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『 なんなん、急に?』
数回のコール音の後、むっちゃ不機嫌そうなひなが出た。拓人もだけど、ひながこうやって感情をむき出しにしてるのは珍しいな。まぁいいか。
「 いや、ひなに折り入ってお願いがあるんじゃけど。」
『 ホンマ?ウチも仁にお願いがあるんよね。今から、ウチの家に来てぇや。』
ひなの声のトーンが一気に跳ね上がった。しかも長谷川や渉の前でもほとんど使わない『 ウチ 』という一人称を使ってるところをみると本気で嬉しいらしい。
「 わかった。」
『 待っとるよ。』
通話を終えると、俺はベッドから起きてすぐに、ひなの家に向かった。
俺の家の斜め前にある平屋建ての住宅のインタホンを鳴らす――までもなく、中学時代の体操服にグレーのパーカーという出で立ちのひなが出迎えてくれた。
いつもの事だけど、曲がりなりにも年頃の女の子なんだから、男が来るってわかってて、その格好はないだろうとツッコミたくなる。ちょっと位可愛い服着てくれてもよくないか? 男として意識されてないようで悲しい。って、俺も人の事言えないな。よれよれのTシャツに下は中学時代のジャージだ。
「 ……ウチも人の事言えんけど、もうちいと( もうちょっと )ましな格好で来んさいや。」
「 悪かった。それより、ひなのお願いってなんなん?」
「そっちこそ、お願いってなんなん?」
「俺のより、ひなの先聞かせてぇや。」
俺は、ひなの家に上がらせてもらいながら、話を切り出した。
「 もう知っとるかも知れんけどね。新井って二年の先輩から告られたんよ。」
「 うん。で?」
相手の名前初めて知ったな。新井っていうのか。
「 ウチはね、その場で断ったん。『 こまい ( 小さい)頃から、好きな人がいるから無理です』ってね。じゃけど、新井先輩何を勘違いしたんか知らんけど、『 俺がそいつから、君を救ってあげる』とか言い出して、お試しで付き合う事になってさ。しかも、今度デートせんといけんし。」
「なんじゃ、それは。」
むちゃくちゃな理論だな。というか、ひなは一度断ったんだ。俺にもまだチャンスはあるんなだな。俺は、ひなにバレないように、小さくガッツポーズをする。
「 でね。一生のお願い! そのデートの日ウチと入れ替わって。」
「 もちろん。」
俺は即答する。それに、例の方法を試す口実にもなるしな。
「 じゃあ、明日まで待って。そしたら、『入れ替わりの魔法』使えるし。」
「 いんや、明日まで待たんでええ。あの魔法には、もっと簡単なやり方があるんで。」
「マジで?ウチの調べた方法はあれしかないはず。」
ひなは、困惑した顔で俺を見てる。
「 本には確かにそれしか書かれとらん。じゃけど、俺らの先祖の研究書には、別な方法が書いてあった。」
「 研究書~?ウチは、曾祖母ちゃまからもろうた( もらった)本しか持っとらんのよ。」
ひなは、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で言ってきた。
まあ無理も無いか。俺もだけど魔法に関しての資料は、先祖が所有していた『魔法大百科』という本のみ。だけど、つい最近ある場所から先祖が綴ったらしい魔法の研究書が出てきた。
「朝陽兄さんが、曾祖母ちゃんの遺品から発見したらしい。俺はそいつで調べたんよ。」
「 そうなん。でっどんな方法?」
「 お互いの血を同時に吸う事。」
ひなは絶句した後、熟れたトマトの如く顔を真っ赤にしながら、叫んだ。
「 ええ! そよなん( そんなの)恥ずかしいじゃろ。」
「 ほいじゃったら、この話は無しじゃ。」
「 えー。どうしょ。」
ひなは、そのまま黙ってしまったのだった。




