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ソード・オブ・ナイツ  作者: ロドニー
傲慢の迷宮
7/17

6話 「森の帝王」

「リンネ、運営からの情報は?」


「駄目です、どうやら完全にルシファーはシステムを掌握してるようです。連絡や報告すらできません」


「…あいつ、喋ったよな……」


俺はあの時のルシファーの言葉を思い出す。

あいつは、魔物でありながら自分の声を作り、日本語という言語を話した。


「ルシファーには音声機能はありません。本来は喋る事は不可能です」


「わかってるよ。それにあれから一時間。ログアウトが出来るようになる雰囲気がない所を見ると、マジで俺たちは閉じ込められたのか……」


改めて、俺は自分の置かれてる状況を理解してきたところだ。


「どうやらルシファーを倒すしかないようですね」


「それしかなさそうだ」


だが、目的は決まっているのだ、明確に。

俺は座っていたベンチから立ち上がり、東門に向かい歩き出した。

しかし、左手がカルトに掴まれる。


「カルト……」


「セイリュウさんは怖くないんですか?」


そのカルトの表情は酷く怯えていた。

まだ幼い少女だ。ゲームに閉じ込められることに恐怖を覚えるのは仕方がない事だろう。

だけど、こいつはわかっていない。


「お前はバカだな」


「え?」


「ゲーマーなら死ぬ気でクリアだろ?死なないなら、何度でも挑戦するまでだ」


「あっ……」


カルトは深夜、俺と出会った時の言葉を思い出したようだ。


「俺は行くぜ。今のままじゃあ役立たずもいいとこだ。もっと強くならないと……」


「ま……待ってください!私も行きますっ!」


「建て直しが早いとこはいいことだぜ」


妹に俺も同じような事を言われた気がした。

だが、今ではそれすらも懐かしく感じる。

だけど、泣き言は言ってられない、何としてもルシファーをこの手で倒さなければならない。


そのためにも、俺は強くならなければならない。





――――――SONがログアウト不能になり、3時間が経った。


ニュースでも放映された。

そして、静留の……西野家の静留の部屋に設置されたカプセルの前には一人の少女が立っていた。


「静留……うっ……ぅうう……」


飛鳥は溢れだす涙を止められなかった。

それは、先程のニュースの内容がそうさせていた。


「30万ものプレイヤーがシステムに閉じ込められるとは恐ろしいですね……」


「こちらから観賞すれば、そのプレイヤーは死ぬという脅しを受けていますからね……」


「それではSONの社長である、錦戸さんに今日は来てもらいました」


「錦戸です。まず、全てのプレイヤー様にお詫びの言葉を申し上げます……。申し訳ありませんでした……。まさか、AIがここまで進化していたとは……」


錦戸ニシキドさん、SONのその大罪迷宮の今回の主犯である、ルシファーとはどんな魔物なのですか?」


「恐ろしい魔物です。恐らく、現在いる全てのプレイヤーが一致団結しなければ勝てないほどの強さ……」


「つまり、現時点での勝率は0という事でしょうか?」


「限りなく0に近いです……。それほどまでにあの迷宮は難しい。そして、プレイヤーたちの命は一週間しか持ちません。それも運が良ければです」


「それはどうしてでしょうか?」


「あの中にいる限り、食べ物や水分を摂取する事はできない。あのカプセルには各部位に装着するパーツがあるのですが、あそこにはもしものためのエネルギーが蓄えられているのです。しかし、それを人間が摂取しても、良くて一週間、悪くて五日しか持ちません。それだけの期間での大罪迷宮のクリアは不可能です」


飛鳥はこの開発者の発言を聞いた瞬間に、病院から走り出していた。

自分の怪我の事を忘れ、すぐさまに静留の家のインターホンを押し、許可を取って家に入る。

そして、ノックもなしに静留の部屋に入る。


そこには活動していたカプセルが一つ、無機質な機械音を出しながら、『IN』の二文字を照らし出していた。


「ウソでしょ……?」


飛鳥はカプセルを叩く、しかしカプセルの中で響く音が聞こえるだけだ。


「静留!!返事をしてよ!!」


中にいるはずの静留に必死に呼びかける。

だが、返事が返ってくる事はなかった。

部屋に響くのは機械の音と自分の声だけだ。


「お願いだから……」


飛鳥はその場に崩れ落ちる。


「伝えたかっただけなのに……どうして……」


「お兄ちゃんご飯だよー……ってどうしたの飛鳥さん!?」


「瑞樹ちゃぁん……」


飛鳥は瑞樹に静留の今の現状を話した。

瑞樹の表情から活気が失われていった。





時間の体感をかなり長く感じる。

異世界に飛ばされた勇者もこんな気持ちなのだろうか?


