第四回
吾輩は草である。名前は白詰草だ。
いやぁ、植物ですよ。
楽な仕事ですよ。
ひなたぼっこ最高。河原に生えてるから水の心配もなし。
ニート万歳!
同じ植物でも木と違って伐られる事もない!
ちょっと鳥とか虫とか近くに来るとビビるけどね。
この生活は最高だ。
ただ、ちょっと問題がある。
近所付き合いだ。
小さい頃からね、自分でも思ってたんだ。
なんか、他の子と違うって。
それが大きくなってはっきりとわかるようになると、周りの仲間も態度が変わってきたんだ。
なんかアイツ違うよなって。
はっきり拒絶されるわけじゃないんだ。少しだけ、本当に少しだけよそよそしいだけで。
でもそれがこのガラスのハートをチクチクと刺激するんだよ。
ああ、どうして他の仲間より一枚葉っぱが多く生まれてしまったんだろう。
なんで四つ葉のクローバーなんかに生まれたんだ!
こんなもん全然幸せじゃねーよ!
一万分の一の確率引き当てるとかその時点で一生分の運を使い果たしてる。
葉っぱなんかいらん! お友達が欲しいよ!
恋バナとかしたい!
ほら、周りの皆もヒャッハーしたい。 でもなんか違う奴が居るし……、みたいな酸素出してるもん!
わかるよ、ひしひし感じるよ。
酸素読める草だからわかるよ。
すいません、四つ葉で本当にすいません。
三つ葉に、三つ葉に生まれたかったよぉ~
あ、ヤバイ。
ヤバイのがこっちに向かってきてる。
天敵だ。
鳥や虫なんか比べ物にならない殺草能力を有し、性格は極めて残虐。一度狙った獲物は確実に摘み取る。
特に四つ葉のクローバーには異常なまでに執着する。
そう、人間だ。それもがきんちょだ。
探してるよ、ヤバイよ。あれ完全に四つ葉のクローバー探してるよ。
無いよ。ここに四つ葉のクローバーなんて生えてないよ。
ふぬぬぬぬ、いけるか? 頑張れば一枚くらい葉っぱ引っ込める事ができるか?
三つ葉だ、三つ葉になるのだ。
ぬおおおおおおおおおおっっ!!!
あ、ヤベ。目があった。
うわーすっげー喜んでる。
はいはい、満足しましたね。ではお帰りください。
無駄に命を散らせるものではありませんよ。一本の草にも五分の魂でやめてやめて手を伸ばさないで!
あ、あ、あーーーーーーープチン……