世界一安全な観光
「……ふにゃぁ。フィオナさん、昨日はごめんなさい。……今日は、もしよければ……一緒に、町をお散歩しませんか?」
翌朝、鈴が恥ずかしそうに提案すると、フィオナ王女の瞳にパァァッと希望の光が宿りました。
「お、お姉様とお散歩!? 私、一生このドレスを脱ぎませんわ! 額縁に入れて飾りたいくらいですけれど、お姉様と歩くために着させていただきますわ……っ!(普通の声量)」
「えへへ、良かったです。……カレンさん、行きましょうか」
「クゥ~~ン♪」
鈴は、昨日マスターした「どこでも張れる結界」を応用し、自分たちの周囲3メートルを包み込む、移動式の【パステル・セキュリティ・ドーム】を展開しました。外からは薄い虹色の膜が見えるだけで、中の音は漏れず、外からの衝撃(や、急な魔物の襲来)も完全にシャットアウトする、世界一安全な観光カプセルです。
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ヒトミノジの町:お散歩タイム
「わぁ……。こうして歩くと、ヒトミノジって本当に静かで、素敵な町ですね……」
鈴がのんびりと歩を進めると、結界の中には柔らかな花の香りが漂い、足元にはカレンがふわふわの足取りで寄り添います。
「本当ですわ……。アステリアやセントシャイアの喧騒も好きですけれど、この『静寂を愛する心』が形になったような町、お姉様にぴったりですわね。……あ、見てくださいまし、お姉様! あそこの軒先に、可愛らしいリボンの細工が飾ってありますわ!」
フィオナが指差した先では、町の人たちが鈴への感謝を込めて、家々の窓辺に色とりどりのリボンを飾っていました。
「……あ。本当だ……。皆さん、私の好きなものを……覚えていてくれたんですね……」
鈴が嬉しそうに微笑むと、物陰から様子を伺っていた住人たちが、無言で(しかし、昨日よりずっと穏やかな表情で)ペコリとお辞儀をしてくれました。
一方その頃:ミィアとヒルダ
「……ふぅ。あのお二人、すっかり仲良しになったニャ。昨日の爆発が嘘みたいだニャ」
「ええ。鈴殿も、フィオナ王女殿下の『重すぎる愛』に、少しずつ慣れてきたようですね。……それにしても、あの移動式結界……レベル449の魔力が凝縮されていて、リヴァイアサンが体当たりしてもビクともしないでしょうね……」
ヒルダは、遠ざかっていくパステル色の球体を眺めながら、感心したように呟きました。
現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 備考 |
| 桜井 鈴 | Lv.449 | 【リラックス】フィオナとの距離感を掴み、お散歩を楽しむ。 |
| フィオナ王女| 【淑女修行中】| お姉様に嫌われないよう、適切な音量をキープして感動中。 |
| カレン | 【警護モード】| 鈴とフィオナの間で、二人の仲を取り持つように歩く。 |
| ヒトミノジの町 | 【リボン祭り】 | 住人たちが静かに鈴を歓迎している。 |
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「……フィオナさん、あそこの坂を登ると、海がとっても綺麗に見えるんですよ。……一緒に行きましょう?」
「はい……! どこまでも、どこまでもついていきますわ、お姉様!」
二人の影が、穏やかな陽光の中で重なります。……が、平和な時間は長くは続かないのが、この「レベル449」の少女の宿命でした。




