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鮮血の王  作者: 夜兎神
3/6

三話

「クラティア火山ってどこだよ………」


 図書館でもあれば調べられるが、俺は確実に迷子になる自信がある。

 どうしたものか。そう悩んでいる俺の隣に、フードを深くかぶったローブ姿の何者かが近づいてくる。


「……誰だ」


「わ、私ですよ、(よう)です。変装しないと色々面倒なんです」


 それを聞いて納得した。あの光景を見せられた後なので説得力があった。


「話は聞きましたよ。クラティア火山、行くんですよね?」


「……ああ」


「案内しましょうか?」


「……………頼む」


「ふふん。任せてください。あ、そういえばまだ名前を聞いてないんですけど……」


「ん?そうだったか。俺はし———ユウだ。姓は無い」


 もう少しで本名を言って、日本人だとバレる所だった。そんなことをしたら俺が〝王〟の後継者であることが割れてしまう。


 俺の名前を何度か呟く陽。

 それを終えると、眩しいくらいの笑顔で手を引っ張ってくる。


「さ、行きましょう。私のスキルで瞬間移動するには、その場所を視界に入れてないと出来ないんです」


 割とあっさりとスキルを明かしてきた。これは信頼されているからだろうか。

 都市から出た瞬間、俺の目の前には巨大な火山が広がっていた。


「おうふ……凄いな、こんなスキルがあったなんて」


「いえ、正確には神聖魔法という魔法の一つなんです」


 瞬間移動すら、神聖魔法の一つでしか無い。なら、他の神聖魔法はどれだけ強力なのだろうか。

 そんなことを考えているうちに、陽は火山に開く洞窟の前に移動していた。


「一応聞いておきたいんだが、この中にフレイムリザードっていう魔物は居るのか?」


「さぁ……私も初めてなのでわかりません。けど、フレイムってつくくらいだからいると思いますよ」


 俺は引っ張られながら洞窟へ入る。

 内部はかなりの熱気だったが、俺は【弱点克服】のお陰で幾らかマシだった。


「う……暑いですね……」


 心なしか、陽の声にも元気が無い。


「いや、そのローブ脱げばいいだろ」


「あ、そうですね」


 彼女は結構天然なのかもしれない。

 ローブを入り口近くに置き、聖剣の柄に手を置いて周囲を警戒する陽。


「近くに魔物はいないみたいですね」


 確信したように彼女はそう言う。確かに、俺の魔力感知にも反応は無い。魔力感知と似たような効果を持つ魔法が、彼女の神聖魔法の内にはあるのだろうか。


「む」


 魔力感知に反応が三つ。陽もそれを認識したようで、聖剣を抜いて構える。

 姿を現したのは、赤い鱗と膨れ上がった筋肉、さらに鎧と剣を装備した二足歩行するトカゲだった。


「これが……フレイムリザード?」


「ユウさんはフレイムリザードが目当てなんですか?」


「ギルドの昇格試験の内容がこいつらを十体討伐することなんだよ」


「そうなんですか。えっと、それじゃあ私は手を出さないほうがいいですね」


 聖剣を鞘に収め、俺より後ろに下がる陽。

 俺はフレイムリザードに解析をし、俺でも倒せそうかを確認する。


 ——————————————————


 Lv : 40

 種族 : フレイムリザード


 生命力 : 15,200 / 15,200

 魔力量 : 4,000 / 4,000


 筋力 : 560

 耐久 : 380

 敏捷 : 630

 器用 : 440

 魔力 : 100


 スキル

 ・剣術Lv3

 ・熱耐性Lv3


 ——————————————————


 予想よりステータスは低い。だが、吸血鬼だとバレないように、吸血と血液魔法は控えるべきだ。

 今まで血液魔法が主な武器だったため、武器は使えない。相手から奪うって使うのがいいだろうか。


 三体の内一体が突撃してくる。

 左上から袈裟斬りをしようとする腕を受け止め、その腕を掴んだまま膝を振り上げる。


 一瞬だけ力が抜けた所で、剣を奪い取って間合いを取る。

 武器さえあればもう負けることは無いだろう。


 韋駄天のスキルで二倍になった敏捷で、三体とも横に一刀両断する。


 断面から吹き出る血の誘惑を理性で断ち切り、三体分の牙を剣で剝ぐ。


「お見事です。この私でも動きを追えませんでしたよ?」


「そうか?速さだけなら陽に勝ってるかもな」


 割と小さな牙を金の入っている革袋に入れ、刃こぼれした剣を放る。


「ユウさんって、自分の武器を持たないんですか?」


「いや、いま造ってもらってる最中だな。まぁ、明日には出来てると思うけど」


「だったら、私のナイフを貸しましょうか?」


「ナイフ?」


「はい。ミスリル製なのでよく斬れますよ?」


「……それじゃ、今日だけ貸してくれ」


「はい♪」


 (よう)は腰からナイフを外して渡してくる。

 それを受け取り、少し刃を出してみる。


 紫がかった金属。鋼より高性能と云われるそれは、産出量が少ない高価なものと相場が決まっている。

 俺はその斬れ味に期待し、洞窟の奥へと向かって歩いた。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「いやー、今日は楽しかったです。ストレス発散にもなりましたし」


 ギルドへ帰って俺は無事にランクアップ。Fランクから一気にCランクに昇格だ。


「あ、これ、返しとくぞ」


 ミスリルのナイフを差し出すが、押し返されてしまう。


「それは貰っちゃってください。ぶっちゃけ私、聖剣しか使わないので」


「は?でも」


「それは貰っちゃってください」


「………あぁ、はいはい」


 大人しくナイフを腰に戻す。


「それでは、また会いましょうね、ユウさん」


「おう。じゃあな」


 そう返すと、笑顔を浮かべて走り去っていく。


「うん?」


 彼女の物言いに、どこか違和感を感じた。

 気のせいだと割り切り、俺は適当な宿を探した。

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