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12月の中旬。無事期末テストも終わり、あとは、冬休みを迎えるだけになったある日。俺は、拓人に誘われて、地元である桃宮市の駅前商店街へやって来ていた。
「 付き合わせて、ごめん。女の子にプレゼント買った事ないから、どんなのがいいのかさっぱりで」
「 ええよ、別に。どうせ俺もひなにプレゼント買わんといけんし」
そんな会話をしながら、商店街の外れにあるファッションビルへ向かった。
駅前商店街は、靴から下着に至るまで、揃える。
若い人向けのお店も多い。だから、ひなや夕陽にあげるプレゼントを買いにくるのには、持ってこいなんだ。
だけど、俺らが買いたい物は、ファッションビル内のとあるお店じゃないと、手入らないんだ。
「 だけどさ、今から行くところ。男二人じゃ肩身狭いかも」
「 じゃけど、この辺じゃあの店しかないんじゃろ?」
「 うん」
そんな会話を交わしながら、俺らがやって来たのは、ファッションビルの一角にある女の子向けの雑貨屋さんだ。
8割いや9割は、小学生から高校生くらいの女の子ばっかりだ。
たまに男の人もいるけど、保護者とか彼氏って感じだ。
拓人が言ってたように、男二人だと入るのが厳しい空間だ。
でも、ひなや夕陽が喜ぶ顔がみたいなら、仕方ない。
俺と拓人が、意を決して、女の子だらけの空間へ足を向けた時、1人の勇者が舞い降りた。
「 あっれー、音無くんに林原くんどうしたの?」
私服だったので、一瞬誰かと思ったけど野村だ。どうやら1人で買い物中みたいだな。
「 野村。いやな、ひなや夕陽に渡すクリスマスプレゼントを買いにきたんよ」
「 あっなるほど。で、買う物は、決まってるの?」
「 髪止めが欲しくて。でも選び方がいまいちわかんないんだ」
「 そっかリョーカイ。あたしと一緒にこっちに来て」
と言われるまま、女の子の群れの中を突っ切る。野村が連れてきた場所は、髪止めを扱うコーナーだ。隣は、ネックレスやイヤリングといったアクセサリーを扱うコーナー。多分ここが一番女の子の比率が高い。だけど、野村がいるお陰で、ここに居ちゃいけないという罪意識は、半減された。
「 うーん。ひなも夕陽ちゃんも、ごちゃごちゃした感じの物はさけた方がいいかな。特に夕陽ちゃん、話に聞く限り、あんまり派手なのは駄目っぽいね 」
「 あっうん」
確かに。夕陽の場合、元男の子というのもあるんだけど、可愛いすぎる物や派手物は、好きじゃない。
「 となると、この辺がいいかな」
野村が示したのは、リボンが付いたゴムだ。リボンと言っても、小さな子がつけるような感じではなくて、大人っぽいデザインが多い。色も紺やシックな赤が沢山あるんだ。
「 あっこれがいいかも」
そう言って、拓人が手にしたのは、ベロア素材の赤いリボン付きのゴムだ。
赤といっても、暗めな赤で、シックな感じだ。夕陽に似合いそうな色合いだ。
それにしても、拓人のやつ即決だな。
俺は、少し迷った。
紺のリボンと白いリボン。紺なら間違いがないんだけど、白いリボンもいいかなと思うんだ。でも子供っぽいかな。
でも、白いリボンには、思い出があるんだ。――ひなが覚えているかどうか怪しいけど。まぁいいか。白いリボンの方にしよう。
俺は、白いリボン付きのゴムを手に取ると、レジに向かった。
店員さんに、自宅用かプレゼントか訊かれたので、プレゼント用と答えて、ラッピングしてもらった。
野村に俺らは、礼を言って別れた。
クリスマス当日が楽しみだ。喜んでくれるといいな。そう俺は、思ったのだった。




