戦い終わって、驚愕の査定
「う、うわぁぁぁん! お、下りられません! 下り方がわかりませんぅぅ!!」
メタリィラビットの群れを「恥じらいの炎」で一掃した鈴でしたが、新たな問題が発生しました。新スキル【蒼白の飛翔】で舞い上がったものの、着陸の方法がわからず、高度30メートルでジタバタと手足を動かすばかり。
「鈴殿! 落ち着いて魔力を練るのをやめるのです! MPを切らせば自然と降下します!」
ヒルダが下から叫びますが、鈴は半泣きで首を振ります。
「む、無理です! MPが、MPが全然減りません! むしろ恥ずかしくてどんどん溢れてきますぅ!!」
「ニャニャ!? 鈴のMP、底なし沼みたいだニャ……。このままだと、鈴が一生あそこで浮いたままの『生きた気球』になっちゃうニャ!」
鈴のMPは既に賢者級。パニックになればなるほど自動的にMPが回復・増幅されるため、エネルギー切れによる墜落(着陸)すら不可能な状態に陥っていました。
「……仕方がありません。鈴殿! 発想を逆転させるのです! その爆炎を、今度は地面ではなく空に向かって放つのです! その推進力の反動で、地面に降りるのです!」
「そ、空に向かって……!? あ、ああぁ……またさっきの『恥ずかしいこと』を思い出せってことですかぁ!?」
「そうです! 全力で悶絶するのです!!」
鈴は空中でもがきました。
(……今この状況が既に恥ずかしい……! 街最強の騎士様と猫の人に、空中でバタバタしてる不細工な姿をずっと見られてる……! 私、世界で一番かっこ悪い女子高生だぁぁぁ!!)
「……もう、どうにでもなれぇぇぇぇ!!」
ドォォォォォン!!
空高くに放たれた羞恥の火柱。その凄まじい反動を受け、鈴は隕石のような勢いで地上へ向けて急降下しました。
「ひ、ひぃぃぃ!! 止まらないぃぃ!!」
「ニャ! 鈴が刺さるニャ!」
ミィアが慌てて飛び退き、鈴は平原のど真ん中に「ズボッ」と頭から突っ込む形で、なんとか(?)着陸を果たしました。
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「……ぷはっ。……死ぬかと思いました……」
泥だらけになった鈴をヒルダが引き抜き、一行は近くの岩場に座り込んで一息つきました。
「さて……信じられない戦いでしたが、結果としてメタリィラビット100匹以上の討伐は完了しました。一度、パーティ全員のステータスを確認しましょう」
ヒルダの提案で、三人の前にステータスウィンドウが表示されました。
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【パーティ・ステータス確認】
■ミィア(猫獣人)
レベル:50 → 90 (40 Up!)
「ニャ、ニャニャニャー!? レベル90!? 僕、さっきまで50だったのにニャ!!」
(※鈴が倒した高レベル魔物の経験値を共有したため、爆速で成長)
■ヒルダ(聖騎士)
レベル:200 → 210(10 Up!)
「……レベル200を超えてから10も上がるなんて、数十年ぶりの経験です。鈴殿、貴女という人は……」
■桜井 鈴(絶世の人見知り)
レベル:76 (変動なし)
「……あれ? 私、レベル上がってません……」
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「……鈴殿。どうやら、この世界の法則では『魔物を倒す』ことよりも、貴女自身の『精神的ダメージ』の方が遥かに高い経験値を生むようですね……」
ヒルダは複雑な表情でステータスを見つめました。メタリィラビット100匹という、他人が見れば震え上がるような戦果ですら、鈴が「門の前で100人の視線を浴びた」時の羞恥心には及ばなかったのです。
「魔物を倒してもレベルが上がらないのに、恥ずかしい思いをするとレベルが上がるなんて……。そんなの、あんまりです……っ!」
鈴が地面にのの字を書きながらいじけていると、ミィアが尻尾を振って喜びを爆発させました。
「でも鈴、おかげで僕、最強の猫になれたニャ! これならもう、どんな怖い魔物からも鈴を守ってあげられるニャ!」
「……ありがとうございます。……でも、ミィアさんのレベルが上がったってことは、また私の周りに人が集まってきちゃうんじゃ……」
「……あ」
最強の猫獣人と、伝説を更新し続ける聖騎士。そして、その二人が従う(ように見える)「爆炎の聖女」。
アステリアの街へ戻れば、さらなる注目の的になることは火を見るよりも明らかでした。
「……ミィアさん、ヒルダさん。……やっぱり、今すぐ森の中に帰りませんか?」
鈴の切実な提案は、ミィアの「お腹空いたニャ! 街で豪華なご飯食べるニャ!」という歓喜の声にかき消されるのでした。
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【現在の状況】
ミィア: レベル90。もはや世界屈指の斥候へ。
ヒルダ: レベル210。聖騎士としての限界を突破しつつある。
鈴: レベル76。戦闘では上がらないことが判明し、絶望。




