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更新遅れてごめんなさい。
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九月も終わりに近づき、文化祭の準備も本格的になってきた。
文化祭は文化部の数少ない活躍の場でもあるので、文化系の部活に所属する人はそっちの準備もあって大変みたいだ。
放課後。教室での準備を抜けて手芸部の部室へ向かった。
手芸部では、文化祭当日展示する作品作りに必死になってる手芸部員の他、演劇部の衣装係が衣装作りをしたり、微調整をしてる。
そんな演劇部の為に、部室の隅っこに用意された簡易の試着室へ入る。
「 衣装は、ひなの知り合いから借りれる
事になっとるはずなんじゃけど」
「 それは女子のはそうだが、お前の分は会うサイズがなかったんだろ。っと動くな。まち針がうてんだろ」
「すみません」
今現在、俺は文化祭当日に着る衣装のサイズを調整してもらう為、ひなと同じ手芸部員の高橋に協力してもらってる最中だ。
先ほどの会話通り、俺に衣装だけサイズが無いので、学生時代演劇サークルに所属していたという茂さんから、執事服をもらったんだ。
だけど、茂さんの方が身長が高いから、サイズを直さないと着られない。
ひなにお願いしようにも、手芸部で展示する作品の仕上げに追われて大変そうなので、高橋に協力を依頼した訳だ。
「 それにしても、お前なんで裁縫出来るん?」
「 母に破れた道着くらい自分で縫えと仕込まれたからな。まあ、裁縫に限らず家事全般は仕込まれてる。出来たほうが将来困らないからな」
確かに。うちの祖父さんもぼやいてたっけ。『まさかカミさんのが先に死ぬとは思わなんだ。わし一人じゃ家事ひとつ満足に出来ん。仁、お前は家事習得しとけの。でないと、わしみたいになるけぇの』ってね。
――今度料理を母さんかひなに教わろか。
俺はそんな事を考えながら、まち針が取れないように慎重にズボンを脱いで手渡す。
作業中の高橋に、以前から気になって仕方ない事を口にしてみる。
「 なあ、なんでこんな可愛いマスコットが作れるん?」
高橋が作業してる傍らには、可愛い動物のマスコットが並んでる。
猫ちゃん。ワンちゃん。くまさん。ペンギンさんといった動物達。フェルトで作られどの子も可愛い。
イグサイルのパフォーマーのように、ワイルド系のイケメンな見た目と裏腹にこんな可愛い物が作れるなんて意外だぞ。
「 んっ? ああ、別に。昔は妹が喜んでたから作ってただけだ。今は彼女がリクエストしてくるからな」
高橋はぶっきらぼうに答えながら、ズボンの裾上げをしていく。
アイロン をかけて、手縫いで丁寧に仕上げていく。
そのあと燕尾服のそでも詰めてもらい、礼を言ってから教室へ戻る。
―――
教室へ戻ると、なんだか騒がしい。
今日はメイド服や執事服の試着だけのはず。だから用の無い人は部活に行ったり、帰ってるはずなのにクラスメイトがほとんど残ってるのはどういうわけだ?
「 あっ音無くんいいとこに帰ってきた。見て!ひながスッゴく可愛くなってるよ」
野村がチョイチョイと手招きする方へ行ってみると、メイド服に着替えたひながいた。
黒いワンピースにフリルの付いた白いエプロン。頭にはヘッドドレス。
ちょっとムスッとした顔がツンデレぽくっていいと思う。だが問題はスカート丈だ。他の女子は膝丈なのに対して、ひなのスカート丈はミニだ。オマケに穿いてる靴下はオーバーニーハイだ。
――ヤバい。可愛い過ぎる。というかこれ人気出るんじゃないか?
「 むっ、仁の目付きなんかエロいんじゃけど」
「 へっごめん。でも可愛いよ よう(よく)似合っとる」
「 そお? 」
「 うん」
俺らがそんなやり取りしてると、一部の男子からは「 クッソ羨ましいいー。爆ぜろ音無」女子からは、「 服部が乙女な反応してる 槍が降るかも」なんて言われてるけど気にしない。
呆れた渉や長谷川に声をかけられるまで、二人だけの空間を作っていた俺らだった。




