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校門の脇に立つ1人の少女 肩まで伸ばした黒髪に俺と瓜二つの顔。身長は、160センチ程ですらりとした体を包むのは、黒いブレザーに白いブラウス襟元には黒いリボンと黒のプリーツスカートというモノトーンの制服。彼女の名前は、音無雫。俺の双子の妹だ。その雫は、俺とひな、正確には、ひなを見るなり“にまあ“っと笑い一言放った。
「 お久しぶり。デカイ女。」
ガシッそんな音が聞こえそうな勢いで、ひなは雫の襟首を掴んだ。
「 ああん?何言うとんじゃ?われ《 お前》だーれが、デカイ女じゃい。」
ひなは、笑顔で禁句を放った雫に巻き舌で暴言を撒き散らす。任侠映画さながらのシーンに事情を
知らぬ人が見たなら、迷わず止めに入るだろう。だがこいつらには、挨拶なんだよ。止める必要はないが、何も知らない渉と長谷川は、ひなの体を羽交い締めにして止めようとしてる。
「 ひな。やめなよ。」
「 仁、ぼさっと見てないで止めろ。」
「 止めんでいい。こいつとあたしの保育所時代からの挨拶だから。」
「 挨拶じゃないわ! こよなん。(こんなの)毎回毎回、あんたはウチにケンカ売っとんか!」
「 売っとらん。じゃけど、あんたをからこうたら、(からかったら)楽しいじゃもん。」
「 ばり (すごい)ムカつくー。今日という今日は許さん。」
「 こっちまでおいでー。」
某ネズミと猫よろしく二人は、おいかっこを始めた。
渉と長谷川はポッカーンとしてた。
二人のおいかっこが落ちついたところを見計らい、俺は話を切り出した。
「 雫、なんで来たん?」
「 ひなに送った通り。なんか面白そうな予感がしたけぇ来てみた。」
「はあ。ここじゃ話すん無理なけ、ファミレスにでも行こうや。」
「 やだ! ここで話してや。あたしの予想だと、仁の体になんか変化あったんじゃろ? いっそのこと見してや。」
――やっぱりな。無理難題ふっかけてきやがった。渉や長谷川以外の人間のいる前で、血を吸う訳にゃいかないんだけど。
さてどうしよっか。




