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31日大晦日の夜。順番に風呂に入り、俺ら家族とひなで、リビングで過ごしている時の事。俺とカードゲームをしていた夕陽がこう言った。
「 そういえば明日、拓人さんがね、初詣に一緒に行かないかって、メールしてきたんじゃけど、どおかな?」
「 拓人と? 俺はええけど。ひなはどうなん?」
俺と夕陽がカードゲームしてる側で、漫画を読んでいた、ひなに声をかけた。
「 うーん、ええよ。じゃけど、明日の朝何時に集合?」
「 えっちょっと待ってて、メールする」
しばらく待ってると、十時に集合しようと拓人から、メールが返ってきたので、十時に集合することになった。
「 あっそうそう。夕陽、明日九時に準備初めるけんね。早く起きんさいよ」
「 わかった」
夕陽は、若干、嫌そうな顔で返事してる。多分何されるか、わかってるから嫌そうな顔なんだろうな。
―――
翌日。
「 んっふっふ。お待たせ」
楽しげな笑顔で、ひなは夕陽と晶の部屋から出てきた。
赤に花柄の振袖を着てるひなの側には、明るい黄色の生地に花の模様が描かれた振袖姿の夕陽だ。
二人共、髪の毛に色ちがいの髪飾りを付けていて、並ぶと姉妹のように見える。
ただ夕陽は、少しだけ疲れたような顔をしてるんだ。
「 夕陽、疲れたような顔しとるけど、大丈夫か?」
「 ……大丈夫。ひなちゃんに魔法で、あれやこれやされただけじゃけ」
魔法であれやこれやって、一体何をしたんだろう?まぁいいか。訊くのもはばかれるよ。
そう思い俺は二人を連れて、実家から徒歩十分の場所にある、桃宮神社に向かった。
「 はにゃ~、人多いねぇ」
「 この近辺じゃ、大きな神社だからね。仕方ないよ」
拓人と夕陽がそんな会話をしてる。確かに、元日というのもあるせいか、普段なら、そんなに人がいない神社に沢山の人で溢れかえってる。
広島の休日の本通りとか、いつか行った東京のスクランブル交差点みたいだな。
拓人は、夕陽が迷子にならないように、手を引いて歩いてるんだけど、カップルというよりは、仲のいい兄妹みたいに見えるぞ。
妹と妹の彼氏の微笑ましい光景が見れて、ホッコリとした気分に浸ってたんだが、隣の妖怪大食い女が、その気分を台無しにしてくれる。
神社の参道に並んでいる出店で、買ってきてきたんだろうな。たこ焼きやイカ焼きの袋が左手に提げられてるぞ。右手には、フランクフルトが、しっかりと握らてるし。
「 ひな、お前のう。散々、朝、雑煮を食べといてから、まだ食べるんけ? 太るでよ」
「 ふゅとるわけなかろう( 太る訳なかろう)」
「 食べ物口に入れたまま、喋るな」
ひなは、口の中の物を飲み込んでから、改めて話し始めた。
「 ごめん。またお腹空いてさ」
「 どういう、胃袋しとんな。それよか、早くお参りに行こうで」
「 うん」
俺とひなは、手をつないでお参りの列に並ぶ。周りの人にぎゅうぎゅう押されながら、列は進む。
俺らの番になり、お参りを済ませた。
お願い事は、まあ秘密だ。
夕陽達と合流し、神社の隅で、ひなが購入した食べ物を四人で食べてると、長谷川が一人、俺らの前に現れた。
長谷川も振袖姿だ。ピンクに桜の模様がちりばめれていて、可愛いらしい。
いつも通り、ツインテールに結んでいるが、そのツインテールを止めるヘアゴムは、和風のデザインが施されてる。
ただし、本人は可愛いらしいとは程遠く、目を三角にして怒ってるんだ。
「 長谷川、あけましておめでとう。渉は一緒じゃないん?」
「 一緒じゃないよ。というか、さっき別れる宣言突き付けてきたとこだから!」
「「 また?!」」
俺とひなは、同時に声を上げてしまう。
それにしても、こいつら夏休みも、別れれるとか言ってなかったっけ?
機転をきかした拓人が、長谷川から事情を訊く為、神社近くのカフェへ移動する事を提案したんだ。
新年早々、嫌な事が起きるなあ。移動しながら、俺とひなはため息をついたのだった。




