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のじゃロリ爆誕 〜130cmの逆襲〜

掲載日:2026/03/11

 上司がワシを嘲笑う。


「見た目もカスなら、中身もカスだな」


 周りも馬鹿にするようにクスクスと笑っている。


 その雰囲気に思わずキレた。

 こんな会社でやってられるか。

 

 提出するか迷っていた辞表を机から取り出す。


 そして、ワシは目の前の上司の顔面に思いっきり辞表を叩きつけた。


「この会社、辞めさせていただきます!」



*******



 ——1週間前。


 ワシは、笑顔を貼り付けていた。


「玉野さんの見た目、完全に小学生だよねー」


「わかるー。子供運賃で乗れそー」


 職場の同僚が、馬鹿にするように笑う。


「そうですねー」


 でも、心の中では思うところはある。


 ……好きでこうなったんじゃないわ! バーカバーカ!


 20代半ば。

 身長130cmに微妙に届かない。

 これ以上伸びるのは絶望的だ。


 誰も大人として見てくれない。


 親は事故で死に、天涯孤独の身。

 仕事では同僚達に馬鹿にされながら、毎日過ごす。

 彼氏など、この身長ではまず無理だ。


 一体何のために生きているのだろう。


 仕事が終わった後、家に帰り、ベッドに飛び込む。

 そして、狐のぬいぐるみに顔を埋める。


 体勢を戻し、お気に入りの漫画の続きを読む。


 のじゃロリの狐巫女が爽快に敵を倒す。

 主人公を助けるシーンだ。


 小さくても、強く、主人公にも頼られる。

 カリスマ性がある存在だ。


 のじゃロリで弱い存在など見たことがない。


 そんな存在に、憧れる。


 少しでも近づけるように、語尾や台詞をたまに真似していた。


 ……揶揄われるから他の人には絶対に言わない。


 漫画を読んだ後、暇つぶしにスマホで掲示板を読む。


 その日は面白そうな掲示板スレが立っていた。


『目の前に黒い穴があるんだけど【Part 1】』

 

 試しに読むと、目の前に裂け目があって、中にモンスターがいるらしい。

 モンスターの画像もよくできている。


 気になったので、ハンドルネームを狐スキーにして書き込む。


『ワシも興味あるんじゃが危なくないかのう』

 

 すぐに語尾で揶揄われた。うっさいわ!



*******



 次の日。


 テレビやネットニュースでも、裂け目の情報が流れていた。


 急いで昨日見た、掲示板を確認する。


 モンスターを倒すと、ジョブの獲得。

 レベルが上がると、身体能力が向上。

 モンスタードロップで金塊。


 まだ出回っていない情報が多く載っていた。


 一部はガセかもしれない。

 しかし、多くの人が似たことを報告している。


 ……本当に、憧れのような存在になれるかもしれない。


 幸い、今日は休みだ。


 掲示板で情報を集めていると、家の近くにも裂け目の報告があった。

 裂け目はまだ封鎖されてないらしい。


 家にあった金属バットをケースに入れる。

 ケースを背負い、向かった。



*******



 その裂け目に向かうと、同じことを考えていた人が2人ほど集まっていた。


 ボディビルダー体型で力強さを感じさせる山口賢将さん。

 ほっそりした体格で、おかっぱ頭の坂元 二斗(にと)さん。


 2人は掲示板で知り合い、ここで待ち合わせしていたらしい。


 同じく裂け目に入ることを告げると驚かれる。


 「嬢ちゃんが入るのは危なくないかい」と心配されるも、成人していることを伝えた。

 それでも心配らしく、一緒にゲートに潜らないか提案される。


 坂元さんはすでに魔術師になっているらしく、山口さんの付き添いとのことだ。

 経験者がいるなら、だいぶ助かる。


 最初は一人では不安だったので、その人達に手助けしてもらう。

 青色のやや澄んでいる液状の塊——スライムを倒した。


 すると——目の前にステータス画面が流れる。




名前:玉野 舞  レベル:1  

ジョブ:未取得   種族:人間


体力:6 / 魔力:14 / 攻撃:4 / 防御:5 /

敏捷:9 / 器用:13 / 感知:11 / 運:12




 ……ステータス的にワシ、完全に後衛タイプだな。


 獲得可能なジョブ一覧を見る。

 召喚士や僧侶、吟遊詩人、料理人の4つから選べるらしい。


 どれも一人では活躍できそうにない。

 

 一人で、バッサバッサと敵を倒す。

 そんな姿を想像していただけに、かなり残念に思う。



【召喚士】


魔獣を召喚し、操る者。

多数の魔獣を使役でき、

共に成長することができる。


成長性

体力:C / 魔力:A / 攻撃:C / 防御:C /

敏捷:C / 器用:A / 感知:B / 運:B


ジョブ補正:魔力 +3 / 器用 +2


初期獲得スキル:【召喚 Lv.1】




 4つの中なら、戦えるのはこの召喚士一択。


 すぐに、召喚士を選ぶ。


 魔力が3、器用が2増え、スキルで【召喚】が増える。

 

