街道の惨劇と、消えた凶兆
王都へと続く街道を急ぐ馬車の中、鈴の新しいスキル【危険察知】が、微かな、しかし切実な反応を捉えました。
「……! 待ってください、あっちから……女の子の泣き声が聞こえます……っ!」
「ニャ!? 僕は何も聞こえないニャ。鈴の感覚、鋭すぎニャ!」
鈴の言葉に従い、一行が街道を外れて茂みの奥へと向かうと、そこには凄惨な光景が広がっていました。
---
「しっかりして! お願い、目を開けて!!」
震える声で叫んでいたのは、豪華な旅装束に身を包んだ一人の少女でした。彼女の傍らには、ボロボロになった鎧を纏い、血を流して倒れている護衛の騎士。そして周囲には、息も絶え絶えな数人の従者たちが転がっていました。
「ひっ……! 酷い怪我……!」
人見知りの鈴ですが、目の前の「死」の気配に、恥ずかしがっている暇はありませんでした。
「ヒルダさん、ミィアさん! 応急処置を……これ、お家(隠れ家)にあった『すごい薬』です!」
鈴は猫神様の隠れ家から持ち出していた、日本でいう「万能薬」のような高品位ポーションを次々と取り出しました。レベル90を超えた一行の手際よい救護活動により、騎士や従者たちの顔にようやく赤みが戻ってきます。
「あ……ありがとうございます……。わたくしたち、もうダメかと思いました……」
涙を拭いながら、少女が語り始めました。
「つい先程まで……見たこともないほど巨大な『キラーベア』の群れに囲まれていたのです。目が赤く光り、理性を失った恐ろしい魔物たちに……」
「キラーベアの群れ!? そんなものに襲われて、よく今まで……」
ヒルダが驚きを露わにしますが、少女は不思議そうに首を振りました。
「それが……わたくしたちが覚悟を決めたその時、魔物たちが急に……何かに怯えるように、悲鳴を上げて逃げ去っていったのです。まるで、『もっと恐ろしい何か』が近づいてくるのを察知したかのように……」
騎士たちも頷きます。「あの逃げ方は異常でした。我々など眼中にないという様子で、一目散に森の奥へ……」
(……何かに、怯えて? そんな、このあたりにキラーベアより怖いものなんて……)
鈴が首を傾げた瞬間、ミィアが「……あ」と声を漏らし、鈴をじっと見つめました。
「……鈴。それ、たぶん鈴のせいだニャ」
「えっ!? 私!? 何もしてませんよぉ!!」
「無意識に漏れ出していた魔力……あるいは、レベル95の『存在感』を、野生の勘が鋭い魔物たちが察知して逃げ出したのでしょうね。……鈴殿、貴女はもう、歩くだけで天災級の魔物を散らす『歩く魔除け』になっているのですよ」
> 【絶世の人見知り】発動!!
> 対象:助けた人々からの感謝の視線。
> 「無意識に魔物をビビらせていた」という事実への困惑を検知。
> レベルが 1 上がりました!
> 新たな能力【威圧の残滓】を獲得しました!
---
### 現在のステータス(街道の救護現場)
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前 | 桜井 鈴 | 【無自覚な頂点】 |
| レベル | 96/ 999 | (+1 Up) |
| カリスマ | 測定不能 | (魔物限定) |
| スキル | 【魔力隠蔽】| 【威圧の残滓】(New!) 今までに獲得した能力|
---
「わ、私……歩いてるだけで魔物を怖がらせちゃうんですか……? そんなの、ますます目立っちゃうじゃないですかぁぁ!!」
「逆ニャ! 魔物が寄ってこないなら、誰にも邪魔されずに歩けるってことニャ!」
「……ポジティブですね、ミィアさん……」
鈴はため息をつきながらも、少女たちの無事を確認し、再び王都へと馬車を走らせます。
しかし、鈴たちはまだ気づいていませんでした。助けた少女の服に刻まれた紋章が、この国の「王家」のものであることに。
---
【今回の獲得能力】
【威圧の残滓】:格下の魔物は、鈴が近づくだけで本能的な恐怖を感じて逃走する。隠密スキルと併用すると、「何もない空間からプレッシャーだけが漂ってくる」という、さらに不気味な現象が起きる。




