のじゃロリ爆誕 〜130cmの逆襲〜
上司がワシを嘲笑う。
「見た目もカスなら、中身もカスだな」
周りも馬鹿にするようにクスクスと笑っている。
その雰囲気に思わずキレた。
こんな会社でやってられるか。
提出するか迷っていた辞表を机から取り出す。
そして、ワシは目の前の上司の顔面に思いっきり辞表を叩きつけた。
「この会社、辞めさせていただきます!」
*******
——1週間前。
ワシは、笑顔を貼り付けていた。
「玉野さんの見た目、完全に小学生だよねー」
「わかるー。子供運賃で乗れそー」
職場の同僚が、馬鹿にするように笑う。
「そうですねー」
でも、心の中では思うところはある。
……好きでこうなったんじゃないわ! バーカバーカ!
20代半ば。
身長130cmに微妙に届かない。
これ以上伸びるのは絶望的だ。
誰も大人として見てくれない。
親は事故で死に、天涯孤独の身。
仕事では同僚達に馬鹿にされながら、毎日過ごす。
彼氏など、この身長ではまず無理だ。
一体何のために生きているのだろう。
仕事が終わった後、家に帰り、ベッドに飛び込む。
そして、狐のぬいぐるみに顔を埋める。
体勢を戻し、お気に入りの漫画の続きを読む。
のじゃロリの狐巫女が爽快に敵を倒す。
主人公を助けるシーンだ。
小さくても、強く、主人公にも頼られる。
カリスマ性がある存在だ。
のじゃロリで弱い存在など見たことがない。
そんな存在に、憧れる。
少しでも近づけるように、語尾や台詞をたまに真似していた。
……揶揄われるから他の人には絶対に言わない。
漫画を読んだ後、暇つぶしにスマホで掲示板を読む。
その日は面白そうな掲示板スレが立っていた。
『目の前に黒い穴があるんだけど【Part 1】』
試しに読むと、目の前に裂け目があって、中にモンスターがいるらしい。
モンスターの画像もよくできている。
気になったので、ハンドルネームを狐スキーにして書き込む。
『ワシも興味あるんじゃが危なくないかのう』
すぐに語尾で揶揄われた。うっさいわ!
*******
次の日。
テレビやネットニュースでも、裂け目の情報が流れていた。
急いで昨日見た、掲示板を確認する。
モンスターを倒すと、ジョブの獲得。
レベルが上がると、身体能力が向上。
モンスタードロップで金塊。
まだ出回っていない情報が多く載っていた。
一部はガセかもしれない。
しかし、多くの人が似たことを報告している。
……本当に、憧れのような存在になれるかもしれない。
幸い、今日は休みだ。
掲示板で情報を集めていると、家の近くにも裂け目の報告があった。
裂け目はまだ封鎖されてないらしい。
家にあった金属バットをケースに入れる。
ケースを背負い、向かった。
*******
その裂け目に向かうと、同じことを考えていた人が2人ほど集まっていた。
ボディビルダー体型で力強さを感じさせる山口賢将さん。
ほっそりした体格で、おかっぱ頭の坂元 二斗さん。
2人は掲示板で知り合い、ここで待ち合わせしていたらしい。
同じく裂け目に入ることを告げると驚かれる。
「嬢ちゃんが入るのは危なくないかい」と心配されるも、成人していることを伝えた。
それでも心配らしく、一緒にゲートに潜らないか提案される。
坂元さんはすでに魔術師になっているらしく、山口さんの付き添いとのことだ。
経験者がいるなら、だいぶ助かる。
最初は一人では不安だったので、その人達に手助けしてもらう。
青色のやや澄んでいる液状の塊——スライムを倒した。
すると——目の前にステータス画面が流れる。
⸻
名前:玉野 舞 レベル:1
ジョブ:未取得 種族:人間
体力:6 / 魔力:14 / 攻撃:4 / 防御:5 /
敏捷:9 / 器用:13 / 感知:11 / 運:12
⸻
……ステータス的にワシ、完全に後衛タイプだな。
獲得可能なジョブ一覧を見る。
召喚士や僧侶、吟遊詩人、料理人の4つから選べるらしい。
どれも一人では活躍できそうにない。
一人で、バッサバッサと敵を倒す。
そんな姿を想像していただけに、かなり残念に思う。
⸻
【召喚士】
魔獣を召喚し、操る者。
多数の魔獣を使役でき、
共に成長することができる。
成長性
体力:C / 魔力:A / 攻撃:C / 防御:C /
敏捷:C / 器用:A / 感知:B / 運:B
ジョブ補正:魔力 +3 / 器用 +2
初期獲得スキル:【召喚 Lv.1】
⸻
4つの中なら、戦えるのはこの召喚士一択。
すぐに、召喚士を選ぶ。
魔力が3、器用が2増え、スキルで【召喚】が増える。
山口さんは、ジョブ選択でどうするか迷ってるらしく、召喚を見てみたいらしい。
召喚を試すと狐の子供が一匹現れた。
……めちゃくちゃ可愛い。
