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月の初めの土曜日。課題も7月中に済ませたし、今日は部活も休みだから、ひなとデートにやって来た。
場所は桃宮市と中島市の間にある街のショッピングモールだ。最初は桃宮市の商店街で買い物しようかって言ってたけど、夏休みで知り合いに会うかも知れないからやめようってなったんで、今回はショッピングモールだ。
中島駅から電車に揺られる事約40分。
ショッピングモールの最寄り駅に着いた。
ひなが大人しい。いつもなら騒がしいくらいなんだけど。服装のせいだろうか?
ひなの服装は、いつか着ていた白いカーディガンにレモンイエローのワンピースだ。いつもは例の体操服にパーカーもしくはデニムパンツにTシャツという服装だから、余計印象が違って見えるのかな?
「 なんか、変じゃない?」
電車の中じゃ黙りだったひなが、電車から降りて開口一番そんな事を訊いてきたひな。いきなりどうしたんだ?
しおらしく訊いてくるなんて?
今まで服装なんか気にせずいたからか?
「 変じゃありゃせんよ。(変じゃないよ)」
「なら良かった」
ひなの顔がホッとした表情になる。その横顔に一瞬ドキっとした。
小学生の頃は、「野獣系女子」中学生の頃は、「嫌み姫」と呼ばれたひなが、いつの間に、女性らしい柔らかい表情をするようになったんだろ?
「仁? どしたん?」
「 いや別になんでもない」
「 なら行こう!」
さっきまでの大人びた雰囲気は消え去り、ハイテンションな小学生みたいになって俺の手を引っ張り改札を抜けショッピングモールへ駆けていった。
「 うわセール真っ盛り。安く服がゲット出来る」
「 そんな鼻息荒くせんでも」
「 ええけ、行くよ!」
ひなは、ショッピングモールに入ると真っ直ぐ、ユニユニクロへ入って行く。まるで討入りせんとする侍だ。
ひなに限らず、他の女性客も似たような雰囲気なんだよな。皆、鬼の形相で売り場に入ってくんだ。中には旦那さんや彼氏らしき人にカートやカゴを持たせてる人もいるんだ。
ひなはユニユニクロのチラシを予めチェックしてたらしく、肩から提げていたチラシを取りだして赤丸を付けた品物の売り場へ突進していく。
「 良かった。デニムパンツゲット。これに、ユージーのTシャツあわせよ」
「 なあ試着して長さ確かでええん?(いいのか?)」
「 ん?ウエストは確かめるけど、長さは大丈夫。問題ないよ」
そうだった。こいつ165センチもあるから、裾あげの必要性ないんだった。
余談だが身長149センチの長谷川は裾あげが面倒とかで、デニムパンツを穿かないらしい。
ひなは、デニムパンツの他に白いブラウスを持って試着室へ持って入った。
俺はひなに待機してるように言われ、試着室の前に待機してるんだ。
「仁お待たせ」
そう言って、ひなはカーテンを開けた。
着てるのは、白いブラウスとデニムパンツだ。
長身のひなにはよく似合う。
「 よく似合うよ」
「 そう?じゃ買おう」
ひなは、試着室中に引っ込む。しばらくすると、もとのワンピースに戻っていた。
そのあと、俺はひなに雑貨屋めぐりや本屋に行ったり、ゲーセンで遊んだりと、ごく普通のカップルがする事を大方やった。
少しは婚約者らしくなれたのかな?




