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3話

 かわいい。そんな声がすぐ隣から聞こえた。その声の主がつい今まで会話していた周ちゃんとは思ってもみなかったがな!

「……どうしたの周ちゃん」

「……いや、あの子かわいいなって。あ、見ちゃだめ。相手に気づかれる」

 どうやらその相手はドアの近くに立っているそうで、珍しく色恋沙汰に興味を持った周ちゃんの意思を尊重しようと俺は中断した話を続けた。

 選択授業の時間の開始まであと2分というところで担当の先生が来た。

「ああ、席は自由でいいよ。できるだけ前から詰めてくれさえすれば」

 そう告げられ、どこに座ろうか迷っていると周ちゃんは窓から二つ目の席へ向かっていた。窓側には女の子、窓から三つ目の席にはすでに人が座っていたため俺は周ちゃんの前の席に座った。

 チラリと女の子を見ると、あの二つしばりの子だった。


 授業が始まってすぐ、後ろから「……やば」と周ちゃんの声が聞こえた。何か忘れ物でもしたのかな、と振り返ろうと思った瞬間。机を動かす音がした。

「ねえ。問題集見せてくれない」

 少し間が空いて、いいよと女の子の声がした。え、そっちに見せてもらうの?いや、確かにもう片方のとなりの男子は少し問題児扱いされてた気がするけど。

 そこで気づく。この子がそうか!


 それから2人がひそひそ話しているのが聞こえた。どうやら自己紹介してるみたいだ。

 彼女の名前は浅沼あさぬま小夜さよというらしい。

 にしても周ちゃん、言い方もっと優しくいいなよ……若干きついよ。そう思って聞いていたら

「ちなみに俺の前のやつが長谷川哲希ね」

 なんて、いきなり俺のことも紹介しやがった。周ちゃんの悪い癖だなあとぼんやり考える。

 彼は自分を過小評価しているのか、コミュニケーションを取るのが苦手なのか、女子と話すときはよく一緒にいる俺のことも紹介している。そういうときはたいてい俺が周ちゃんの近くにいるときだけど。

 ふと顔をノートから黒板の方に戻すと先生が俺の後ろの2人をじろっと見ているのが見えた。それと同時に会話も止む。

 ……まあ、ファーストコンタクトにしては上出来だな。自分の恋愛も前途多難なのに周ちゃんの方もお節介したくなった。

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