8
8
昨日、あれから夕陽の体温は、37℃からは上がる事はなく、一日寝たら熱は下がった。
「 熱下がって良かったな」
「 うん 」
ダイニングキッチンで、朝食を食べながら、そんな会話を俺と夕陽はかわす。
ただ夕陽の目の前で、黙々と朝食を食べる朝陽兄さんは、どこか機嫌が悪い。
そして夕陽も夕陽で、朝陽兄さんを気まずそうに、チラチラと見てるんだよな。
基本、夕陽にべた甘な朝陽兄さんだけど、たまに怒る事があるんだ。
大概、夕陽の病気に付随する事なんだけど。
黙々と、朝食を食べ終えた朝陽兄さんは、夕陽に視線を向ける。
「 夕陽、俺に言う事あるんじゃない?」
「……兄貴との約束破りました。ごめんなさい」
「 俺と約束ってなんじゃった?言うてごらん」
「『 夜更かし禁止』 『 寒い日、厚着せずに遊びに行くの禁止 』『 遊びに夢中になりすぎない 』の四つです』
項垂れながら答える夕陽は、これまでにないほど落ち込んでる。
夕陽が言った四つの事は、夕陽の持病『魔力過多症』の症状である魔力暴走に伴う発熱のトリガーとなる行動だ。
夕陽の病気の事を解明したいって思ってた、朝陽兄さんがつけた夕陽の行動記録(別名妹バカ日誌)を解析した結果らしい。
「 じゃったよね? (だったよね?)なのに、『 夜更かし禁止』を破ったん?」
「……これ作ってました 」
おずおずと出したのは、赤と青の色ちがいのミサンガだ。
「 仁とひなちゃんの婚約のお祝いに、プレゼントしたくて作っとったんです。二人に、バレんようにするのに、つい夜更かししてました 。ごめんなさい」
なるほどそんな理由だったのか。夕陽の気持ちはありがたいけど、そのせいで体調が悪くなるのはよくないぞ。
朝陽兄さんも、同じような事を考えたらしく、難しい顔をしたまま口を開いた。
「 夕陽が、二人を祝いたいという気持ちは、ようわかった。けどのお、それでお前が体調崩しちゃあ、意味ないんでよ」
「 うん、わかった、もうせん(もうしない)って約束するよ」
朝陽兄さんは、『 ええ娘、じゃのう』と言って、夕陽の頭を撫でくりまわしてた。
「 それはそうと話は変わるが、仁いつ、向こうに帰るん?」
「 えっ、29日には帰るけど」
「 ほうなんけ、(そうなのか) それまでに、ひなちゃんと会う約束とかないんか?」
「 えっあるよ。それどころか、向こうへひなも行く予定じゃし」
と俺は答える。クリスマスパーティー兼忘年会をした日に、俺が服部家へ俺が泊ったから、次は俺の実家へひなが泊まる予定だ。なんかお互いの実家へ帰る夫婦みたいだな。
ちなみにその時に、ひなから料理を教わる予定だ。
「 ふーん。まぁいいか。気をつけての」
朝陽兄さんは、そうそう言うと、朝食の片付けを始めた。
朝陽兄さんの顔がいつもよりニヤケてたのが、気になるな。
俺は、実家への帰省は、一波乱起きそうだと思ったのだった。




