5
5
文化祭二日目だ。今日は、一般にも公開され、学校内には保護者や他校の生徒らしき人も沢山いる。
うちのクラスのメイド&執事喫茶は大好評だ。
お陰様で本日は昨日以上の忙しさです。
「 お嬢様、行ってらっしゃいませ~」
俺は、すっかり板についてしまった笑顔でお客様を送り出す。
ひっきりなしにお客は来てたけど、今はお昼前だ。メニューにマフィンくらいしか食べ物が無いから、しばらくはお客来ないかもな。
なんて事を考えながら、気を抜いていたら、声をかけられた。
「 仁、よお似合っとるで」
「 本当に。ドラマに出てた桜野くんみたいよ」
「 そうねー。ひーちゃんがいないのが、残念だけどね」
うちの両親とひなのお母さんだ。
やっぱり来たか。午後一であるイベントに出るから見に来てくれって、頼んだから来るのは当然か。
その事を思い出すと胃の辺りが重くなるけど、とにかく今はメイド&執事喫茶の当番に集中しなきゃ。
平常心をフル活動させながら、親父達を案内する。
「 ご主人様、お嬢様。お帰りなさいませ! お席はこちらでございます」
「 どうも」
案内された席に、笑いを必死にこらえながら、三人は席に着いた。俺が緊張してるのを丸わかりなんだろうな。
一応事前にメニューは教えていたからか、三人供さっさと注文をしてくれた。
三人の応対を終えると、当番に戻ってきた野村と交代する。去り際、野村がニッと笑い、頑張ってねと言ってきた。
余計にプレッシャーなんですけど。
―――
俺は昼を食べると、体育館へ向かった。
入り口には、『中高生の 告白大会! 飛び入りも可』という看板が立て掛けてある。
昔、バラエティー番組でやってたコーナーを真似したのが始まりらしい。
以来、うちの学校の文化祭ではメインイベントになってるらしい。
一応飛び入りの参加も認めてるけど、そこまで勇気のある人はいないみたいだな。事前に申し込んだ人だけみたい。
まあその方がありがたい。ひなとは婚約者という間柄だけど、実は俺からひなに告白はしてない。
6月のあの事件から、自然と付き合うようになっただけだ。
だから、この場であらためて告白しようという訳だ。
『 さあ、今年も告白大会の時間がやってまいりました。 今年は、どんなドラマが待ち受けているのでしょうか。始めは、1年3組の音無仁くんです。どうぞ。』
司会を務める実行委員から名前を呼ばれて、俺はステージに上がった。
うわあ。ぶり(すごい)緊張する
在校生はもちろんの事。ちらほらいると一般の人も俺に注目している。
当然俺の両親とひなのお母さんもいる。
その中1人、ひなが仏頂面で俺の事を見ている。
俺は深呼吸をして、中央に据えられたマイクを持って立つと大声でひなに告白する。
『 服部ひな。小学生の頃から好きでした。めっちゃ、ヘタレな僕ですが付き合って下さい』
シーンとするなか、ひなが仏頂面のまま人をかき分けて、ステージに向かってくる。
慌てた実行委員がひなを遮るが、ひなはひと睨みして、実行委員を遠ざけた。
ヒラリとひなは、ステージに上がると、俺の手からマイクを奪い、ステージの壁際まで俺を追い込むと、いわゆる壁ドンのポーズになって、こう言った。
『 付き合っても、ええで』
歓声が体育館に響く。こうして、俺の生まれて初めての告白は幕を閉じた。
しばらく俺は、女に壁ドンされた男として噂されたのは言うまでもなかった
文化祭編は終わりです。次はひなの幼い頃の話を挟んで、本編に戻ります。




