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翌日の放課後。俺はとある人物にひなに告るにはどうしたらいいか相談していた。
「告る? ってどういう意味ですか?」
「 好きな人に好きって事を告白する事。」
「 好きな人――ああ、ひなお姉ちゃんに告るですか。」
そう言って、ムシャムシャとクッキーを食べるミカン。学校帰りの彼女を餌付けして、家まで連れてきた。
いつもひなと一緒にいるし、年頃の女の子だから何かいいアイディアを思いついてくれるかもしれない。
「 うん。そのひなに告るには、どうしたらええかなあって思ったんじゃけど。」
「 そんなん、ぼくに訊かないで下さいよ。ひなお姉ちゃんに、メールかなんかして、適当な場所に呼び出して、『 好き』って言えばいいでしょ。」
正論で返されちゃあ、ぐうの音も出ないな。そういや、異世界での求愛の方法ってどんなんだろう? もしかしたら告る参考になるかも。
「 あのさ、ミカンのいた世界じゃどんな求愛の方法があるん? 」
「 求愛の方法ですかぁ? そんなの聞いてどうするんです?」
「 参考にしようと思って。」
「 はあ。そうですか。」
ミカンは、呆れつつも答えてくれる。
「 そうですね。種族によって違いますけど、例えばぼくの種族であるネコミミ族なら、食べ物をプレゼントしますね。」
「 プレゼントかあ。普通だな。」
「 でも、プレゼントの内容が普通じゃないですよ。シマヘビっていうミミズにそっくりなモンスターがいるんですけど、その干物とか、野ねずみの丸焼きとか。ネコミミ族にとっては、贅沢な食べ物なんですけどね。他の種族 特に人族とか吸血鬼族の人には、引かれますよ。」
「 そりゃそうだろ。」
ミミズの干物とか野ねずみの丸焼きとかあり得ないだろ。参考にならない。
「 じゃあさ、吸血鬼族ってどんな求愛の方法するの?」
「 吸血鬼族ですか? 求愛の方法知ってますけど、そんなに知りたいですか?」
「 知りたいに決まっとるじゃろ。」
「 うーん。教えてもいいけど、うーん」
ミカンは、眉間にしわを寄せて迷ってる。――そんなに教えたくないような内容なんだろうか?
俺は、どうしても教えてもらいたい。
切り札を出す。
「 イレブンイレブンのプレミアムプリン食べてもええけ。」
ミカンの大好物であるイレブンイレブンのプレミアムプリンを差し出した。
数秒間にらめっこしていたけど、すぐにミカンは陥落したらしい。
しぶしぶながら口を割った。
「仕方ないな、教えますよ。」
ミカンは、プレミアムプリン食べながら、話しはじめた。
「吸血鬼族の求愛の方法はですね、ズバリ自分の血をあげる事です。試験管に採血して、自分の血をあげるんです。で、その血をその場で飲んでくれたら、OKって事らしいです。」
「 なんか嫌だな。それ。」
ミカンが教えてくれない訳だよ。血をあげる事なんてムリだ。
――やっぱり、ミカンが最初に言った通りスタンダードな方法で告るか。
俺がそんな事を考えてると、ミカンが嫌な事を教えてくれた。
「 大変です。今 ぼくのケータイにひなお姉ちゃんからメール来たんですけど、今度の休みに、デートに行くみたいです。」
「 なんだってー。」
俺の叫びが部屋に響いたのだった。




