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中島高校別館二階の被服室。ここが手芸部の部室だ。部員は10名。ほとんどが女子なんだけど、若干名男子がいるんだよ。
「高橋。マスコットの進捗具合はどうよ」
「 まあまあだな」
「 ほうなん」
と私は目の前の男子生徒と会話をしながら、刺繍をしてる。
この部じゃ唯一萌え話に興味ない人だから、話しやすいんだ。
目の前の男子生徒の名前は、高橋健人。古武術を修めてるからか体格はいい。でもうちのお父さんみたいなガチムチな感じじゃなくて、イケメン細マッチョなダンスボーカルグループのパフォーマーみたいな感じかな。
ちなみに高橋がなんで手芸部に入ったかというと、通ってる道場との兼ね合いもあるからなんだそうだ。
にしても中学も同じ部活だったから見慣れてる筈なんだけど、がっしりとした手でチマチマと猫ちゃんや熊さんの可愛いマスコットが制作されるというのには、意外性を感じてしまう。
最も私の方が驚かれるんだよな。
普段の行動からガサツに思われてるからか、私が丁寧に刺繍や編み物をしてるとむちゃくちゃ驚かれる。
私がそんな事を考えながら、周りが萌え話に夢中になって作業が進まないのに対して、私の刺繍は完成に向かっていた。
この調子ならもっと大作に挑戦しようかな。
―――
「 はい今日は終わりよ。各自片付けて帰ってね」
部長さんの一言で皆各々片付けを始めた。
私と高橋も片付けて、それぞれ待ち合わせてる人の所へ行こうかとなった。
高橋には中学から付き合ってる彼女がいる。この後合流してお昼を一緒に食べるつもりらしい。
お邪魔じゃなければ私や仁もご一緒していい?なんて会話しながら、廊下歩いたら、タイミングよくバスケ部での練習を終えたらしい仁が目に入ったんだ。
「 おーい、仁!今ねぇ」
仁の元に駆け寄ろうとしたら、嫌な光景を目にしてしまった。
背の高い仁の横にいたから、気づかなかったけど、脇には小柄で黒髪ロングヘアの美少女が、親しげに仁の腕に絡みついていた。
美少女の名前は、野村アリサ。
中学時代、『ぶりっこカップルクラッシャー』と悪名を轟かせた曲者だ。なんで私の仁と一緒にいるんだよぉ。
「 何なんよあれ 」
見てる光景が信じらんなくて、私はその場に呆然と立ち尽くしたのだった。




