消えた「壁」と、招かれざる平穏
村人たちが騒然とする中、一人の老人が人だかりを割って現れました。
「皆の衆、道をあけい! 賢者様……いや、今は隠居中のバド殿がお越しだ!」
現れたのは、ボロボロのローブを纏った、気難しそうな顔の老人でした。彼はかつて王都で宮廷魔導師を務めていたという噂のある、この村唯一の魔法使いです。
「……ほう、これはまた妙な術式だ。物理的な障壁というよりは、本人の『拒絶』そのものが魔力となって固まったような……。だが、それももう終わりだ」
バドが指を鳴らすと同時に、鈴の周囲を覆っていた淡い光の壁が、ガラスが割れるような音を立てて霧散しました。彼女のMP(魔力)と精神力が完全についに底を突いたのです。
「魔力枯渇……それにひどい精神的消耗だ。このまま外に寝かせておくわけにもいかん。ひとまずワシの家に運びなさい。人目につかんようにな」
村の屈強な男たちが、そっと鈴を抱え上げます。
意識のない鈴は、自分がこれから「最も避けたい場所」である「人の家」へと運ばれていることなど、知る由もありませんでした。
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現在のステータス
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前| 桜井 鈴 | 【気絶】|
| レベル | 15 / | (バドとの遭遇により +1) |
| HP| 8/ 180 | 衰弱中(安静が必要) |
| MP | 0/ 250 | 枯渇(壁の消失原因) |
| 攻撃力| 12 | (通常時) |
| 防御力| 15 | (通常時) |
耐久 | 0/ 140 | 限界突破の反動|
| 精神耐性 | 1 | (絶望的) |
| スキル能力 | 【絶世の人見知り (Lv.1)】| 【拒絶の小領域】|
※人見知り発動によるステータス上昇は、現在意識がないためリセットされています。
※レベル上昇幅の調整:大勢の村人と遭遇しましたが、精神の限界を超えて気絶したため、今回のレベルアップは魔法使いバドとの遭遇分「1」に留まりました。
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数時間後。
鈴がゆっくりと目を開けると、そこは見たこともない木の天井でした。
柔らかいベッドの感触。そして、隣の部屋から聞こえてくる「トントントン」という野菜を切る音と、数人の話し声。
(……あれ? ここ……どこ? 私、たしか村を見つけて……)
少しずつ記憶が戻ってくると同時に、鈴の顔がみるみる青ざめていきます。
ここは室内。逃げ場のない密室。そして壁の向こうには、確実に「誰か」がいる。
その時、ガチャリと扉が開きました。
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「おや、目が覚めたか。お前さん、なかなかの変わり者……いや、なかなかの魔力量の持ち主のようだな」
部屋に入ってきたバドと、その後ろからのぞき込む村の世話焼きなおばさん。二人分の「視線」が、目覚めたばかりの鈴に突き刺さりました。
(ひ、ひいぃぃぃっ!! 近い! 人が近い!!)
鈴はガタガタと震えながら、掛け布団を頭から被り、ベッドの端へと縮こまりました。
その様子を見たバドは、やれやれと首を振って言葉を続けます。
「そう怯えるな。……ああ、それとお前さんの着ていた服だが、この辺りでは見かけん妙に目立つ代物だった。
騒ぎにならんよう、村の女性に頼んでこの地の服に着替えさせておいたぞ。礼ならそのおばさんに言うんだな」
バドが指し示した先には、ニコニコと笑いながら「あらあら、怖くないわよぉ」と一歩踏み込んでくるおばさんの姿。
(き、ききき、着替え!? 知らない人に、服を……脱がされた……!?)
二人分の「視線」が、目覚めたばかりの鈴に突き刺さりました。
> 【絶世の人見知り】強制発動!!
> 対象:魔法使い、村人(計2名)
> 目覚め直後の不意打ちを検知。パニックレベル:大。
> レベルが 1 上がりました!
> 新たな能力【土竜の隠れ蓑】を獲得しました!
(ひ、ひいぃぃぃっ!! 近い! 人が近い!!)
鈴はガタガタと震えながら、掛け布団を頭から被り、ベッドの端へと縮こまりました。
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【今回の獲得能力】
【土竜の隠れ蓑】:布団や机の下など、何かの「影」に隠れている間、存在感を完全に消すことができる。ただし、見つかって声をかけられると強制解除される。




