不在の主
「鈴殿、戻りましたよ! ……って、あれ? 鈴殿? カレン殿?」
王女フィオナが建設作業に熱中している隙を突き、ヒルダとミィアは全速力で「本家」の隠れ家へと戻りました。しかし、そこには主の姿も、巨大な守護獣の姿もありません。
「ニャ、ニャーーー!? もぬけの殻だニャ! もしかして王女様の気配を察知して、次元の狭間にでも逃げ込んだのかニャ!?」
困惑する二人の前に、ゆらりと猫神様の思念が現れました。
『……案ずるな。鈴ならカレンに連れられて遠出をしたよ。おそらく、あのクマが各地で集めていた「可愛いもの」の隠し場所へ行ったのだろう。名付けによって絆が深まったからな……』
「カレン殿の秘密基地……!? 鈴殿を一人(と一匹)で外に出すなんて、何が起きるか分かりませんニャ!」
慌てた二人は、鈴の居場所を特定するためにアステリアの街へ。公にはできない探し物のため、路地裏に店を構える腕利きの占星魔術師を訪ねました。
「……ふむ、探し人の気配か。……妙だな、凄まじい防壁(防御力)に守られていてハッキリとは見えんが……南だ。潮の香りがする。どこかの『港町』の近郊にいるようだな」
「港町……? アステリアから南といえば、あそこしかありませんが……あんな場所へ?」
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数日後:アステリアの街外れ
ついに、王女の情熱が形を成しました。
「見てくださいまし! これぞお姉様に相応しい、【黄金パジャマ宮殿(仮)】の完成ですわ!!」
そこには、太陽の光を反射して街中を照らし出すほどキンキラキンの、超豪華な宮殿がそびえ立っていました。屋根の上には、なぜか鈴とフィオナが抱き合っている巨大な純金像が鎮座しています。
「……おい、ヒルダ。これ、街の景観を完全に破壊してねぇか?」
「……ええ。ですが、持ち主(予定)がいなければ、ただの巨大な金塊ですね……」
ガラムとヒルダが遠い目をしている横で、王女様は「お姉様が戻られたら、ここで毎日ティータイムですわ!」と夢を膨らませていました。
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同じ頃:港町ヒトミノジ・秘密基地
一方、王都とは正反対の静かな南の地では。
「……完成……しました……。……どうぞ……ご自由……に……」
職人たちが無言で頭を下げ、森の中に溶け込むように去っていきました。
そこには、洞窟の近くに洞窟と一体化した、世界で最も「目立たない」のに「最高に快適な」第2の隠れ家(別荘)が完成していました。
窓は極小ですが、中は広々としており、壁には防音の魔法が幾重にもかけられています。そして奥には、鈴がリクエストした、カレンもゆったり浸かれる「カレン専用・大理石温泉」まで完備されていました。
「ふにゃぁ……。完璧ですぅ……。職人さんたち、天才ですぅ……。これでもう、誰にも邪魔されずに、カレンさんと一日中ゴロゴロできますぅ……」
「クゥ~~ン♪」
鈴は、さっそく完成した温泉に
赤面爆炎と【清らかなる水】で温泉を作り、カレンと一緒に「新築祝い」の入浴を楽しんでいました。アステリアで自分の黄金像が建てられていることなど、微塵も気づかずに……。
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現在の状況
| 場所 | 建物 | 居住者 |
| アステリア外れ | 黄金パジャマ宮殿| フィオナ王女(主の帰還を待機中) |
| 港町ヒトミノジ | 究極のひきこもり別荘 | 鈴&カレン(温泉満喫中) |
湯気に包まれながら、鈴がようやく仲間のことを思い出しました。