顔を思わずフニャけさせていると、その子は「コン!」と鳴き、奥に進んでいった。
慌ててみんなでついて行く。
中で別のスライムを発見する。
すぐに子狐は炎を吐き、スライムがドロドロに溶けていた。
——かなり強い。
これなら、今後も入っても大丈夫かもしれない。
ただ、子狐をどう家に連れ帰るか考えていると、
召喚を解除すれば元いた場所に戻るのだと、何となく分かった。
一度外に出た後、召喚の解除を行い、
二人と連絡先を交換する。
たまに一緒に潜ろうと約束し、家に帰った。
*******
有給で休みを取れそうな日を、早めに申請した。
嫌そうな顔はされたが、却下はされなかった。
休みを取れた日には、可能な限りゲートに潜った。
山口さんや坂元さんと潜ることもあった。
たまにモンスターを倒すと金塊などがドロップして、財布の中身もホクホクだ。
なぜか着物や鉄扇がドロップすることもあった。
家に持ち帰り、着物を着てみる。
鏡を見る。
……妙にしっくり来た。
まるで、漫画のあの狐巫女みたいだ。
嬉しくなって、くるりと回る。
うむ、悪くない。
その着物には、汚れがすぐに落ちる自動洗浄機能が付いている。
耐久性も高い。
思ったより高性能な服で、ゲートに潜る時は着ていくことにした。
そんなことを続けていると、会社で上司に呼び出される。
「君さ、何で呼ばれたか分かってる?」
……おそらく有給の件だろう。
「……いえ、分からないです」
上司はため息をつく。
「有給を取ると他の者に迷惑がかかることを考えろ。
そんな子供みたいに、ポンポンと休んでいいわけじゃないんだよ」
……自分はよく休んでいる癖によく言う。
「いつまで、子供のままでいるつもりだ?
見た目が小学生のガキが。見た目もカスなら、中身もカスだな」
上司がワシを嘲笑う。
周囲の者も馬鹿にするように、クスクスと笑っている。
その言葉と周囲の雰囲気に思わずキレた。
こんな会社でやってられるか。
上司を無視し、一度自分の机に戻る。
今まで、提出するか迷っていた辞表を机から取り出す。
そして、ワシは目の前の上司の顔面に思いっきり辞表を叩きつけた。
「この会社、辞めさせていただきます!」
周囲が唖然とし、空気が固まる。
上司が顔を真っ赤にさせているのが見えたが、そのまま会社から出て行く。
気持ちが、すっと軽くなった。
*******
ゲートが発生して10日ほど経った。
ゲートからモンスターが外に溢れるかもしれない。
政府がそのことを隠しているという噂も出回り始めた。
会社を辞めた後は、モンスターが溢れる可能性を考え、積極的にゲートに潜っていた。
ゲートの最奥に行った時は、危ない目にもあった。
——結果として、ユニークジョブ:【狐巫女】に就けたので良かったのだろう。
スキルで、【眷属置換】や【共有】も取ることができた。
【炎狐招来】といった必殺技や、称号の【獣化】も最奥の報酬としてもらえた。
このまま強くなって、憧れの存在みたいになるのじゃ!
——そう思っている時だった。
ヴィィィ――ン。
スマートフォンが、悲鳴のようなアラート音を鳴らし始める。
驚きつつも、急いで情報を調べる。
あちこちで一斉にゲートが崩壊し、
中からモンスターが溢れているとネットニュースでやっていた。
幸い、近くにはモンスターが溢れていないみたいだ。
そのことに、まずホッとする。
以前、見た噂は本当だったようだ。
掲示板はどうなっているのだろう。
『外見たらすぐ近くにでっかい豚がいる
だれかたすけてくださいおねがいします
にげたいけどたくさんいてにげられない』
そんなヤバそうなコメントを見かける。
住所を聞くと、すぐに行ける距離だった。
子狐を召喚し、【共有】で場所を把握させ、先行させる。
【獣化】を発動させると狐耳が生える。
身体能力を上げておいた。
子狐が目的地に着いたら【眷属置換】で自身と場所を交換する。
そのままだと、モンスターが増えたと勘違いされる可能性があり、念のためだ。
そして、オークに鉄扇を振り下ろす。
「……え?」
泣きそうな顔をした男が目に入る。
「怪我はないかの? ワシが来たからには安心せよ」
安心させるために、その人物に笑顔を向ける。
イメージできる最強の存在を思い浮かべ、その行動をなぞる。
周囲に狐達を召喚し、制圧していく。
最後に近くにいた巨大なオークを倒すと一斉に消えた。
「この辺りはもう大丈夫じゃ。ワシは別のところも助けに行くから達者での」
ニッと笑い、モンスターがいる場所に走り出した。
「ありがとうございました!!! この恩はいつか必ず返します!」
後ろで、そんな声が大きく響いた。
*******
何度も助けて回っていると、ある程度落ち着いてきた。
さすがに疲れた。家に帰り、ぐっすりと眠る。
