聖域の休息と、繋がる絆
「……ここが、私の……お家……?」
猫神様が前足で床を叩くと、殺風景だったダンジョンの最深部が魔法のように作り変えられていきました。
柔らかな光が灯るリビング、ふかふかのソファ、そして鈴が日本で使っていたものによく似たキッチン。そこは、外の世界の喧騒から完全に遮断された、究極の「ひきこもり聖域」でした。
「鈴殿、見てください! 奥に素晴らしい大浴場がありますよ!」
ヒルダに誘われ向かった先には、大理石で作られた広大な湯船に、乳白色の温かなお湯がなみなみと注がれていました。
---
「ふにゃぁぁぁ……し、幸せですぅ……」
鈴はヒルダ、ミィア(猫の姿のまま)と一緒に、お湯に浸かっていました。
異世界に来てからというもの、体を拭くだけで済ませることが多かった鈴にとって、肩までどっぷりとお湯に浸かるのは最高のご褒美でした。
「ニャ……。鈴、そんなにとろけた顔をするなんて、本当にお風呂が大好きニャんだニャ」
「はい……。日本にいた頃は、嫌なことがあってもお風呂に入れば全部忘れられた気がして……。あぁ、体中の恥ずかしさが溶けていくみたいです……」
猫装備の「超リラックス効果」も相まって、鈴の表情からはいつもの悲壮感が消え、年相応の少女らしい、ふっくらとした笑顔が浮かんでいました。
> 【絶世の人見知り】休息モード。
> 「極限の安らぎ」により精神の器が浄化されました。
> レベルが 1 上がりました!
---
現在のステータス(聖域のお風呂)
| 項目 | 数値 | 状態 / 備考 |
| 名前 | 桜井 鈴 | 【心身共にデトックス】 |
| レベル | 93/ 999 | (+1 Up) |
| MP | MAX | (精神の安定により密度が上昇) |
| スキル能力 【聖域への帰還】(New!) 今までに獲得した能力| |
---
お風呂上がり、猫神様から授かった「猫装備」を再び身に纏うと、鈴の体は不思議な浮遊感に包まれました。
そこへ、入り口で待っていた猫神様が静かに語りかけます。
『満足したか、人の娘よ。その装備は、私の加護そのもの。それを身に纏っている限り、世界のどこにいても、君は念じるだけでこの“家”に戻ってくることができる』
「どこからでも……戻ってこれるんですか?」
『そうだ。そして、君が望むなら、君の隣にいる大切な仲間たちも共に連れてくるがいい。ここは、君たちが外の世界で疲れた時、いつでも翼を休めるための止まり木なのだから』
「猫神様……。ありがとうございます……っ!」
鈴は、ギュッとローブの袖を握りしめました。
今までは「逃げ場がない」という恐怖でレベルを上げてきましたが、これからは「いつでも逃げ帰れる場所がある」という安心感が、彼女を支えてくれることでしょう。
「ニャ! 鈴、これでもう怖いものなしニャ! お腹が空いたらここでお肉を食べて、眠くなったらここで寝るニャ!」
「ええ。ですが鈴殿、たまには外の空気も吸いに行きましょうね。……もちろん、疲れたらすぐにここへ戻りましょう」
ヒルダの優しい言葉に、鈴は「はいっ!」と元気よく返事をしました。
レベル93。世界最強の力を隠し持ちながら、最強のひきこもり拠点を手に入れた鈴。彼女の異世界スローライフ(?)が、ここから本格的に始まろうとしていました。
---
【今回の獲得能力・状態】
新能力:【聖域への帰還】:猫装備を着用時、どこからでも瞬時にこの拠点へワープできる。仲間も同伴可能。
拠点:【猫神の隠れ家】:完全結界に守られた、鈴専用の居住空間。




