ワガママ王女アステリアへ
「――ただいま戻りました。……鈴殿、本当に一人で帰ってしまわれるとは」
「ニャー……。まあ、あの状況の鈴ならこうなる予感はしてたニャ。モフモフの誘惑には勝てないニャ」
キッチンのドアが開き、光と共にミィアとヒルダが帰還しました。二人は、焼きたてのステーキを幸せそうに頬張る鈴と、巨大な山のように眠るリボンベアーを見て、深いため息をつきました。
「あ、おかえりなさいです……。えへへ、お肉、とっても美味しいですよ……?」
「……鈴殿、その余裕が羨ましいです。王都は大騒ぎでしたよ。伝説の盗賊団を捕らえた話で持ちきりです」
ヒルダが頭を押さえながら椅子に座ります。レベル319に到達した鈴の放つオーラは、もはや隠しきれないほど神々しくなっていましたが、当の本人はソースを口の端につけて笑っているだけでした。
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一方その頃――王都
王都の城下町では、一人の少女がフードを深く被り、熱狂冷めやらぬ群衆の中に立っていました。
「……なんですって? お姉様が、巨大なクマに乗って空を飛んで行かれた……?」
王女は、街の人々が噂する「謎の少女」の話を聞き、拳をぎゅっと握りしめました。
「決めましたわ。お姉様、今すぐお迎えに行きますわ!」
王女は風のような速さで城へと戻ると、政務に励んでいた王のもとへ駆け込みました。
「お父様! お願いがございますの!」
「おお、どうした、そんなに息を切らして……」
「私、アステリアに行きたいのです! いえ、今すぐ行かねばなりませんの! 私の心の平穏のために!」
「なっ……アステリアだと!? あそこは先日の事件で混乱している最中だぞ! 王女が一人で行くなど、そんな勝手なことが許されると――」
「お父様。……行かせてくださらないなら、私、お城のバルコニーから飛び降りて、自力で走っていきますわよ?」
「…………お前というやつは……っ!」
王都一のワガママ王女の猛追撃が、今まさに始まろうとしていました。
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現在のステータス(平和な隠れ家)
| キャラクター | レベル | 状態 / 備考 |
| 桜井 鈴| 319 | 焼肉のタレの美味しさに感動中。 |
| 王女 | 鈴を追ってアステリア行きを強行中? |
| 国王 | 娘のワガママに頭を抱え、胃薬を服用中。 |
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「……ふぇ? なんだか、とっても嫌な予感がしますぅ。背筋がゾクゾクしますぅ……」
美味しいお肉を食べていた鈴の手が、ピタリと止まりました。




