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さて、次は莉緒だ。
「ねえ、レオン、莉緒のいるところへ行けるドアとか、なんかないの?」
そんなのがあったら便利なんだけどって、言おうとした。
「だ・か・ら、某ロボットじゃないって言っただろうがっ」
「あっそっ」
まったく、こういう時に使えないんだからと小さくつぶやいてみた。そうしたら頭の上からわしづかみされた。
「こらっ、龍をなんだと思ってるっ」
「あ、聞こえてた」
「わざと言っただろう」
猫少女と小男のいる見世へ戻ってきた。
「なあ、すみれの友達、知らねえか」
「知らない」
ボソッと一言、そっけない返事の猫少女。しかし、小男は別の小道を指さした。
「さっすが、女の子のことはよく見てるな。あっちか」
うんうんとうなづく小男。褒められてうれしいらしい。いつも無表情だと思っていた口元がピクリと動く。しかし、猫少女にすごいつり目で睨まれていた。
その小道を行く。
「ねえ、あの二人ってそういう仲なの?」
「さあな」
レオンはなんだか楽しそうだ。
「あっ、いた」
薄暗い小道に三軒見世が並んでいる。そのうちの一つにすみれと同じ制服を見つけた。
莉緒だった。何やら嬉しそうに話している。ポケットからこのナイトマーケットで使えるという券を取り出した。
「買い物、終わったみたい」
すみれは別に怪しいとか、ぼったくられるような危険性はないと思ったが、レオンが猛ダッシュで走っていく。
「おい、莉緒、待てよ。説明しろ」
莉緒がその券をギュッと握り締めて振り返る。その見世の中年女が嫌な顔をした。あと少しで手に入れられたのにというずるいそんな種類の顔だった。なにかあるのか。
「一度品物を手にして金を払ったら、たぶん、この見世のおばさん返金しないぜ」
「返金なんかする必要ないよ。これ、絶対にお買い得」
レオンは莉緒が大事そうに抱えているきれいな箱を見た。
「玉手箱か」
さらりとレオンがいう。
「えっ、玉手箱って、竜宮城でもらったっていうアレ? 開けると煙が出て年をとっちゃうんだよね」
それを聞いてレオンが大笑いをする。
「煙が出てきて年を取るんじゃねえよ。その持ち主がとるはずだった年月が閉じ込められていただけ」
「あ、そうだったっけ」
「まさかまさか。莉緒ったら、その玉手箱に自分の年月を入れて、永遠の若さを保とうっていうんじゃないでしょうね」
「違うよ、私のためじゃないの」
見世の女はイライラしていた。
「いいからその券をおくれ。それで商売成立さ」
女は莉緒の持っている券をひったくろうとした。
レオンは顔だけを龍に変えて、ものすごい声で吠えた。
いつかのように、一瞬だけ時が止る。




