表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
服部ひなさんは、厨二病が、治らないようです。  作者: ねこた まこと
8 秋から冬へ。寒いけど、二人はアツアツです。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/70

6


クリスマスパーティー兼忘年会の翌朝。

朝起きて、拓人を起こさぬよう、俺は、部屋から出て行く。顔を洗う為、洗面所へ向かう途中、縁側を通ると、庭が真っ白なのに気づいた。

昨日降った雪が積もってた。

積もったと言っても、1センチから2センチくらいかな。

この時期の積雪は珍しいけど、それでも、子供の頃から見慣れてる俺としては、珍しくとも何ともない。だけど、子犬のように、目を輝かせてる娘が一人います。


「 仁、雪合戦しよ? 」


夕陽だ。子犬だったなら、イヌミミをパタパタ、しっぽをブンブン振ってるかもしれないな。

夕陽はこの時期、病気のせいで入院してる事が多かった。だから雪を見た事がほとんど無いんだっけ。

だけどな、母さんから『 夕陽を無茶させないでね。あの娘、楽しい事に夢中になると、病気の事忘れるから気をつけてよ』というメールを頂戴したんだ。

可哀想だが、雪合戦は諦めてもらおう。

さてどう説得するかな。


「 雪合戦。寒いのにまた熱出るでよ。それに、雪合戦じゃのうて、泥合戦になる。服どろどろになるん嫌じゃろ?

小さな雪だるまなら、作れん事もないけど」


言った事は事実だ。この積雪量じゃ、雪玉は、泥混じりの物になり、雪合戦ならぬ泥合戦になってしまうんだ。

夕陽は、自分の服を見つめる。真っ白なタートルネックのセーターに、赤いチェック柄のスカートにタイツ。それが汚れるのを想像したんだろう。顔をしかめてる。


「 むう。わかった。仁の言う通りにする。ねっご飯食べたら、拓人さんと一緒と外に行ってもいい?」

「 いいけど、ちゃんと暖かくしてから、出んさいよ」

「 わかっとる」


夕陽はそう言って、昨日から泊まってるひなの部屋に戻った。ご飯の後、すぐに出れるように、コートや手袋を準備しに行ったに違いない。


その後、朝食を済ませた夕陽は、拓人を伴って、庭に出ていった。

本人に言ったら怒られそうだけど、雪を見てはしゃぐあたり、まだまだお子さまだなと思う。

夕陽の行動にほのぼのした気分になるのも、つかの間、夕陽以上に雪を喜んでいる人がいました。


「 ねっ雪! 雪合戦は無理でも、雪だるまを作りに行こう」

「 わかりましたよ」


ひなの言う通りに、俺は雪だるまを作りに外へ出た。



―――


庭に出てみると、雪だるまを作り終えたらしい夕陽と拓人が、家に戻るところだった。


「 もう入るん? 」

「 うん。十分だけだよって。時間決めてからね。短いけど。当の本人は、ご満悦みたいだけどね」

「 楽しかったよ 」


ニコニコな夕陽。白い毛糸の帽子に白いダッフルコート。足元は、ベージュのムートンブーツと防寒をしっかりした上で、外へ出てきたらしい。でも、この寒さが夕陽にとっては、命取りになるから、拓人の十分という判断は正しいのかも。俺もひなも、たった十分で満足させる事が出来なかっただろうな。

夕陽に甘いから。だけど、拓人の言うことは、きちんと守るんだ。いったい、どうやって、言うことをきかせるように仕向けたんだろうな。今度訊いてみるか。

そんな事を考えていたら、ひなが呼んできた。



「 仁、雪溶けちゃうよ。ビシャビシャになってきたし」

「 あっ本当じゃ」


気温が上がってきたんだろうな。足元の雪が踏む度に、ビシャと音を立てるんだ。


「 雪だるま作れんね。作れん事もないけど、ビシャビシャじゃけ、綺麗なん作れんね 」

「 魔法でどうにか出来るじゃろ?」

「 まあね。でもいいや 。この光景見れただけでも、満足せんとね」

「 あっそうなん」


今までなら、魔法で雪を再び凍らせてでも作ってたのに。魔法が使えない訳じゃない。今も発動中なのはわかる。

夕陽ほど、厚着をしてないのに平気そうなのは、ひなが、まわりの空気を暖めてるからだ。少し離れてる俺も、こたつに入ってるみたいに暖かいから。

言っとくが、雪が溶けてるのは魔法関係ないからな。純粋に気温の関係だ。


「 それにしても、魔法で雪だるま作らんて、どういう事なん?」

「 別に。いつまでも、子供じゃおれんって思ったけんかな」

「 そうだな」


ひなの言う通りだな。少しずつだけど、将来の為にと、色々な変化があったもんな。特に、俺らの婚約。

世間的にゃ早いのかもしれないけど、ひなの場合。服部工業の次期社長であると、宣言する意味でも必要な事だし。

俺も俺で、休みを利用して服部工業の本社オフィスへ、顔を出す事もあるんだ。

今は、美紀枝さんの雑用をしてるだけ。でも色々学ぶ事は多いな。

そうやって考えたら、子供のままじゃいけないんだな。


「 でも、今はまだいいんじゃないか」

「 そうだね。ちいと楽しむくらいなら、ええか」


そう言って、魔法で雪を固めはじめたひなは、楽しそうだった。

だけど、俺は、ひなの一言で色々考えていたから、あんまり楽しくなかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