に突き刺さるとタヌキモドキは消滅した。

残っているのは、タヌキモドキがドロップした徳利と笠。それとひなだ。


「 お疲れ様! 作戦成功!」

「 めちゃくちゃじゃったけど、まあええか」


俺は、木から降りてひなの元に戻った。

お互いの無事を確認しあってると、パンパンと拍手が聞こえてきた。

俺らが振り返ると、一人の少年がフワリと、優雅に箒から降りた。

ショートカットの栗色の髪。一瞬、少女かと思うほど美しい顔立ち。服装こそ、赤のチェック柄のシャツにジーパンとごくありふれた服装だけど、立ち振舞いは、町で見る冒険者にしては洗練され過ぎてる。優雅に歩く姿は、王侯貴族っぽい。見たことないけど。



「 いやぁ、楽しい物を見せてもらったよ」

「 誰ですか?あなた 」


訝しんだ俺は、少年にそう訊いた。


「 んー。元が付くけど、この国の第二王子。トマス・アスール」

「「 はああ?!」」


なんで、王子がいるんだ? ヴァネッサさん、一体何を考えているんだ?

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