四話
「魔物の大群が攻めてきたぞ!」
大きな鐘の音と喧騒で眼が覚める。
宿の窓をあけると、都市の入り口へと走る冒険者の姿が見えた。
「手の空いている冒険者は緊急出動!一体でも多く魔物を倒せ!」
「消防隊員かよ」
俺はミスリルナイフだけを身につけ、例の鍛冶屋へと向かう。
扉を開けた瞬間、ナイフが飛んでくるので掴み取る。
「おぉ、おぬしじゃったか。ナイフは完成しておるよ」
「サンキュー。あとこれ危ないから投げるなよ」
投擲用ナイフをベルトに括り、俺は都市の出入り口へと足を進める。
そこまで行くと、凄まじい光景が目に入ってくる。
バタバタと倒れていく魔物と、吹き上がる大量の血液。そして、魔物を斬り刻み陽の姿。
「すげぇ……流石は勇者様だ……」
「あぁ……やっぱり勇者様はお強いな……」
いや、お前ら冒険者だろ。少しは働けよ。
ボケーっと突っ立っている冒険者を尻目に、ステータス全開で魔物を斬っていく。ゴブリンやら狼やらを一刀両断し、アースドラゴンをバレないように吸血して殺し、飛行する魔物を投擲用ナイフで墜とす。
高ステータスに物を言わせた戦闘に、魔物はなす術もなく倒れていく。
次第に、死体の山が大きくなっていった。
「ふぅ………」
魔物は全て狩り尽くし、冒険者のほとんどはぐったりしてしまっている。
血で染まっていない草の上に腰を下ろし、ナイフをしまう。
「お疲れ様です、ユウさん」
差し出された小瓶を受け取り、中の水を呷る。
「なぁ、こういうのってよくあるのか?」
「さぁ……私もここに来たばかりなので詳しくないんです。ごめんなさい」
「いや、別に謝るようなことじゃ」
「随分と余裕だな、人間」
「———ッ!」
指の間にナイフを挟み、投擲。
全力で放ったはずのそれは、腕の一振りで威力を失くす。
「ほぉ、人間にしては中々強い。だが、それだけだ」
「ぐっ……!」
強烈な拳が腹に叩き込まれ、都市の城壁に叩きつけられる。
内臓が幾つか潰れ、骨折もしたと思われるが、一瞬でそれらは再生される。
俺は若干痛覚の残る腹部を抑え、睨みつける。
「ユウさん!怪我は」
「大丈夫だ、問題ねぇ。それよりあいつは……」
それは、人のような何かだった。
額には二つの角が、背中には一対二枚の翼が、腰からは尻尾が生え、その瞳孔は逆十字の形をしている。
「所詮は人間。魔人に敵うなどありえん」
「魔人……?」
詳細を調べるため、俺は解析を発動する。
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Lv : 120
種族 : 魔人
生命力 : 12,320,000 / 12,320,000
魔力量 : 12,320,000 / 12,320,000
筋力 : 9,600(96,000)
耐久 : 9,600(96,000)
敏捷 : 9,600(96,000)
器用 : 9,600(96,000)
魔力 : 9,600(96,000)
固有スキル
・魔素吸収
・全ステータス十倍
スキル
・心眼
・体術Lv7
・剣術Lv7
・拳術Lv7
・生命力回復速度上昇Lv5
・魔力回復速度上昇Lv5
・直感Lv4
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「まずいな………」
魔人のステータスは、陽の全開でも総合的に優っている。それに、スキルの方も化け物だ。
見逃してはくれないだろうか。
「あいつは居ないらしいな。今日こそ皆殺しにしてくれよう」
………無理そうだった。
可能性は低いが、血液魔法を使えば、陽と協力して撃退くらいはできるかもしれない。
吸血鬼だとバレるリスクを背負い、俺は魔物が流した大量の血液を操る。
「………なんだ?」
その全てを固体化し、鋭い氷柱のようなものを量産し、魔人に向かって一気に突撃させる。
「ちっ……」
魔人は飛び退いてかわそうとするが、それは想定済み。着地地点に血の槍を発射する。
「なにッ……!?」
おそらく直感スキルで躱されたが、その顔には一筋の血が流れていた。