 山口さんは、ジョブ選択でどうするか迷ってるらしく、召喚を見てみたいらしい。


 召喚を試すと狐の子供が一匹現れた。


 ……めちゃくちゃ可愛い。


 顔を思わずフニャけさせていると、その子は「コン!」と鳴き、奥に進んでいった。


 慌ててみんなでついて行く。


 中で別のスライムを発見する。

 すぐに子狐は炎を吐き、スライムがドロドロに溶けていた。


 ——かなり強い。


 これなら、今後も入っても大丈夫かもしれない。


 ただ、子狐をどう家に連れ帰るか考えていると、

 召喚を解除すれば元いた場所に戻るのだと、何となく分かった。


 一度外に出た後、召喚の解除を行い、

 二人と連絡先を交換する。


 たまに一緒に潜ろうと約束し、家に帰った。



*******

 


 有給で休みを取れそうな日を、早めに申請した。

 嫌そうな顔はされたが、却下はされなかった。


 休みを取れた日には、可能な限りゲートに潜った。

 山口さんや坂元さんと潜ることもあった。

 

 たまにモンスターを倒すと金塊などがドロップして、財布の中身もホクホクだ。

 

 なぜか着物や鉄扇がドロップすることもあった。


 家に持ち帰り、着物を着てみる。


 鏡を見る。


 ……妙にしっくり来た。


 まるで、漫画のあの狐巫女みたいだ。


 嬉しくなって、くるりと回る。


 うむ、悪くない。


 その着物には、汚れがすぐに落ちる自動洗浄機能が付いている。

 耐久性も高い。


 思ったより高性能な服で、ゲートに潜る時は着ていくことにした。


 そんなことを続けていると、会社で上司に呼び出される。


「君さ、何で呼ばれたか分かってる?」


 ……おそらく有給の件だろう。


「……いえ、分からないです」


 上司はため息をつく。


「有給を取ると他の者に迷惑がかかることを考えろ。

 そんな子供みたいに、ポンポンと休んでいいわけじゃないんだよ」


 ……自分はよく休んでいる癖によく言う。


「いつまで、子供のままでいるつもりだ? 

 見た目が小学生のガキが。見た目もカスなら、中身もカスだな」


 上司がワシを嘲笑う。

 周囲の者も馬鹿にするように、クスクスと笑っている。


 その言葉と周囲の雰囲気に思わずキレた。


 こんな会社でやってられるか。


 上司を無視し、一度自分の机に戻る。

 今まで、提出するか迷っていた辞表を机から取り出す。


 そして、ワシは目の前の上司の顔面に思いっきり辞表を叩きつけた。


「この会社、辞めさせていただきます!」


 周囲が唖然とし、空気が固まる。


 上司が顔を真っ赤にさせているのが見えたが、そのまま会社から出て行く。


 気持ちが、すっと軽くなった。



*******


 

 ゲートが発生して10日ほど経った。


 ゲートからモンスターが外に溢れるかもしれない。

 政府がそのことを隠しているという噂も出回り始めた。


 会社を辞めた後は、モンスターが溢れる可能性を考え、積極的にゲートに潜っていた。


 ゲートの最奥に行った時は、危ない目にもあった。

 ——結果として、ユニークジョブ:【狐巫女】に就けたので良かったのだろう。

 

 スキルで、【眷属置換】や【共有】も取ることができた。

 【炎狐招来】といった必殺技や、称号の【獣化】も最奥の報酬としてもらえた。

 

 このまま強くなって、憧れの存在みたいになるのじゃ!


——そう思っている時だった。


 ヴィィィ――ン。


 スマートフォンが、悲鳴のようなアラート音を鳴らし始める。


 驚きつつも、急いで情報を調べる。


 あちこちで一斉にゲートが崩壊し、

 中からモンスターが溢れているとネットニュースでやっていた。


 幸い、近くにはモンスターが溢れていないみたいだ。

 そのことに、まずホッとする。


 以前、見た噂は本当だったようだ。


 掲示板はどうなっているのだろう。


『外見たらすぐ近くにでっかい豚がいる

 だれかたすけてくださいおねがいします

 にげたいけどたくさんいてにげられない』

 

