理詰めの謎の人物⁉️
「あ、あの……坂の上の景色、とっても綺麗でしたね、カレンさん……」
鈴がカレンの背中に揺られながら、のんびりと坂を下りてきた時のことです。物陰から、ヒトミノジの住人がススス……と音もなく現れ、怯えた様子で指を差しました。
「……結界の……前に……妙な……男……。何か……ブツブツ……言っている……」
「えぇっ!? 怖い人ですか……!? ひ、ひぎゃぁぁ、どうしましょう、カレンさん!」
鈴は一瞬でパニックになりかけましたが、一人で立ち向かう勇気はありません。
「いったん……いったん別荘に戻りますぅ!!」
脱兎のごとく別荘へ引き返した鈴は、留守番をしていたヒルダとミィアに泣きつきました。
「ヒルダさーん! ミィアさーん! 変な人が結界をジロジロ見てるみたいなんですぅ!!」
「 鈴の聖域を覗き見する不届き者はどこのどいつだニャ!」
「謎の男……。リヴァイアサンが去った直後に現れるとは、ただ者ではありませんね。行きましょう、鈴殿。私たちがついています」
鈴はカレンのモフモフに隠れ、ヒルダとミィアを先頭に、おそるおそる町入口の境界線へと向かいました。
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ヒトミノジ入口:結界の境界線
そこには、先ほどの謎の人物が、悔しそうに結界を拳で叩いている姿がありました。
「……くっ。術式は解読できた。魔力の流れも掴んだ。……だが、なぜだ。なぜ、この薄っぺらい膜一枚が、私の干渉を一切受け付けん……! この強固な『拒絶』の意志……一体どんな複雑な幾何学模様を編めば、これほどの壁になるのだ……!」
男は、高度な理論で結界を崩そうと試みたようですが、鈴の結界は「理論」ではなく「レベル449の圧倒的な恥ずかしさと拒絶」でできているため、理屈では解除できなかったのです。
そこへ、鈴たちが到着しました。
「あ、あの……。私の結界に、何かご用でしょうか……?」
カレンの陰から消え入りそうな声で鈴が尋ねると、男はハッと顔を上げ、鋭い眼光を鈴に向けました。
「……貴様か。この結界の主は……。……信じられん。これほど高度な多重構造の防護魔法を……いや、もはや魔法を超えた『理』を、こんな幼い娘が……?」
男は一歩詰め寄ろうとしましたが、パステルカラーの壁に阻まれ、再び「チッ」と舌打ちをしました。
「……おい。この結界、どうやって作った。どのような術式を編み、どの属性の魔石を触媒に使ったのだ。白状しろ。私の分析では、この構造は現世の魔導書には一行も記されていないはずだ……!」
「じゅ、術式……? 触媒……? え、えっと……その……ただ、『誰も来ないで!』って一生懸命お願いしただけで……。編んだりとか、石を使ったりとか、そんな難しいことはしてないですぅ……」
「……は?」
男は、自分の人生をかけて積み上げてきた魔導の知識を真っ向から否定され、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で固まりました。
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現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 備考 |
| 謎の男 | 【絶望と混乱】| 鈴の「天然・無意識魔法」に、全知能を否定される。 |
| 桜井 鈴| Lv.449 | 【困惑】 難しいことを聞かれて、逆に申し訳なくなっている。 |
| ヒルダ | 【警戒】| 剣の柄に手をかけ、男の素性を探っている。 |
| ミィア| 【呆れ】 | 「理屈で鈴の結界は破れないニャ」と鼻で笑う。 |
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「……願った……だけだと? ……馬鹿な。そんなデタラメで、私の分析を跳ね返したというのか……っ!?」
男の額に青筋が浮かびます。




