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第3者目線です。
数分間の沈黙の後ひなが口を開いた。
「 うー。仁の方法しかないんよね? じゃあお願いしよかな。」
―― 参ったな。一生のお願いって言ったら大概の事はきいてくれる仁に、こんなカード切られるとは思わんかった。まぁあの勘違い野郎から逃げる計画には支障ないけど。
ひなは、心の中で腹黒い事を考えながら話を進める。仁は仁で腹黒い事を考えてるとも知らずに。
――結果的にお願いは成功か。まあ、成功すれば、ひなと付き合えるかも。
「 よし、今から試すか。 実は最初から、そのつもりじゃったし。」
「 能書きはええけ。早く試そ。」
「 いっせーのーで。噛みつくで。」
仁とひなは、恋人同士が抱き合うように、お互いの体を抱き止めて、首もとに牙をあてがう。
「「いっせーのーで。」
ガブリとお互いの首もとに噛みつき、血をすする。
「いった」
「 痛い」
かき氷を食べた時のように、キンっとした頭痛の後、二人目を開けた。
「 入れ替わっとる」
「 やったー成功」
仁の中に入ったひなは、ピョンピョンと跳ね回り、子供のように喜び、ひなの中に入った仁は、どさくさ紛れに胸の感触を堪能したりと、しばらくそれぞれ成功した喜びを噛みしめていた。
吸血しあって戻った二人は、ひなの部屋で作戦会議を開いていた。
「 うーん。こんなにあっさり成功するとわね。でも失敗したらヤバいよね」
「 今度の休みまでに何回か練習して、慣れときゃええが」
「 ほうじゃね。そういやさ、さっき言うとったお願いって何?」
「 ああ、この入れ替りの魔法の方法を試さしてって、お願いしようと、思っとったんじゃけど、お願いせんでも、結果オーライじゃったし」
「 ふ~ん? そうなるように仕組んだんじゃないん?」
ひなは、ジーッと半目で睨んでる。相手に疑いを持っている時、ひなは、こうやって相手に口を割らせようとする。仁は、ひゅーっと下手くそな口笛を吹いてひなの圧力から逃れる。
「そっそんな訳なかろうが、それよか、さっき話した作戦の概要の確認せん。」
「 むぅ、わかったよ。」
ひなは、納得いかないものの、あんまり引き下がり過ぎても、仁が意固地になって、自分の計画がおじゃんになるのも嫌なので、ここは、大人しく引く事にした。
「とりあえず、仁がウチの代わりにあの勘違い先輩とデートする。んで、ウチは、渉くんと林原くんと尾行する。」
「 ええけど、渉はともかく、拓人はあっさり信じるかな。入れ替りの魔法とか、俺らが吸血鬼だとか」
「 大丈夫じゃろ。仁の親友なんじゃけ」
「 ……またよくわからん自信じゃのお。まあええか」
デートまであと数日。果たして二人の作戦はうまくいくのだろうか?