 そんなヤバそうなコメントを見かける。

 住所を聞くと、すぐに行ける距離だった。


 子狐を召喚し、【共有】で場所を把握させ、先行させる。


 【獣化】を発動させると狐耳が生える。

 身体能力を上げておいた。


 子狐が目的地に着いたら【眷属置換】で自身と場所を交換する。

 そのままだと、モンスターが増えたと勘違いされる可能性があり、念のためだ。


 そして、オークに鉄扇を振り下ろす。


「……え?」


 泣きそうな顔をした男が目に入る。


「怪我はないかの? ワシが来たからには安心せよ」


 安心させるために、その人物に笑顔を向ける。


 イメージできる最強の存在を思い浮かべ、その行動をなぞる。


 周囲に狐達を召喚し、制圧していく。


 最後に近くにいた巨大なオークを倒すと一斉に消えた。


「この辺りはもう大丈夫じゃ。ワシは別のところも助けに行くから達者での」


 ニッと笑い、モンスターがいる場所に走り出した。


「ありがとうございました!!! この恩はいつか必ず返します!」


 後ろで、そんな声が大きく響いた。



*******



 何度も助けて回っていると、ある程度落ち着いてきた。


 さすがに疲れた。家に帰り、ぐっすりと眠る。


 また、起きたら情報を集め、助けに向かう。


 ふと気づく。


 ……ワシ、漫画のあのキャラみたいじゃな。


 不謹慎だけど、少し笑った。


 そのような生活を続けて2日経つ。


 そんな頃に、重村商事の秘書が家に来て提案があった。


 探索者ギルドの長を勤めないか、と。


 重村商事の情報は、前の会社でも聞いていたので知っている。

 代表がかなりの合理主義で、冷徹だと評判だった。


 会社はもう懲り懲りだ。

 断るために代表に挨拶に行くと、すごく熱心に勧誘された。


「君のような若者が今後は必ず必要だ。給料や対応に不満があれば何でも用意しよう」と。


 勧誘するための世辞かと思ったが、目があまりにも情熱的だ。


 あまりにも必死すぎて押されてしまい、思わず了承する。


 重村代表がすごく嬉しそうにワシと握手をしたのが印象的だった。

 


*******



 人材を募集すると、以前助けた人達が大勢やって来る。


「あの時の狐スキー様みたいになりたくて」

「カリスマ性を感じて、一生ついて行きたいと思いました」

「狐スキー様を守りたいと思いまして」

 

 色々な意見があったが、どの人物も熱量を感じた。


 全員、あの時のワシに憧れてやってきたらしい。


 これだけ慕ってもらえるのは、正直嬉しい。


「……ウム。そこまで言うならワシについて来るのじゃ。

 どれくらい戦えるのか知りたい。一度、模擬戦を行うぞ」


 その者達と何度もゲートに潜り続けた。


 皆いい人達で、すぐに打ち解けられた。


 この人達と共に、支え合いながら生きたい。

 一緒なら、もっと強くなれる。


 そう思うのに時間はかからなかった。



*******



 ただ、たまに辞めてほしいと思うことがある。


 急遽、会議がしたいと連絡があった。


 呼ばれたので、すぐに向かう。

 

 扉を開けると——



 その中央に、ワシと同じ姿の銅像が鎮座していた。



「……は?」 


 思わず、声が出た。


 みんな、満面の笑みで説明してくる。


「玉野さんへの感謝の気持ちです!」

「命の恩人ですから!」

「皆で資金を出し合って作りました!」


 ……いや、そんなお金あるなら、復興に使ってほしいんじゃけど。


「あの、ワシはそういうの、別に……」


「いえいえ、ぜひ飾らせてください!」

「玉野さんの活躍を、永遠に!」


 ……フム。


 ワシは、銅像を見つめた。


 着物を着た小さなワシ。

 炎狐を従えて、凛と立っている。


 みんな、いい仕事をしましたと言うように笑顔だ。

 誇らしげで、嬉しそうで。


 ……全員、本気でワシのために作ったんじゃな。


「……分かったのじゃ。飾ってくれ」


 恥ずかしいけど、悪い気はしない。


 ——それから、この銅像はワシを除く全員一致で応接室に飾られることになった。


 ギルドに訪れた人にワシの勇姿を見せたいとのこと。


 訪れる人は、皆この銅像に驚く。


 そして、ワシは毎回、銅像を見て遠い目をする。


 まぁそれでも——

 全員ワシを慕っているのが伝わってくる。


 みんなが仲間のようなものじゃ。


 何のために生きているのだろうか?

 そんな事を考えていた自分はもういない。


 少しは憧れの存在に近づけたのじゃろうか?


 小さくても、強く、多くの人に頼られる。

 そんなカリスマ性がある、あの——のじゃロリのように。



 



後書き


 閲覧ありがとうございました!


 のじゃロリは小さくても、みんなの憧れ✨

 ——そんな玉野舞の「はじまり」の物語、楽しんでいただけましたでしょうか?


 こちらは短編なので、物語はこれで終わりとなります。

 彼女の今後が気になるという方は、別で連載している拙作にも登場します。


▼ 玉野舞の活躍(?)が見れる本編はこちら!



『【ゲート×ソロ成長】孤独な少女は、影を纏い最強へ 〜日常の底で、刃は静かに成長する〜』


 https://ncode.syosetu.com/n2508lw/



 本編では、彼女がどのように関わっていくのか——

 それは第2章で、少しずつ見えてきます。


 実はすでに公開済みの「掲示板回」にもこっそり登場しているので、ピンときた方はぜひチェックを✨

 もし正体に気づいても、そこは……シ━━━ッd(ºεº;)ですよ?


少しでも「のじゃロリ最高!」「玉野ちゃんどうなるの?」と思っていただけましたら、本編のブックマークやページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして評価をいただけると、泣いて喜びます!


「小さい可愛い強いは正義!!」といった一言感想も、執筆の大きなエネルギーになります!(`・ω・´)ゞ

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