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三学期が始まり、通常の日常生活に戻ったハズのある日の夕方。それは、ひなの叫び声から始まったのだった。
「 なんじゃこりゃあ! 」
夕飯作りを始めようと冷蔵庫を開けたひなは、某刑事ドラマの主人公のような叫びを上げて固まっている。
ひなに言われて米を磨いでいた俺は、手を止めて冷蔵庫を覗く。
うん、これはひなじゃなくても、なんじゃこりゃあ!と言いたくなるな。
冷蔵庫の中はすっからかんだったのだ。
昨日、ひなに付き合って食料の買い出しに行ったから、この冷蔵庫が食料で一杯だったのは覚えてる。今はその形跡すら残っていやしないんだ。
卵、朝のおかず用のウィンナー。お味噌やマヨネーズなどの調味料。冷凍保存されていたお肉や食パン。ご飯。お弁当のおかず用の冷凍食品もなくなり、果ては、野菜室のキャベツやトマト、きゅうりまでなくっていた。
「 仁! 悪いんじゃけど、食器棚の下の方見てくれん?」
「 うん、わかった」
俺が返事すると、ひなは『 ミカン!どこにおるん! おるんなら、返事しんさい!』と台所から出ていく。俺は、ひなの指示通り、食器棚の一番下の収納部分を開ける。ここがいつも通りなら、甘い物好きのミカン用のお菓子や非常食のカップ麺やお水があるハズなんだけど、冷蔵庫同様すっからかんだった。
「 あんたの仕業じゃろ? これ! どういう事か説明しんさい!」
とひなに、ズリズリと引こずられながらミカンが、台所へやって来た。口のまわりを食べかすだらけにして。
「 みゃ~、ネコミミ隠すのに使う魔法で、魔力が枯渇しちゃったんです~。だから、魔力を補うのに家中の食べ物食べちゃいました~ ごめんなさい~」
そう言って、みゃ~みゃ~涙を流すミカン。確かにいつも結ばれてるリボンは、してるものの、ネコミミは隠されていない。魔力が枯渇したというミカンの言い分も納得いく。だけどひなは、顔をしかめてる。
「 魔力枯渇したって、そのリボンに魔法を施しとるじゃろ? 効果切れたんなら、言いんさいって言うたよね。何で言わんのんね?」
「 みゃ~、リボンがボロくなって、魔法かけても無意味なんです~」
と、ミカンは、リボンを差しだしてきた。
確かに黒いリボンは、ボロくなっていた。と言っても、端がすりきれる位だ。
ひなは、ミカンからリボンを受けとると、ため息をつく。
「 魔法のかけすぎで、このリボンが駄目になっとるわ 」
「 そうなん 」
俺は、なんとなく納得出来たが、ひなは納得しないようだ。
「 やっぱり、これより頑丈じゃないと駄目か でもまさか、金属のリボンなんてあるわきゃないし 」
とブツブツ言ってるひなに、ミカンが一言。
「 異世界の私の師匠なら、知ってるかも、魔法に耐えられる素材 」
「 異世界ー?! どうやって行くんよ!」
異世界と聞いて、飛び付きそうなひなが、そう悲鳴をあげたのだった。




