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遅くなってすみません。
俺の実家のキッチン。ひなから、料理教わるのとおせちの準備の手伝いを兼ねて、キッチンにひなと俺二人なんだ。
ちなみに両親や妹達は、足りないおせちの材料等の買い出しに行ってていない。
―――だけど、これは必要なのか?
「 なんで、こんな事になっとんじゃろ?」
「 まあ、ええじゃん。うひゃひゃ」
うひゃうひゃっじゃねぇ、うひゃうひゃじゃ! 料理教わるだけなのに、なんでひなの姿になんなきゃいけないんだ?
しかも黒いパーカーに下はグレーのミニスカートだ。はっきり言って、足下のスースー度が高過ぎる。
これなら、男の姿で母さん所有のフリフリエプロン着けるほうが、なんぼかましだ。
でも仕方ない。と、俺はそう開き直った。
「 ひな、何を作るん?」
「 だし巻き玉子。 おせち料理の中身は、今回ほとんどは、市販で済ますつもりらしいけど、だし巻き玉子だけは、平原家オリジナルレシピでいきたいんだって。だし巻き玉子なら、普段のおかずにも出来るしね 」
「わかった 」
俺は、ひなの指導通り、だし巻き玉子を作る 。一回目、玉子を巻く所で少し手間取って、焦げ付かせてしまった。
二回目の挑戦である。
「 うん、うん。その調子」
今度は、手間取る事なく巻いていけてる。それにしても、この卵焼き器、誰が思いついたんだろうな。この長方形のフライパンのおかげで、キレイな卵焼き出来るだもんな。
「 キレイに出来たね。一切れ味見してみる?」
「 えっ、いいの?」
「 端っこの方なら、大丈夫じゃろ」
そう言って、ひなは皿に移した、だし巻き玉子を包丁を入れて、切り分けてくれる。俺は、端っこのだし巻き玉子を一切れ、口にいれた。
上手い。少し砂糖が多めで、甘めなだし巻き玉子の味が口いっぱいに広がる。
もうひとつだけ、食べたいな。とか考えてたら、パシャリと音がした。
「 ひなさんの貴重な表情ゲットだぜ」
とひなのやつは、スマホのカメラをひなは、俺を撮ってるんだ。
ゲットだぜじゃない。すぐに消させないと。今、俺とひなが魔法で入れ替わってるのは、家族全員知っている。
恥ずかしい写真が、白日の元にさらされてしまう。
「 消せ! 今すぐ!」
「 嫌! 」
ひなの手からスマホを奪おうにも、そう簡単には奪えない。
身長差と運動神経で、ひょいって交わされてしまう。
「 パンチラもゲットだぜ」
「 なっ!それこそすぐに消せ!」
しばらくドタバタやってたが、買い出しから皆が戻ってきたので、うやむやになってしまった。
あの写真、事情知らない人間に見られたら、俺、変態扱いだな。三学期始まるまでに消させないと。
と思った俺だったけど、写真の事を翌日にはすっかり忘れ、三学期早々、変態疑惑の目がクラスの皆から、向けられた俺だった。




