静寂の晩餐会と、一時の安らぎ
「……あ、あぅ……(カチコチ)」
物理攻撃を完全無効化するほどの【絶対拒絶】を発動し、彫像のように固まってしまった鈴。その凄まじい「覇気(という名の人見知り)」に、王宮の兵士たちが気圧されて後ずさりする中、ヒルダが意を決して王の前に進み出ました。
「国王陛下。……大変恐縮ながら、この国の救世主である鈴殿に代わり、一つお願いがございます」
「ほう、聖騎士ヒルダ。救世主の願いとあらば、何なりと申してみよ」
「……実は、鈴殿は極度の『人見知り』にございます。これほど大勢の視線に晒されますと、緊張のあまり食事すら喉を通らぬのです。……どうか、今宵の晩餐会は、料理人とそれを運ぶ給仕、そして我ら仲間内のみの、静かな場にしていただけないでしょうか」
王は一瞬、驚いたように目を見開きました。100人の貴族たちが集まる晩餐会は、英雄を歓迎する最高の舞台。それを断るなど前代未聞です。
しかし、震えながら「絶対拒絶」の障壁を張り続けている鈴の姿を見て、王は深く頷きました。
「……なるほど。強すぎる力を持つ者は、繊細な心を持つという。よかろう! 英雄の安らぎこそが最優先だ。晩餐会は予定を変更し、最小限の人数で行うものとする。貴族たちには私から伝えておこう!」
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こうして、100人の視線が消え去った静かな広間。
王族数人とヒルダ、ミィア、そして料理を運ぶ数人の給仕だけという、鈴がギリギリ耐えられる環境で晩餐会が始まりました。
(……よ、よかったぁ……。人がいなくなって、やっと息ができますぅ……)
視線の数が激減したことで、ようやく【絶対拒絶】の障壁が解け、鈴の体から力が抜けました。
> 【絶世の人見知り】発動!!
> 対象:王、王女、給仕、仲間(計10名程度)。
> 「少人数ならなんとか頑張れる」という安心感を検知。
> レベルが 6 上がりました!
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現在のステータス(王宮・小広間)
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前| 桜井 鈴 | 【微かな食欲の回復】|
| レベル | 135/ 999 | (+6 Up / 爆速成長中) |
| MP| 200 / 999 | (徐々に回復中) |
| 称号| 【静寂を愛する英雄】| |
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「ニャー! 豪華な肉料理だニャ! 鈴、これなら食べられるニャ?」
「は、はい……。これくらいの人なら……なんとか……」
鈴は震える手でフォークを持ち、王宮シェフが腕によりをかけた最高級のステーキを一口運びました。
「お、美味しい……。……こんなに美味しいもの、初めて食べました……っ」
あまりの美味しさに、鈴の瞳にうっすらと涙が浮かびます。それを見ていた王女が、嬉しそうに身を乗り出しました。
「よかったですわ! さあ、お姉様、こちらも召し上がってくださいな。わたくし、お姉様に食べていただきたくて、特別に用意させたお菓子もあるんですの!」
「……あ、あぅ……(王女さまの距離が近い!)」
給仕やメイドたちの視線(約6〜10人分)が、食事をする鈴に「温かく」注がれます。しかし、鈴にとっては「温かい視線」も立派なレベルアップの対象でした。
「も、もぐもぐ……(あぅ、またレベルが上がる音がする……)」