そんな事を思いながら、俺とカルトは仲間パーティを組みながら、『餓えた狼』を斬り続けていた。

カルトの武器は小型ナイフで、一撃の攻撃力はかなり劣るが、早い連続攻撃とウェポンスキルの『毒付与』でいい援護となっていた。


セイリュウ 24LV。

  カルト  21LV。


「あれから一応12時間も経ったんだな」


もっと経ったように思える。

それほどまで、時間の感覚は鈍り始めていた。

体力も消費しないこの世界。ただ夢のような剣を握って振るい、螺旋を描くだけのこの世界。


「正確な時刻は12時間と15分そして24秒でございます」


「あはは……私、ノルマ越えちゃいましたよ……」


「俺もこんなにゲームに潜ったのは始めてだ……。こりゃあ、起きた時のツケはやばそうだな……」


ただでさえ、数時間ダイブすると立ち眩みがするのに、半時間もこのゲームにいるとなると……。

少し、起きた時の事を考えたくなくなった。


「セイリュウ様!!右方より、『餓えた狼』ではない魔物が接近しています!!」


「なに!?この森の夜は9割『餓えた狼』しか出現しないんじゃないのか!?」


「システムが書き換えられたのかもしれません……」


「えっ!?なんですか!?何事ですか!?」


俺は右方に向けて、握っていた黒鉄の剣を向ける。

カルトも俺の背後で、その小さな短剣の刃を向けていた。


「ぐるぁあああああっ!!!」


「んなっ!?」


「ひぃいいいい!!?なんですかこれぇええええ!!?」


魔物に接近し、その名前を確認する。


『キューティー&森の帝王』


「なっ!?こいつがキューティー……」


「全然キュートじゃないですっ!!寧ろ、悪魔ですっ!!鬼です!!」


「ぐるぁっ!!」


『森の帝王?』は持っていた棍棒を俺たちに向かって振るい落とす。

3mはあろうかその巨体から振るわれる、その一撃に当たれば今の俺では即死は免れない……。

ルシファーを倒すためにも、ここで負けるわけには……!!


棍棒が地面に触れた瞬間、激しい砂煙が舞う。


「カルト!!後衛に周れ!!お前の短剣じゃリーチが短すぎる!!」


「わかりましたっ!!」


「俺が死んだときは……頼むぜ!!」


「えっ!?ぇええええ!!!」


「セイリュウ様、こいつに至ってはまるで情報がありません……お役に立てずに申し訳ないです」


「気にするな、ルシファーにだって情報はない。そしてこいつはルシファーより確実に弱い。それなら、負けるわけにはいかないっ!!」


「どるぁああああ!!!!」


野獣のような雄叫びが俺を怯ませる。

その隙を突いて、『森の帝王?』は俺に向かってその棍棒を振り落とす。

俺はそれを飛んで何とか回避するが、棍棒の振り落とした時の風に流され、木々に体をぶつける。


体力ゲージが小さく減少するが、回復はしていられない。

それほどまでに、『森の帝王?』の攻撃パターンは早かった。


「くっ!?」


「がぁああああああ!!!」


先程、俺が体をぶつけた木々は棍棒に当たった瞬間、四散しこの世界から消えた。


「これでどうだっ!!」


俺は背後に周り、『森の帝王?』を黒鉄の剣で叩き付ける。

しかし、その硬化された筋肉を断ち切る事は俺の剣ではできなかった。

『森の帝王?』の体力は微量にしか減少しない。


「なっ!?」


「ぐるぁああああああ!!!!」


「うぐっ!?」


「セイリュウさんっ!!」


「セイリュウ様!!!」


『森の帝王?』の巨大な拳で俺は殴り飛ばされる。

視界が赤く染まる。どうやら、ギリギリ生きていたようだ。


「セイリュウさん!!ここは退きましょう!!!」


「…………なんだ…これ……視界が歪む?」


「幻影状態になっています!!!カルト様、これではセイリュウ様は歩けません!!」


「ええ!?」


「ぐるぁあああ……」


「わわっ!?早く逃げないと!!」


カルトは俺を担いで、森から一目散に逃げ出した。

素早さは速くしとけって、言ってた回があったな……。


俺はその後、ベッドで横になり、体力を回復し、幻影を治した。

そして、『森の帝王?』に対しての対策を立てるのだった。

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