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文化祭当日。第二家庭科室が俺達のクラスのメイド&執事喫茶になる。
普段は殺風景な第二家庭科室は、折り紙で作られた輪っかを繋げた飾りとカラフルなテーブルクロスで華やかな雰囲気になっている。
だけど黒板や後ろの資料なんかはそのままなので、喫茶店というより、小学校のお楽しみ会的な雰囲気だが、即撤去できる装飾のみ可というルールなので仕方ない。
それにしても、今日は一般には非公開なんだ。
一日目は暇だぜって、部活の先輩から聞いてた筈なんだが、なんなんだこの忙しさは!
「 ご主人様、お嬢様お帰りなさいませ」
「 一番、テーブル。チョコマフィン1 紅茶1 コーヒー1です」
「 お嬢様方、行ってらっしゃいませ~」
「 ご主人様、お嬢様。ご注文はお決まりになりましたでしょうか?」
生徒と先生達しか来ないのに、ひっきりなしに客が来るんだ。まあ理由は解るんだ。
「 ごっご主人様、コーヒーをお持ちしました。熱いのでお気をつけくださいませ~」
慣れない標準語で喋るひな。普段は、広島弁丸出しの話し方しかも、どこか高飛車なのに、今日は標準語の為か、可愛らしく見える。そのせいで、男子や独身の男性教師が沢山やってくるんだ。
でもそれだけじゃない。
「 音無くん。五番に行って注文聞いて!」
「へーい」
フロアリーダーの女子にそう言われて、五番テーブルへ向かった。
「 お嬢様方、お帰りなさいませ!ご注文はお決まりでしょうか?」
五番テーブルには、三人の女子生徒。セーラーカラーに付けられた校章の色からして、三年生だ。
三人の代表らしき人が注文をしてくる。
「 えっと、プレーンマフィン三つと紅茶一つ。コーヒー二つね」
「 ご注文を繰り返させて頂きます。プレーンマフィン三つ。紅茶が一つ。コーヒーが二つですね。少々お待ちくださいませ」
営業スタイルのままスッと一礼して去ると、『宣伝通り、桜野くんそっくりだったわね。格好いい』『 でしょ?でも彼女持ちなんだよねショック』というコソコソ内緒話が聞こえてきた。
俺は、厨房チームに向けてオーダー内容を伝えながら、ため息をついた。
文化祭のパンフレットに『 桜野くんそっくりな男子が、あなたをお出迎えします』なんて謳い文句載せちゃたもんだから、俺目当てに女子生徒。主に先輩がやってくるんだ。
お陰で、てんてこ舞だ。
五番テーブルを離れると、少し拗ねたような顔のひながいた。
「 どしたん?」
「 別に。仁が私以外の女の子と喋るのが気にいらんだけ」
「 仕方ないじゃろ、文化祭なんじゃけ」
「わかっとる。けど、なんか嫌なんよね」
「 それ言うたら、俺も一緒じゃし」
「 ほんま?」
「 うん、ほんま」
「 なら、当番済んだら、一緒に遊ぼうね」
と、指切りしたとこで、長谷川に『早く戻ってね』と言われてしまった。
そのあとも忙しいかったけど、当番以外の時間はひなと遊べると思うと、全然苦にならなかった俺だった。