「化け物だな……くそ」
今度は全方位から血の槍を超回転させながら降らせる。
「な……くっ!」
三本が命中し、血が吹き上がる。
魔人は辺りを見回し、俺を見たところで笑みを浮かべる。
「見つけたぞ。貴様だな!」
俺から奪った三本のナイフを投げる。だが、それは肩の上の壁に突き刺さった。
投擲するのに慣れていないのだろう。スキルも無かったし。
「陽、防御に専念しろ。攻撃は俺の魔法でやる」
「あれってユウさんの魔法なんですか!?どうやってるんですかアレ!」
「企業秘密だ。それより集中しろ、来るぞ」
腰から禍々しいオーラを放つ剣を抜いた魔人は、俺との直線上に立つ陽に斬りかかる。
だが、彼女の持つスキル、神聖の王は、敵の攻撃の軌道が事前に見えるというチートスキルだ。
「はぁ!」
「ぬ……!」
陽は滑らかな剣筋で受け流し、魔人の腕に傷を付ける。
魔人が陽と戦う間に、俺は魔人の後ろへ気配遮断、魔力遮断を使って移動する。
「あった……」
あの魔人の血だ。草に着いたそれを吸血で吸い取る。
途端に、凄まじい力が湧いてくるのを感じる。俺は端末を取り出した。
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城川 裕
Lv : 55
種族 : 吸血鬼・真祖
生命力 : 2,915,000 / 2,915,000
魔力量 : 2,860,000 / 2,860,000
筋力 : 55,000(550,000)
耐久 : 53,000(530,000)
敏捷 : 50,000(1,000,000)
器用 : 51,000(510,000)
魔力 : 52,000(520,000)
固有スキル
・解析
・隠蔽
・吸血
・鮮血の王
・弱点克服
・飛行
・韋駄天
・全ステータス十倍
・血液魔法
・—————
・—————
・—————
・—————
スキル
・心眼
・土属性魔法Lv3
・光属性魔法Lv1
・生命力回復速度上昇Lv3(1up)
・魔力回復速度上昇Lv3(1up)
・見切りLv5(3up)
・気配遮断Lv4(2up)
・魔力遮断Lv4(2up)
・魔力感知Lv3
・剣術Lv5(1up)
・槍術Lv2
・体術Lv4
・投擲Lv5
・直感Lv6
習得可能(2440ポイント)
・無属性魔法 100
・闇属性魔法 200
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「うお!」
まさか、こんな血だスキルを奪えるとは思っていなかった。
血液魔法を発動すると、前より素早く、より精密にコントロールすることができていた。
俺は半分を使って巨大な槍を造り、もう半分で魔人を拘束する。
魔力に物を言わせた魔法の行使の前では、魔人も身動きができないらしい。
「下がっていいぞ、陽」
「わかりました!」
彼女聖剣を収めると、槍と魔人の直線上から逃れた。
「ま、待て!私はただ、この街にいる」
「問答無用だ。魔物の大群を寄越したのはお前だろうが」
巨槍は回転し始め、一気に魔人へと突き刺さった。
その光景を見ていた他の冒険者達は、呆然とした後に歓声を上げる。
「すげぇ!何者だあいつは!」
「きっと勇者様の弟子よ!じゃなきゃあんな魔法使えるわけないわ!」
「血を操る魔法か。ふむ………」
駆け寄ってくる群衆を疲れ切った目で見た陽は、俺に触れて何かを呟く。すると、景色が俺が取っている宿の入口になっていた。
神聖魔法で逃げたのだろう。
「ふぅ、いい加減止めて欲しいですね、ああいうの」
「俺もなんとなく理解したぞ。あれはストレスヤバいってな」
「………。はい、実際にヤバいです」
「大変だな、それじゃ、俺は休むわ。じゃあな」
「はい。お疲れ様です」
俺は自分の部屋へ向かうために階段を上がる。
「なぁ、なんで着いてくるんだ?」
「私の取ってる部屋もここなんです」
「……。あぁ、そっか」
「あ、私はここの部屋です。それでは」
手を振ってきたので、俺も小さく振り返す。
俺も自分の部屋に入ると、ベッドにダイブして眠りについた。