また、起きたら情報を集め、助けに向かう。
ふと気づく。
……ワシ、漫画のあのキャラみたいじゃな。
不謹慎だけど、少し笑った。
そのような生活を続けて2日経つ。
そんな頃に、重村商事の秘書が家に来て提案があった。
探索者ギルドの長を勤めないか、と。
重村商事の情報は、前の会社でも聞いていたので知っている。
代表がかなりの合理主義で、冷徹だと評判だった。
会社はもう懲り懲りだ。
断るために代表に挨拶に行くと、すごく熱心に勧誘された。
「君のような若者が今後は必ず必要だ。給料や対応に不満があれば何でも用意しよう」と。
勧誘するための世辞かと思ったが、目があまりにも情熱的だ。
あまりにも必死すぎて押されてしまい、思わず了承する。
重村代表がすごく嬉しそうにワシと握手をしたのが印象的だった。
*******
人材を募集すると、以前助けた人達が大勢やって来る。
「あの時の狐スキー様みたいになりたくて」
「カリスマ性を感じて、一生ついて行きたいと思いました」
「狐スキー様を守りたいと思いまして」
色々な意見があったが、どの人物も熱量を感じた。
全員、あの時のワシに憧れてやってきたらしい。
これだけ慕ってもらえるのは、正直嬉しい。
「……ウム。そこまで言うならワシについて来るのじゃ。
どれくらい戦えるのか知りたい。一度、模擬戦を行うぞ」
その者達と何度もゲートに潜り続けた。
皆いい人達で、すぐに打ち解けられた。
この人達と共に、支え合いながら生きたい。
一緒なら、もっと強くなれる。
そう思うのに時間はかからなかった。
*******
ただ、たまに辞めてほしいと思うことがある。
急遽、会議がしたいと連絡があった。
呼ばれたので、すぐに向かう。
扉を開けると——
その中央に、ワシと同じ姿の銅像が鎮座していた。
「……は?」
思わず、声が出た。
みんな、満面の笑みで説明してくる。
「玉野さんへの感謝の気持ちです!」
「命の恩人ですから!」
「皆で資金を出し合って作りました!」
……いや、そんなお金あるなら、復興に使ってほしいんじゃけど。
「あの、ワシはそういうの、別に……」
「いえいえ、ぜひ飾らせてください!」
「玉野さんの活躍を、永遠に!」
……フム。
ワシは、銅像を見つめた。
着物を着た小さなワシ。
炎狐を従えて、凛と立っている。
みんな、いい仕事をしましたと言うように笑顔だ。
誇らしげで、嬉しそうで。
……全員、本気でワシのために作ったんじゃな。
「……分かったのじゃ。飾ってくれ」
恥ずかしいけど、悪い気はしない。
——それから、この銅像はワシを除く全員一致で応接室に飾られることになった。
ギルドに訪れた人にワシの勇姿を見せたいとのこと。
訪れる人は、皆この銅像に驚く。
そして、ワシは毎回、銅像を見て遠い目をする。
まぁそれでも——
全員ワシを慕っているのが伝わってくる。
みんなが仲間のようなものじゃ。
何のために生きているのだろうか?
そんな事を考えていた自分はもういない。
少しは憧れの存在に近づけたのじゃろうか?
小さくても、強く、多くの人に頼られる。
そんなカリスマ性がある、あの——のじゃロリのように。
後書き
閲覧ありがとうございました!
のじゃロリは小さくても、みんなの憧れ✨
——そんな玉野舞の「はじまり」の物語、楽しんでいただけましたでしょうか?
こちらは短編なので、物語はこれで終わりとなります。
彼女の今後が気になるという方は、別で連載している拙作にも登場します。
▼ 玉野舞の活躍(?)が見れる本編はこちら!
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『【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜』
https://ncode.syosetu.com/n2508lw/
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本編では、彼女がどのように関わっていくのか——
それは第2章で、少しずつ見えてきます。
実はすでに公開済みの「掲示板回」にもこっそり登場しているので、ピンときた方はぜひチェックを✨
もし正体に気づいても、そこは……シ━━━ッd(ºεº;)ですよ?
少しでも「のじゃロリ最高!」「玉野ちゃんどうなるの?」と思っていただけましたら、本編のブックマークやページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価をいただけると、泣いて喜びます!
「小さい可愛い強いは正義!!」といった一言感想も、執筆の大きなエネルギーになります!(`・ω・´)ゞ




