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ソード・オブ・ナイツ  作者: ロドニー
傲慢の迷宮
16/17

15話 「主人公気取り ‐後編‐」

「まだ半日と経ってねぇ……たかが、それだけの時間で俺に勝てるとでも思っているのか?」


「勝つさ……この剣でなっ!!」


俺は間髪も入れず、背中に背負っていた剣を吹き抜き一閃する。

だが、ガルディアは当然のように片手で握っている剣で受け止める。


「物騒な奴だ……もう少し楽しもうぜ?」


「悪いがそんな余裕は……ない!」


「そいつはぁ残念だぁああああ!!!」


すぐに臨戦態勢に切り替わるガルディア。嫌というほどの殺意が俺に襲い掛かる。

これが現実だったなら俺は無様に背中を向け、逃げているだろう。

いや、俺にとって今、この戦いだけは……現実そのものだ。


「どうした?武器が変わっただけで太刀筋は変わらんようだなぁ?そんな遅い攻撃では俺の体には届かん」


「ぐっ!」


やはりレベルの壁なんてものじゃない……。純粋にこの男は強い。

恐らく最強のレベルの剣士。いや、皮肉を込めて言うなら最凶ってところだな……。

今の俺ではレベル、実力、全てにおいてこいつに勝てないであろう。


「だけど勝つ!!」


「はっ!冗談にも……なってねぇーよぉおーーー!!」


「グっ!!」


俺は咄嗟に左腕に装着していた盾でガルディアの振り下ろした二本の剣の攻撃を受け止める。だが、反動で吹き飛び、俺は部屋の壁に叩き付けられる。


「まだぁ!!」


「っ!?」


真っ直ぐ突っ込んでくるガルディアの攻撃を避けるために俺は左へ飛び退く。


「そらそらぁあああ!!」


しかし、ガルディアはその行動を予測していたのか、俺の腹部に蹴りを決める。その蹴りで俺は吹き飛び扉を壊し、屋外へ飛び出す。


「室内じゃやりにくいんだろ?」


「まぁ……広いとは言えない部屋だったからな」


「さっさと始めようぜ……俺はよう……今のお前の顔が壊したくて壊したくて仕方ねぇ……いひ……いひひ……いっひっひぁひゃっひゃひゃぁあああ!!」


「狂った笑いしてんじゃねぇーよ!!」


俺の振るった剣を二本の剣で受け止めるガルディア。

間近で見るその顔は狂い以外の何ものでもない。


「うるぁあああああ!!!」


「ちっ!!」


守る暇を与えずに俺は連続攻撃を繰り出す。もちろん、スキルではなく自分の力で。

しかし、これでは決定打を与える事はできない。


「どうしたぁ?お得意のスキルは使わないのかぁ?」


「お前相手にスキルを撃つのは自殺行為だろっ!」


「だが、スキルでなければお前は俺に勝てないぜ?」


「わかってるんだよっ!」


しかし、俺が振るい落とした剣はあっさりと弾かれる。


「ぐっ!!」


「そらそら!!」


攻守が逆転する。

今度は見るからに、俺が劣勢だった。


「『鎧破壊アーマーブレイカー』ぁああ!!」


「うっ!?」


俺の装着していた盾が一瞬で耐久値を失い、その存在をこの世界から消失させる。

結構、お高い盾だったのにな……。少しお財布が痛いぜ……。

だが、そんな心配をしている余裕はなく、ガルディアの連撃は留まる事を知らない。

俺はガルディアが二撃目に繰り出した攻撃を避けられず、直撃する。


「そらぁあああああ!!!」


「うぐっ!?がぁああああああ!!!」


この全神経が悲鳴を上げる斬撃。

何度受けても、この痛みだけは絶対に好きになれない。というか、好きになってはダメだ。


「はっはー!!さっさとこの世界に、体だけ残して精神だけ死んじまいないな!!!」


「……お断りだっ!」


歯を食いしばり、俺は何とか動いた体で、見え見えの剣筋で剣を振るう。

ガルディアは予想外だったのか、後ろに飛び退き、距離をあける。


「何故無駄だと理解しねぇ?お前では俺に勝てないんだよ」


「確かにな……俺はお前に全て劣っているよ……」


俺は自分の赤色になった体力バーを確認し、思わず笑みを漏らす。


「今もそうだ、貴様の体力はもう赤色、だが俺は緑だ。この時点で何故俺との実力差に気付かない?何故臆しない?何故不敵にも笑う」


「だけどな、武器の性能で劣ったつもりはない!!」


「な……に?」


俺は先程よりも、より俊敏な足取りで一瞬でガルディアとの距離を詰め、攻撃を休むことなく連続で繰り出す。

ガルディアは焦りながらもその攻撃を何とか受け流す形で防ぐ。だが、所々でダメージを負っていた。


「『レッドオーバードライブ』……それが、この剣だけに許されたウェポンスキルだ!!」


「ぐっ!?」


俺はガルディアを翻弄するようにジグザグなステップを瞬時に刻み、一瞬でガルディアの懐に入りその隙だらけの懐に精一杯の力を込めて切り裂く。


「この俺の懐に入るだと……?……しゃらくせぇええええ!!!」


ガルディアは先程よりも速く、刃を見せた狂気の剣を振るうが、その剣が捉えたのは俺の残像だ。

俺は既にガルディアの背後に周りこんでいた。俺はその背中に蹴りを決め突き飛ばす。


「さっきまでの余裕はどうしたガルディア?」


俺は煽るような視線と声でガルディアを見やる。

ガルディアの体力バーは俺と同じ、赤色のゲージまで減少していた。


「この俺が押されているだと……?ありえねぇ……そんな事はありえねぇんだよ!!!」


「お前はユメカを傷つけた……」


俺はガルディアが繰り出した二刀流の連続攻撃を完全に見切り、隙が出来た一瞬の刹那に剣戟を加える。

ガルディアの体力バーが0すれすれまで減少する。ガルディアの表情は、狂気な物から悲痛な物に変わっていた。


「やめろぉおお!!俺を殺すな……殺すなぁああああ!!!」


「お前だけは許せないんだよ……」


「やめるんだぁああああ!!!!」


「だからここで、終わりだ」


俺はガルディアの体を真横に切断する。


「あっ……ああ……うわぁああああああああ!!!!」


ガルディアは握っていた二本の『存在しない武器ノーエクセントウェポン』を地面に落とし、四散し姿を消した。


「俺の勝ちだ……」


それは、勝利と言えない程、卑怯な勝ち方かもしれない。

それでも、俺は守りたいものを守ることができた。

今だけは、それを誇っていいよな、飛鳥。


そう、聞こえるはずの幼馴染に心で呟く。







―――――SONがログアウト不能になり、三日の月日が流れた。


「総員退避!」


ギルラフルの一喝は撤退の指示だった。


「隊長!左舷部隊壊滅です!!」


「くっ!!俺は何という勘違いをしていたんだ……」


ギルラフルたちの前に、立ち塞がっている巨大な斧を持った、翼が退化した龍の体力バーは半分にすら到達していない。


「団員の希望を奪ってしまうとは……俺は……俺は……」


「隊長!今は撤退を!!」


「わかっている!!!」


傲慢の迷宮への突入は、ルシファーに到達する事無く失敗に終わり、SONのプレイヤーたちに多大な絶望を与えた。

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