つかの間の平穏と地獄への連れ戻し
「あ……お姉様、あそこのカフェのタルトも美味しそうですわ!」
リボンをたくさんプレゼントしてもらい、少しだけ心が緩んでいた鈴でしたが、その平和な時間は唐突に終わりを告げました。
「――いたぞ! 姫様を発見した! 全員、確保だ!」
「ひえぇぇぇっ!?」
市場の向こうから、鎧の音を響かせた数十人の近衛騎士団が、波のように押し寄せてきました。その光景は、もはや「お迎え」というより「凶悪犯の包囲網」です。
「姫様! 護衛もなしに街へ出られるなど、王がどれほど心配されているか! さあ、すぐに王宮へお戻りください!」
騎士団長が必死の形相で跪きます。鈴は「あ、これでもう解放される……お家に帰れる……!」と安堵したのも束の間、王女が鈴の手をギュッと、岩のように固く握りしめました。
「嫌ですわ! お姉様も一緒じゃないと、わたくし、絶対に戻りません!」
「えっ……?(嫌な予感)」
「お、お姉様……? 救世主殿のことですか? しかし、彼女には彼女の都合が……」
「都合なんて関係ありませんわ! お姉様はわたくしの『お友達』なのです! お姉様を王宮に連れていかないなら、わたくし、ここで一生座り込みをしますわ!!」
「そんなバカなことをっ!? ……くっ、致し方ない。救世主殿、誠に申し訳ございませんが、姫様をなだめるためにも……ご同行願います!」
「……ふえぇぇぇぇ……っ!? やだぁぁぁ、おうちに……おうちに帰らせてくださいぃぃぃ!!」
鈴の目から大粒の涙が溢れ出しました。自由になれると思った瞬間、まさかの「王女の道連れ」による再連行。鈴にとっては、華やかな王宮ももはや「出口のない地獄」にしか見えません。
> 【絶世の人見知り】発動!!
> 対象:近衛騎士団、見物人の市民(計100名以上)。
> 「衆人環視の中、泣きながら王宮へ強制送還される」という最悪の屈辱を検知。
> レベルが 20 上がりました!
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現在のステータス(王宮へ強制送還中)
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前 | 桜井 鈴 | 【絶望の涙】|
| レベル | 189 / 999 | (+20 Up / 悲しみの急成長) |
| MP| 950 / 999 | (感情の高ぶりでほぼ満タン) |
| 称号 | 【王女の道連れ】今までに獲得した称号| |
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「う、うぅ……。猫神様ぁ……お風呂ぉ……お肉ぅ……」
「ニャ……。鈴、泣かないでニャ。リボンは守り抜くニャ……」
「鈴殿、申し訳ありません。姫様の我儘には、百戦錬磨の騎士たちも敵わないようです……」
左右を騎士に囲まれ、まるで護送される囚人のような格好で王宮へと引きずられていく鈴。
レベルはついに180を突破し、もはや「神の使い」と言っても過言ではない強さに到達していましたが、その精神はかつてないほどボロボロになっていました。




